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歴史か言語語り

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2020年7月の記事一覧

小話:イエスの名前

イエスは元々ヨシュア(イスラエルの族長、カナンの土地に)と同じ名前だ。ヨシュアは「ヤハウェの救い」を意味する名前だ。しかしナザレのイエスの名前は、当時彼が生きていた頃は、語末のaが脱落してイェシューという感じの発音になっていたらしい。
 そこにギリシア語の名詞の活用語尾-sを添えてイェースースと呼び、ここから日本語のイエスにつながっている。イエスという名前は当時ではよくある名前だった。ユダヤ人には

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キリスト教はヨーロッパの宗教ではないという話

 キリスト教はヨーロッパの宗教だという話はよく聴く……が、これはかなり西ヨーロッパ以外のキリスト教徒たちにとっては迷惑な話ではある。
 一般的な理解では、ローマ皇帝のテオドシウスが380年二月二十八日、法令によりローマを国教化して、ヨーロッパにキリスト教が広まる端緒を創ったとされる。
 だが実は、それより百年ほど前にアルメニア王国がすでにキリスト教を国教化していた。そしてそのために東の国境を接する

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外国語チャンネルのすすめ~NativeLangやAcademia Playなど~

 Nativelangという世界中の言語について解説している動画チャンネルがすごい。

 僕は学問関係の動画で外国語のチャンネルをよく見るんだけど、その中でもこれはかなり見ごたえがある。

 英語から、アメリカ大陸の先住民の言語まで、その歴史と特徴を独特な絵を交えて解説してくれる。一番見ごたえがあったのは、『北アフリカで話されていたラテン語のその後』ってやつだ。

 ローマ帝国の領土が地中海全体に

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改宗と魂の遍歴

 あなたは神を信じますか? というのは、宗教が一般的に信仰されている場所では無意味な質問だぞ。
 今の日本では神を信じても信じなくてもいいと言われてしまうだろうが……僕にとって神について考えるのは知的な体操だと思う次第だ。

 僕は神を信じれば、自分の思考に軸を持つことができるのではないかと、いつも考えている。どこかでは、それもまた迷妄に過ぎないと笑いながら。

 信仰を強制するのと、誰かが葛藤の

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Non angli, sed Angeli.

「アングル人ならずして、天使なり」(教皇グレゴリウス一世、約540年生誕、604年三月二十九日死去)

 六世紀までケルト人が住んでいたブリテン島に、大陸側からアングル人やサクソン人、ジュート人といた異邦人が攻寄せて定着したことは歴史をかじった人間ならすぐ分かるはずだ。今みたいに英語というブリテン島に定着したのは実はそう昔のことじゃない。言語ですらお互いに通じないもののごった煮なのだし、当然人の外

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ハーレム

ハーレムとは最近では、小説やアニメの中で、男が複数の女を独占する状況で使われることが多い言葉であるが、実際にはより複雑な経緯を有している。

 ハーレムの語源はアラビア語haramである。本来は「禁じられた」という意味がある。
 イスラーム法学でharamはある行為の禁止を意味した。たとえば「たばこは人体に害があるのでharam」という風に使われた。haramの対義語がhalalであり、近年話題の

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