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JICAグローカルプログラム75日間を終えて後編「古き、新しき、何かある」多良木町を経験する


前編の振り返り

 JICAグローカルプログラム研修生の三井健司です。
 前編では私がたらぎ財団で挑戦した3つのプロジェクトについて紹介しました。ぜひ前編からお読みください。
 後編は2ヶ月半、多良木町でじっくり過ごした私から見た「多良木町」をお話しさせていただきます。熊本と1300km離れた東京から来た私だからこそ発見できたものがあると思っています。沢山のことを経験しているため、今回は選りすぐりのものだけを話します。

日本が誇る絶景「妙見野の雲海」

 

妙見野自然の森展望公園の「雲海」

 ここはどこだと思いますか?
 
 天国でしょうか?
 
 まさに雲の上の世界です。多良木町にある「妙見野自然の森展望公園」で11月~3月の濃い霧の時間帯にだけ見れる「雲海」です。
 人吉球磨地域を一面雲が覆っています。日本でも限られた地域でしか見れない絶景が多良木町にはあります。意外なことに多良木町に住んでいる方でも知らない方が多いのです。濃霧の日は「洗濯物が乾かない」と嘆いている地域の人達のはるか上空では、鬱々とした気持ちを吹き飛ばすほどの美しい景色が広がっています。
 2年前、豪雨が南九州地方を襲いました。その痕跡が今も様々な地域で残っています。多良木町にあるこの場所でも被害が残ります。以前は車で山頂まで行くことができました。道路が豪雨で寸断されてしまい未だに復旧していません。そのため山頂に行くには「遊歩道」を通るしかありません。「遊歩道」は登り40分、下り20分です。序盤と最後が傾斜が大きく心拍数が上がります。登り詰めて山頂で飲むコーヒーは格別です。

山とコーヒーは何でこんなに相性が良いのでしょう☕️

 たらぎ財団では過去に妙見の自然の森展望公園で「ヨガ」や「社会人向けのワークショップ」イベントを開催しています。私が最も多良木町で美しいと思う「雲海」をご覧になってください。きっと価値観を変えるほどの衝撃を受けるはずです!

DeNAによるワクワクするICT教育

 教育事業に力を入れているIT企業DeNAは、熊本県多良木町と2021年8月に「IT人材育成事業に関する協定」を締結し、町内の小中学校全校を対象として、プログラミング教育をはじめとした様々な支援を行っています。IT業界で有名なDeNAが多良木町と連携していることに驚きを隠せません。また授業を見学させて頂き、都会と変わらない、またはそれ以上の経験が多良木町の小中学校でできている事実に感動しました。
 研修期間中に「中学生向けVRゴーグルの授業」、「小学生向けドローンの授業」が開催されました。

中学生向けVRゴーグル授業

 授業前日にDeNAの2名が20台のVRゴーグルをWi-Fiで繋ぎ一つのPCで操作できるように設定されました。PC操作で20台に一気に同じ映像を流すためです。台数がこれくらいになると上手く作動しない機器があり、すんなりとは設定できませんでした。しかしそこはDeNA、思いがけないトラブルにも普段から対応されているため問題なく解決されていました。

前日準備。Meta Quest 2(VRゴーグル)が並ぶ。

 授業当日は、VRゴーグルで見た3次元の世界に中学生は大盛り上がりです。目の前に鹿が出てきて舐められそうになったり、高速道路で走る車の上に乗っていたり、あまりのリアルさに生徒の叫び声が止まりませんでした。

授業の様子。体験型授業は生徒さんも積極的です。
映像を見た途端、、、目の前に「鹿」が🫎

小学生向けドローン授業

 ドローン。飛んでいる所を初めて見ました。アフリカのザンビアではドローンを使って都市部と農村部を結び、医療物資を運んだりしています。ドローンなら10kmを15分で進むことができるため陸路よりも早く運ぶことができます。

 ドローン授業当日、小学校5年生がPCでドローンの動きをプログラミングしてから実際同じ様に飛ぶかどうか検証する工程でした。

PCでプログラミングして奥のドローンが飛び立つ瞬間です
最終目標はコーン間を八の字を描いて戻って来ることです

 DeNAの方の授業は「ワクワク」しかありませんでした。こんな授業を受けれる小学生を羨ましく思います。この授業を受けた子どもたちは将来どんな大人になれるのだろうという未来の「ワクワク」も湧き上がってきます。
 授業の最後に、『IT技術というのは、「数学」や「理科」の分野が生かされるけど、業界のルールや法律を作るのは「社会」が関連しています。だから中学校で学んでいる科目は物事を分かるのに色んな科目を知ってないといけません。』とDeNAの方が言っていました。その一言を言うためにVRゴーグルやドローンの授業をされているのだと大変感心しました。

