小話:イエスの名前

イエスは元々ヨシュア(イスラエルの族長、カナンの土地に)と同じ名前だ。ヨシュアは「ヤハウェの救い」を意味する名前だ。しかしナザレのイエスの名前は、当時彼が生きていた頃は、語末のaが脱落してイェシューという感じの発音になっていたらしい。
 そこにギリシア語の名詞の活用語尾-sを添えてイェースースと呼び、ここから日本語のイエスにつながっている。イエスという名前は当時ではよくある名前だった。ユダヤ人には苗字がないので、親の名前か、出身地を添えるのが別人と区別する唯一の方法だった。

 聖書では、バラバという罪人がイエスの代わりの釈放されるが、彼にはイエスという別名があった。近い時代、シラの子イエスという人物が、ローマによる支配に抗って蜂起している。
 クルアーン中ではイエスはイーサーと呼ばれるが、アラビア語でも、アラブ人のキリスト教徒はより原音に忠実なヤスーと呼んでいる。

 神の御名であることもあってか、キリスト教圏においてイエスの名前はまず用いられない。
 スペインポルトガルでは例外的にイエスの名前を普通に用いる。これはかつて当時、ムスリム(イスラム教徒)が預言者ムハンマドの名前を子供の名付けに一般的に用いていたのに習っていたのではないかと見ている。