「建設・不動産のデジタル化 〜FMBIMの活⽤〜」:その1 デジタル社会に求められる建物(建築・設備)のデジタルデータ
Ⅰ. デジタル社会に求められる建物(建築・設備)のデジタルデータ
「BIM (Building Information Modeling︓ビルディング・インフォメーション・モデリング)」という⾔葉は建設業界ではポピュラーな⾔葉だ。
しかし、発注者や不動産業界にとっては⾃分とは関係ない、あるいは⾃分たちにとって必要かもしれないが、自分だけでは扱うのがむずかしいデータで、⾃分の仕事とは関係ない⾔葉だと感じているのが実態だ。ましてや⼀般の⼈にとって、BIMは建築の専⾨家が扱う分野で⾃分の⽣活や仕事とは関係ないもの、とっつきにくいものだ。
知人の不動産業界の知り合いも、「BIM って意外に不動産で使えるよね」と⾔ったら、「いや、あれは建設業界が儲けるための特殊なデータだろう。⼯事がなければ関係ないさ。あんなデータ使えないよ」と、けんもほろろだった。
それは、「BIM」という⾔葉が、建設業界だけの特殊⽤語だからだ。
⼀⽅、デジタル社会、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が進む社会では、デジタルデータなしには⽣活できない。だれもがスマホを持ち歩き、SNS で会話し、メールで情報交換する。自動運転の実現のためには、道路情報に加え、建物の3次元データが必要になる。BIMはデジタルデータの集まりであり、本来、このデジタルデータを活⽤することで、より豊かな⽣活、より良い社会を構築することに資するはずだ。政府もデジタル庁を設置するなど政府のデジタル化に向けて動き出すなど、紙や印鑑、アナログな役所のしごとも、デジタルデータの活⽤へ⼤きく変化する時代を迎えている。
⽇本以外の世界を⾒ると、BIMデータを使って、都市の環境問題に役⽴てたり、ビルの省エネルギー対策、エネルギーコストの低減をすすめたり、清掃ロボット利⽤につなげたり、さまざまな活⽤を図っている。シンガポールでは、「バーチャル・シンガポール」として、現実都市がコンピューター上で実現できる世界を構築し、そのうえで、災害シミュレーションや減災、交通混雑の緩和などにつなげている。日本でも政府が中心となり、PLATEAUという都市のデジタル化をはじめたが、国の⾯積が大きく違うにせよ、デジタルデータの活⽤でも、BIMデータの活⽤でも、⽇本の取組みは遅れている。
そこで、本書のタイトルを、あえて「建設・不動産のデジタル化〜FMBIMの活⽤〜」としたのは、建設・不動産の発注、所有、管理、経営の第⼀線にたつ多くの皆さんにBIMの有効性を証明し、BIMの活⽤をすすめるためには、BIMという特殊⽤語をやめ、多くのひとにとってわかりやすい、「不動産・建物のデジタル化」を進めることが必要だと考えたからだ。
この「不動産・建物のデジタルデータ」という定義は、むしろ、建設BIMを広げる⽴場の⼈や国にとっても、BIMを建設業の⽣産性を向上させるツール・データという狭い考えから、「建物のデジタルデータ」として、デジタル社会を構築するために必要なデータとして、BIMの活用を進めることで、生産者と発注者、利用者、消費者を結びつけることで、BIMデータが積極的に社会で活⽤させる契機としたい。
ただ、単純に生産者が持つBIMデータが 消費者側にそのまま展開されても、有益なデジタルデータとはなりえない。お同じBIMデータでも「施工BIM」と「FMBIM」の違いを理解したうえで、BIMを都市、社会のデジタル化に活用する必要がある。
本書を通じて、BIMを含む幅広い「建物のデジタルデータ」の活⽤が進むことに期待したい。
1. デジタル社会における建物・不動産の位置づけ
⾦融にフィンテック(Fin tech)が導⼊され、銀⾏そのものも含めて⾦融業界のありようが⼤きく変わる今⽇、ITやAIを活⽤した大きな波が建設、不動産業界へも押し寄せている。
スマートビル、スマートシティと呼ばれる街や都市のデジタル化は、当然、IT、AIを活⽤して⼈の⽣活に役立つ情報を提供するなど、利便性が高い街になるはず。シンガポールでは「バーチャル・シンガポール」と称して、シンガポールの国全体の建物やインフラをデジタルデータで把握できるようにしようとしている。それにより、道路⼯事を実施した場合の最短のアクセスルートを知らせたり、住宅の⽇照時間、屋上の太陽光発電量を把握したりするなどに具体的に活⽤しはじめている。
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本書のタイトルを、あえて「建設・不動産のデジタル化〜FMBIMの活⽤〜」としたのは、建設・不動産の発注、所有、管理、経営の第⼀線にたつ多く…
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