「球磨焼酎」世界が認める産地呼称ブランド

 人吉球磨地域に蔵をかまえる27の蔵元は、複数の個性ある銘柄を持ち、すべてをあわせると200以上のブランドを誇っています。杜氏たちの手で丹精込めて作られた球磨焼酎は、 芳醇な香りと深いコクが楽しめるのが特徴で、多彩な味のバリエーションを作り上げています。
 「球磨焼酎」は、日本に4つしかない産地呼称が認められた本格焼酎のブランドのひとつ になりました。1995年、人吉球磨で造られる米を原料とした焼酎が正式に『球磨焼酎』としてWHOに認められる「地理的表示(GI)の産地指定」を受けました。良質な米と水のこだわりが、球磨焼酎をコニャックやボルドーワインなどと肩を並べる世界的な銘酒となった要因です。

球磨焼酎の定義

米(米こうじを含む。)を原料として、
人吉球磨の水で仕込んだもろみを
人吉球磨で単式蒸留機をもって蒸留し、
びん詰めしたもの。

多良木町は7蔵の焼酎蔵がある

 7蔵にはそれぞれのこだわりがあります。研修期間5蔵を巡り、経営者、職人の大切にしている所をお聞きしました。球磨焼酎の伝統製法を重んじて継承されています。一方で、球磨焼酎の枠を飛び越えて新しいお酒の価値を見出す企業努力もされています。焼酎蔵ならではの挑戦をされています。
 やはり日々研鑽を積まれている焼酎はどれも個性があり、とても美味しいです。沢山種類がありますので、私の一番はコレという球磨焼酎を探してみることをオススメします!

たらぎ財団のコワーキングスペースには焼酎樽に「球磨焼酎」を乗せて飾っています。
木下酒造「文蔵」、左からオリジナル、20年貯蔵、梅酒。20年物は上品な辛味に変化します。
恒松酒造DATENSHI LUCIFER。フランス・ヘネシー社で使用されていた最高級のコニャック樽にて、減圧蒸留の米焼酎を5年以上貯蔵熟成されています。フルーティーなブランデーの様な味がします。
房の露。大きな釜の中で米を加熱して米麹を作っている様子です。
木下酒造ではこの様に地中に壺を埋めて貯蔵しています。伝統的な貯蔵方法です。

多良木町の学びを経てマレーシアでどう過ごす?

 グローカルプログラム75日間、医療・リハビリから離れた世界で過ごしました。頭をゼロにして始まった研修を振り返ると「とてつもない量の経験を積んだ」と思っています。一旦理学療法士を脇に置いて目の前のことに取り組んだからこそ余計なことを考えずにどんどん情報が頭の中に入ってきたのでしょう。初めて学ぶことはおもしろいしワクワクします。
 今回の研修で学ぶべきことは、「キーパーソン」の重要さです。社会学では「ゲートキーパー」と言うそうです。私の指導者である栃原さんは、「多良木町で何かやりたければ栃原さんに相談しろ」と言われるような多良木町で最も人や企業を繋げることのできる方でした。JICAの活動で課題を見つけて実行に移す時に最も難しいのが「誰に相談するか」という所だと思っています。所謂「キーパーソン」です。今回は幸運にも私の指導者が「キーパーソン」であり、その幸運を繋ぎ合わせて普通じゃ考えられない75日間を過ごすことができました。マレーシアに行った際に「このプロジェクトにはこの人に相談するしかない!」という人を早く見つけることが重要なミッションだと思っています。

おわりに

 多良木町は想像以上におもしろい町でした。そのおもしろさを作っているのは、多良木の人は「こうしたい!」と言う熱量が高く、挑戦している人たちでした。熱量のある人は、「もう一度あの人に会いたい」と思わせる何かがあると思っています。だからおそらく私は東京へ帰省したり、マレーシアへ行った時にきっと「あっ、また多良木町に行ってあの人に会いたいな」と思うのでしょう。その様な感情にさせることが、たらぎ財団の取り組む「関係人口を増やす」と言うテーマに繋がるのだと思います。

JICAグローカルプログラム研修生
三井健司

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