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【報告】ねとらぼを退職しました(理由:膵臓がなくなったから)

おれはねとらぼをやめるぞ! ジョジョーッ!

というわけで2023年11月30日をもってアイティメディア(ねとらぼの会社)を退職しました。

30手前までフリーライターなどと称して世間を欺き実家でただただ黒霧島を飲む毎日を過ごしていた穀潰しの私に仕事を与え、ついには「正社員」という真人間の称号まで授与してくれた会社には感謝しかありません。本当にクソお世話になりました。

今後はフリーランスに戻ります。なお、2023年12月1日からは業務委託としてねとらぼの編集・執筆に携わっていきます。そんな音速の出戻りあるんだ、という感じですが他の仕事も並行してやっていきます。ねとらぼ以外にも色々やりてえぜ、ってことで今回の決断となりました。

「父さんな、会社辞めてYouTube1本で食っていこうと思う」みたいな激イタ退職エントリを期待した方には置きに行った選択で申し訳ないんですが、ねとらぼの仕事量を半分くらいにして残りで他の仕事なり家庭のことなりこのnoteなりYouTubeなりやりたいなという感じです。後述しますが「人生は短いな」と思ったので。

個人的に社員という安定を捨てて再びフリーに戻るっていうのは結構大きな選択だったので、そのへんのことを少し書いておきます。あんまメディアビジネスがどうのといったしゃらくさい話をすると仕事みたいになるので、人間としてのお気持ちの部分が中心です。

こういうのは一応書いておかないとアレなので書いておきますが、以下は全部個人としての感想であり会社や編集部の意見を代表するものではありません。いつもの個人ブログの文体で書くので古のインターネットのノリやジョークがふんだんに含まれていることもご留意ください。怒られたら消します。


辞めた理由

2022年10月に職歴の倍ほどになる飲酒歴がたたって「重症急性膵炎」という病気をやりました。4カ月半の入院とその後のリハビリなどで会社もガッツリ休職し、膵臓の3分の2が壊死しました。これも危うく退職エントリではなく殉職エントリになるところでしたね(笑)。

詳細は上記マガジンに書きました

破天荒ワナビーではあるものの根は保守的な人間なので「大変なときもあるけど圧倒的にいい会社だし一生ここにいるのかもな」と思ってたんですが、膵臓ボンバー事件で思ったより早めに一生が終わりそうになって、もうちょっと生きてるうちに色んなことやろうという思考になった感じです。週5で働いて週7で酒飲む生活に体のほうが先に音を上げました。

ちょうど膵臓がなくなる直前、僕をねとらぼに誘ってくれた池谷さん(てっけんさん)が辞めたのも大きかったです。フリーの頃から何かと仕事を振ってくれていた池谷さんが親指を立てながら溶鉱炉に沈んで行くシーンを見届けたことで恩義には報いることができた、自分は今後どうしようかな、と考え始めたくらいで突然の膵ボン休職となり、結果的に自分が抱えていた業務なんかも(強制的に)引き継ぎができてしまい、タイミング的に「辞めるなら今だな」と思いました。

復職後も会社のみなさんはめちゃんこ温かく迎え入れてくれてほんといい会社だなと思いました。ホワイト企業的な意味だけでなく「いい人間」が多いと思います。この世のあらゆる仕事を平等に嫌っている労働フェミニストの僕が10年以上働き続けられたの、マジで人間がよかったことに尽きます。かつやのバイトを3日でバックレていたこの僕が。

そんな感じでかなり色々悩んだんですが、一言でまとめると「膵臓もなくなったしついでに職もなくなってもなんとかなるだろ」と思って辞めてみた感じです。作戦名・勇気。

ねとらぼでやってたこと

わかりやすいのでネット上ではよく「ライターです」と言ってましたが、ねとらぼでは編集記者として働いていました。自分で記事も書くしライターさんに依頼した記事の編集もするし、そのへんはPVだの売上だの数字的なことを考えてやんないといけない人です。記事作り人(きじつくりんちゅ)ですね。

