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これは読めなくても わからなくても 樋口一葉に思いを寄せてみたものだから

小説の美学は貧困という痛苦の経験と観察から生まれたのかな。
五千円札の顔の樋口一葉は紙幣の中でも歴史上の人物だね。


読み終えたよ

樋口一葉赤貧日記伊藤氏貴』/分類910イ/

幕末・明治維新あたりの時代背景も交えながら家族や縁者たちとの出来事を年表とともに進む。私のイメージは昔の物書きの人という程度のぼんやりとしたものだった。一葉の父・則義は山梨の農民育ちで同郷の母・たきと駆け落ちして江戸に出る。家族は当時にありがちな生きづらさの中で縁をつなげ続けて生きている。したたかで強いと思った。

貧乏は一葉という作家とその作品の中核を成すものなのだ。―――
一葉の日記がおおまかながら家計簿として読める。借金について交わされたたくさんの書簡もある。そこに書かれた金額や品目に当時の物価などを勘案することで、一葉の日々の暮らしぶりが浮かび上がる。

『樋口一葉赤貧日記/伊藤氏貴』まえがきより

樋口家の身分は士族。父・則義が金で手に入れたようなでもあるけれど、それも誇りに思っていた。東京・明治生まれの一葉の幼い頃は貧乏ではなく裕福な育ちで勉学に積極的で優秀。父亡きあとは戸主として母と妹女三人で内職などをしながら縁者から借金しながら生活を支える。そんな中でも歌塾や図書館通いで学びを続ける。物書きになる素養はそういうところからきているんだと思った。

日記は焼き捨てて

一葉の死後なかなか日記は公開されなかった。

日記は焼き捨ててくれと遺言していたのに、邦子がその言だけは破り、捨てるどころか出版のために奔走したのだ。

『樋口一葉赤貧日記/伊藤氏貴』268頁より

邦子というのは一葉の妹。一葉の書き残したものはとても大切に保管していたとある。けれど世に出されている。人の興味は作品だけでなく作家自身にも向けられる。
一葉の葬儀の香典控えも掲載されていて集まった香典の合計、終章では生涯に稼いだ原稿料の合計の考察もある。故人の残したものはなんでも歴史の一部となっている。人の興味は貪欲だ。この本で解説された金銭事情の断片は貧乏暇なしがひたすらだった。

14カ月間の作品

稼ぐために作家を目指すも、最終的には読者に媚びるような小説は追及しなかった。肺結核で24歳という若さで亡くなる前の14カ月間に集中的に書かれた。それはどういうものかと電子図書館で「たけくらべ」を読みし、でも文体がむずかしいし。作品の解説で理解するみたいな感じになってしまった。

にごりえ・たけくらべ 樋口一葉作出版社グーテンベルク21』/分類913.6/

小説の面白さ美しさの感じ方は人それぞれ。ただ私には読む力が無さ過ぎて、それを感じられなく残念な人。またの機会に別の本を読んでみよう。

もう一冊電子図書館でこれも読んでみた。
樋口一葉ものがたり(ジュニア・ノンフィクション)日野多香子』/分類910.268/

著者の思い込み?解釈の仕方かな?登場人物の印象がちがう。でも一葉のその駆け足の生涯は精一杯に生き切った。最後まで貧困という底辺の中で身を削りながら自身の文学を生み出したんだというのは同じ。

おわりに

2024年7月に新五千円札にかわる。
『樋口一葉赤貧日記』の締めくくりは、あっさりと。

今後も作品を通じて「千載の名」を残すだろうことは疑いない。一葉さん、二十年のおつとめお疲れさまでした。

『樋口一葉赤貧日記/伊藤氏貴』あとがきより

金銭事情を探ったこの本は稼ぎになったのかな。気になります。

樋口一葉さん、ゆっくり生きられたら別の人生もあったのにと思います。
一葉というペンネーム素敵です。本の中であなたを感じさせてもらえたような気がします。ありがとうございました。

次に

次に読みはじめたのは、
こうして誰もいなくなった有栖川有栖』/分類913ア/
こちらは短編いっぱい。
どこからでもどうぞとありますので、目を休めながらゆっくり読みます。

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