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なれないことはしないほうがいい

 アップテンポの曲に乗る。
 半分も聞き取れない英語の歌詞を置いてきぼりにし、テンポのままひたすら踊る。
 弱いくせにアルコールも飲んで、体力がないくせに跳び跳ね続けた。
 途中話しかけてくるパーティーピーポーに陽気に笑顔を向ける私。
 ハイタッチ、ハイタッチ。
 そのまま何が楽しいのか大声で笑いはじめ、また踊り出した。

 気がついたら入り口の端、邪魔にならなそうなところで蹲っていた。
 顔が熱い。きっと真っ赤だ。
 夜風が心地よく、目を細める。
 そうして頭痛と格闘していると、見知らぬ男性たちが私になにやら話しかけてきた。
 日本人だろうけど、あいにくそれどころじゃないので意味を理解できない。
 しばらくしていると一人の男性が私にペットボトルの水をくれた。
 ありがとう、見知らぬ人。
 頭の動きだけで感謝を伝えると、なにやら楽しそうな雰囲気になり、そのまま彼らはどこかへきえていった。 
 もらった水を飲む。
 この世でこんなにおいしい水はないのではと思えるほどおいしかった。
 ありがとう、見知らぬ人。
 感謝がさらに募る。
 この瞬間だけ好きになってたかもしれない。

 そのまま少しして、ようやくふらふらと立ち上がり命の水を片手に歩き出した。
 ありがとう、見知らぬ人。
 はっきり見てないから覚えてないし、覚えていても会わないけど。

 そして教訓。
 小説に影響されたからといって、突発的に行動しない。
 どう考えても私の行ける場所じゃないのに。
 でも、こんな経験素面ではできなかったからちょっとラッキー。

 禁煙ぐらいの決意で私は教訓を胸に刻み、今日の思い出を美化した。
 

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