正社員になってからは特にタイアップ(PR記事)の専任として長く働いていました。クライアントさんからお金をもらって製品やサービスの魅力を伝える記事を作る仕事です。今風に言うと「案件」ですね。

漫画でわかるねとらぼタイアップのお仕事

やる前は「ふーん、お金もらって潤沢な予算でおもろい記事作ればいいんだ。楽勝ゲーじゃん」と思っていました。確かに理論上はそうなんですが実際にはなかなかそう簡単にはいかない。詳しく話すとなぜか失ったはずの膵臓が痛み出す気がするので簡単にしますが、色々な大人の事情や思惑が絡み合ってすごく「社会」というのを学べる仕事でした。

通常の記事は自分たちでネタを探したり取材をしたりして記事を作りますが、タイアップは代理店の人などと打ち合わせをして事前に記事(企画)案を提出し、先方の意図や読者の需要、何の表現はOKで何がNGなのか、関係者は誰がアサインできてスケジュールはいつまでなのか、などすげー色んなことをすり合わせる必要があります。社内の営業の人と二人三脚でやっていくことも欠かせません。そういうのが苦手だから「文章を書く」というスキル1本で社員になったはずなのにめちゃくちゃ社会人スキル要求されました。

まあともかく濃い衆に揉まれて涙の数だけ強くなれました。仕事に対するお気持ち的な部分は以下のねとらぼ内インタビューでも記事になってます。まだ膵臓があるころ。

あと、仕事がどうこうよりねとらぼのメンバーやライターさんたちとお酒を飲んで、インターネットのことや映画や音楽や漫画やゲームや麻雀や将棋やなんかの話をしたことがとても楽しかったです。一度みんなでキャンプに行ったときは楽しすぎて帰ったあとなぜか除雪車に感情移入して泣くという事件を起こしました。僕にとってはそういうことが一番大事でした。

Webメディア業界とねとらぼについて思うこと

小さなころからインターネットが大好きでアルコールに出会うまではずっとネットに依存して生きてきました。中2で「作家になりたい」と言って学校に行かなくなりクソつまらんテキストサイトを始めた自分が、まがりなりにも「ネットで文章を書いて飯を食う」という世界線にたどり着けたのはほんと僥倖でした。そこがねとらぼでよかったなとも思います。

「全ての趣味は仕事になった途端つらくなる」という思想があるので、仕事としては結構意識的に割り切った労働をしてきたつもりですが、他のメディアとか見てても「僕はねとらぼ以外だったら続かなかっただろうな」とよく思ってました。ユーモアはあるけど地に足もついている、攻めてもいいけど無茶はしない。そういうバランスのよさがねとらぼの特徴でした。性にあってたと思いますほんと。

初期のねとらぼはコアなネットユーザーの視点でニュース記事を作るという点が楽しかったんですが、よく「まとめサイト」と一緒くたに扱われてました(逆に言うとまとめサイトがやってるメソッドに真面目に向き合ってた)。中期になるといわゆるジャーナリズムの面(漫画村の取材とか)でも目立つようになり、「ねとらぼ意外とやるじゃん」みたいに言ってもらえることが増えました。世間的にはヤンキーが急に子猫助けたように見えたんじゃないかと思います。

この時期、「アイティメディアというちゃんとしたニュースメディアをやってる会社がコアなネット民が気になる話題を取り上げている媒体が“ねとらぼ”である」っていう構図がようやく形になった気がしました。知らんけど。まあでもいいメディアなんだということが広まって嬉しかったし、タイアップでも代理店やクライアントの人に「うちはおふざけメディアじゃないんでちゃんとした取材記事作りましょう!」とか言いやすくなってよかったです。

