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1日17時間勤務、週7日労働、どこのブラック企業? いいえ、NVIDIAです! 過酷な労働環境と莫大な報酬が生む成長


1. NVIDIAの駐車場に集う超高級車

カリフォルニア州サンタクララの朝は早い。
NVIDIAの駐車場では、超高級車が太陽の光を反射する。
ポルシェ、コルベット、ランボルギーニ。これらの車たちは、NVIDIA社員の自家用車である。それぞれのオーナーは、誰よりも早くオフィスにたどり着こうとライバルたちの後ろ姿を睨みながらステアリングを握って出社する。

2. 株価の高騰と長時間労働

さて、このNVIDIA、AIのブームに乗って、2019年の株価からなんと3776%も上昇。おかげで、サンタクララにはミリオネアがポロポロと誕生しています。でも、その栄華の裏側は決してバラ色ではありません。社員たちは、ひたすら長時間労働に追われています。世界を股にかけて飛び回る旅行?  それは夢の話です。余暇やレジャーに興じる時間なんてありません。
10名の現役社員や元社員が匿名で語るには、NVIDIAの企業文化は徐々に問題を抱えているようです。報復を恐れて匿名で語っているあたり、その問題の深刻さが伺えます。

驚異的な成長力をみせるNVIDIA株

3. フアンCEOのリーダーシップと徹底的に働く企業文化

創業から31年、このNVIDIAという企業は、まるで超特急列車のごとく時価総額を拡大させてきました。その背後には、ジェンスン・フアンCEOが築き上げた、猛烈に働く文化があります。フアン氏は「苦しみを通じて成長する」と豪語し、競合他社のように従業員を解雇することなく、彼らを徹底的に鍛え上げる方を好むとか。
企業に関する口コミ情報を提供するグラスドアのリポートによると、ファンCEOの社内支持率は脅威の97%。アルファベット(94%)やアップル(87%)、メタ・プラットフォームズ(66%)、アマゾン・ドット・コム(54%)のトップよりも高い。
ファンCEOの期待に応えるべく、社員は徹底的に働く。
元テクニカルサポート担当の社員によれば、週7日、午前1時や2時まで働くことを期待されるのが日常茶飯事。特にエンジニアリングチームでは、この傾向が強く、ミーティングでは怒鳴り合いが日常だったとか。でも、巨額の報酬により退職の選択肢はありえません。

NVIDIAのサンタクララ本社、「ボイジャー」

4. フラットな組織と「黄金の鎖」に囚われた社員たち

フアンCEOが掲げるビジョンは「AIを通じて世界の頂点に立つこと」。
彼の部下たちもそのために、時にスパルタ教育のような経験を経るのです。60人もの直属の部下を持つフアン氏には、官僚的な手続きや細かいプレゼンに割く時間はなく、しかし宣伝用写真の選定には口を出すという、少々風変わりなリーダーシップスタイルをとっています。この彼のスタイルが従業員たちに支持されているのも事実。とはいえ、会社の組織構造がフラットであるがゆえに、従業員同士が協力し合うよりも、フアン氏の注意を引こうと競い合う姿勢が見られることもあるようです。それでも、NVIDIAのストックオプションを含めた報酬は全従業員にとって、まさに「黄金の鎖」です。4年間で権利が確定する株式報酬が、彼らを辞めさせない大きな動機になっているのです。

5. 離職率の低さと「黄金の鎖」の魔力

NVIDIAはここ数年、優秀な従業員の確保には苦労していない。
Fortune誌は、NVIDIAが従業員にとって辞めづらい会社である理由を2点挙げています。
1.   同社がAIチップ業界のリーダーであり、最先端の技術に触れる機会が多いこと。技術者にとって、これは極めて魅力的な環境です。
2.    従業員が株式の権利確定前に辞めてしまうと、大金を手にする機会を逃す点です。
NVIDIAの株式購入プランでは、従業員は給与の15%を拠出し、15%割引で自社株が購入可能となります
バロンズ誌によれば、このプランを活用し続けた勤続10年近い社員が退職する際には、なんと約90億円相当の株を所有していたそうです。
そう、これこそが「黄金の鎖」の魔力なのです。
2024年のサステナビリティー報告書によると、半導体業界全体の離職率は17.7%だというが、NVIDIAの離職率は脅威の2.7%であることが判明しました。

NVIDIAのAIサーバー

6. ディズニーランドのような職場?  世界最高水準の知識が集結

NVIDIAで働くことは、決してお金のためだけではありません。NVIDIAでの仕事は、ディズニーランドで過ごすような夢の時間だ、と語る元社員もいます。特に技術的な挑戦を楽しむ人たちにとっては、エヌビディアでの仕事は、毎日がワクワクするアトラクションに満ちています。アイラン・ジュニア氏という、2020年から2023年5月まで在籍していた元社員によれば、同社の企業文化は型破りな部分も多々ありますが、その独自性こそがNVIDIAの成功に大きく貢献してきたのだといいます。

社員に様々な仕事環境を提供している。

7. NVIDIAジェットコースターの行方

こうした富を手にする一方で、社員たちは仕事と生活のバランスを見失いがちです。彼らの昼食時の話題は、株価の上昇と不動産投資。プロダクトマネージャーたちは社内チャットで財テクのアドバイスを交換し、日々の株価動向に一喜一憂しています。これは、まさに現代版のゴールドラッシュといったところでしょう。
最先端技術に携わる喜びと、富を築く魅力が共存するNVIDIA。しかし、その光り輝く側面の裏には、長時間労働やストレスフルな職場環境という影も潜んでいます。
NVIDIAでの仕事は、まるでジェットコースターのようなもの。スリルと興奮に満ち溢れている一方で、そのスピードについていくのは決して楽ではありません。それでも、次の株式報酬やさらなる技術的挑戦が待っている限り、彼らはこのスリルを味わい続けるのでしょう。彼らがこのジェットコースターから降りる日は、果たして来るのでしょうか。

日本では考えられないオフィス構造


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