その後、コロナ禍でほぼ全面リモートワークになり(このへんの対応めちゃくちゃ早くてバリホワイトやん弊社と思いました)、働き方や世の中の情勢も色々変わりました。長期入院でシャバから離れてたせいもあるかもですが、最近のねとらぼ含めたWebメディア業界の変わりっぷりには結構隔世の感があります。これはいい意味と悪い意味の両方におじさん特有の懐古の情をひとつまみした複雑なおじ心です。

ライターと編集者両方やってみてあらためて思いましたが、Webメディアってビジネスとしてマジでアレだなと思います。ライターのころから「Webは原稿料安い」ってのは言われてたし実感もしてましたが、編集側になると予算とか売上とかもわかるので「こういうことだったのか……」となって結構やるせない気持ちになりました。

これは超主観によるお気持ちですが、「いい記事=儲かる記事」には必ずしもなってないという構図も切なかったです。まあ資本主義なんて往々にしてそうなんですが、僕はピュアなので。

元々バズバズしいものが苦手なひねくれものなのもありますが、実は「PV(ページビュー)」っていう視点で見るとバズったものよりもっとしょうもないもののほうがエラかったりするケースがあって、このへんは「面白いなーと思って見た1PV」と「クソつまんねーと思って見た1PV」が等価値であるという構造上の欠点であり、アルゴリズムの改善とか色々ありますが現状はまだ欠点をハックするほうが最適解になっちゃうというのがマジでアレだなーと思ってます。ずっと。

あんま言うとめんどくさそうなのでこのへんにしますが、とにかく「いいものなら売れるなどというナイーヴな考え方は捨てろ」というラーメンハゲの言葉が日々頭の中でこだましていました。

あともうひとつ。これはねとらぼに限らず、ものを作る側にいる人はそういうジレンマや数字と向き合いながらも「なんとかいいものを出したい」と葛藤している人が多いんだと知りました。消費者として「なんだこのクソみたいなやつ」って感じてたアウトプットの裏にもそういう人はいる(※編注 普通にいない場合もある)。それは業界の内部に入ってみないとわからなかったのでよかったです。

そうした人々の気持ちが100%発揮されない構造上の悲しみを指して僕は「社会が悪い」ということを常々訴えてきましたし、日夜酒を飲んではニコ生で管を巻くなどしていたわけです。結果として膵臓を失いました。

今はこんな感じの気持ちです

今後やりたいこと

今後は業務委託としてねとらぼのお手伝いをしつつ、フリーランスとして署名・無署名問わず色々やっていこうと思ってます。というか裏方仕事みたいなやつはもう既にやってます。

なんか記事を書くとかメディアの運営を手伝うとかのお話があればぜひお声がけください。膵臓が無いのでしばらくは無理のないペースでやろうと思ってますが、ギャラがグンバツによい場合はバリバリ無理をする所存です。正直会社員時代より収入は結構減る計算です。

↑連絡先やこれまでのお仕事紹介など

上のまとめページ作ってたときも思ったんですが、自分は仕事として「こういう記事を書きたい」ってものを書いたことって実は数えるほどしかありませんでした。お金もらうんだから人様が欲しいもの、必要なものを提供するべきで書きたいことなんかは趣味で書くべきだ、という気持ちがあったからです。

なんですが、今後はもうちょっと書きたいことの要素も増やしていきたいなと。「好きなことで生きていく」とかは僕のアンチ仕事哲学的に成立しえない(仕事になった瞬間好きが辛いに変わる)んですが、「好きなこと“も”して生きていく」くらいのバランスにできたらいいなと思っています。

このnoteもそういう風にしたいなと思ってメンバーシップもおっかなびっくり始めたんですが、想像以上にたくさんの人が入ってくれて本当に助かってます。note始めたきっかけが闘病記だったんで膵臓への香典がわりに入ってくれた方も多いかと思いますが、内容が面白いなと思ってもらえるように今後もっと頑張っていきたいと思ってます。どうせ頑張って生きるならそういうことを頑張りたいということです。

こちらからはいったん以上となります。また進捗あり次第ご連絡差し上げます。引き続き何卒よろしくお願いいたします。

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