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芥川龍之介 芋粥 を読んで

みなさん、こんにちは。芥川龍之介の「芋粥」を読んだ感想を書いていきます。

あらすじです


五位という地位の低い侍が主人公です。彼は背が低く、赤鼻といった、外見に多くのコンプレックスを抱えており、周囲の人からも馬鹿にされていました。近所の子供たちがのら犬をいじめていた際、彼が止めに入っても「この赤鼻が」と軽蔑され、不遇な扱いを受けてしまう始末です。そんな彼ですが、実は夢がありました。

それは

芋粥を飽きるほど食べてみたい

という夢です。

あるとき、主家の関白の屋敷で正月の大宴会に参加していたときです。大宴会には、多くのご馳走がありました。地位が高い人は多くのご馳走を先に食べることができますが、低い人はその残り物を食べるといった、風習がありました。その中に五位も残りのご馳走を食べれるか、食べれないか、そわそわしていました。そして、自分の番が来ると満足した顔になっていきます。

「ああ、美味しいな。こんな上手い芋粥を、一度でいいから飽きるほど食べてみたいなあ」

芋粥を啜りながら、思わず本音が出てしまいました。

「ほうー、貴様は芋粥を食べることに飽きてなそうだな」

利仁将軍の声です。肩幅が広く、身長も高く、鷹揚な将軍らしい声で五位を嘲笑っていました。

「それなら、俺様が貴様の望みを叶えてやろう」

まるで選挙カーの上で演説している議員のような声で言うと、周囲の人たちが利仁将軍と五位へ視線が集まります。

「どうだ?」

「……」

「嬉しいだろう?」

「……」

周囲の人からの視線が自分だけに向けられると、五位はもじもじしてしまい、机の上に置いてある盃と利仁将軍の顔を交互に見ていました。

「まあ、無理することはない」

五位は黙ったままなので、利仁将軍は面倒臭そうな表情でそう言います。

「おおお、恐れれれ……いります」

何を答えても馬鹿にされるだろう。五位は思いましたが、周囲の人と利仁将軍の視線が怖くなったので、慌てた口調でそう言いました。結局、彼は周囲の人から馬鹿にされ、五位の言動を真似する人も出てきました。

「そうか。じゃあ、楽しみにしておけ」

それから4,5日経ち、五位のもとに利仁将軍が現れます。利仁将軍は五位と一緒に京都にある温泉施設に行こうと誘います。五位はちょうど風呂に入っておらず、身体が痒かったので利仁将軍の心遣いに感謝し、行くことになりました。

利仁将軍は馬を走らせ、後から五位が付いていくように目的地へと向かいます。しかし、目的にはなかなかたどり着く気配がありません。

「将軍様。京都を超えてしまいましたが、我々はいったい、どこに向かっているんでしょうか?」

「実はな。敦賀にある俺様の屋敷へ向かっている」

五位は京都の東村辺りだと思っていましたが、約75km距離まで馬を走らせることに驚いていました。

「将軍様、お供さえもいないのに、こんな道のりは無茶ですよ」

「ふん、黙ってついてこい。俺様がいれば、安心だ」

と自信満々に言っていると、近くに一匹の狐が現れました。狐を追いかけ、捕まえると

「おい、狐。よーく聞けよ。今夜のうちに俺様が屋敷に向かうから『客人にもてなしするように準備しろ』と伝えてこい」

と狐に言った後、一振りで近くの草むらへ放り投げました。

「狐、大丈夫ですかね?」

「知らん。さあ、走った、走った」

狐はもういなくなり、二人は目的地まで向かっていきます。

それから夜になると二人は野宿しました。次の日。朝早くから出発し、二、三十町ほどの彼方から人だかりが見えます。

「俺様の言ったとおりだ。狐が役割を果たしてくれたみたいだな」

利仁将軍がそう言うと、一人の家来らしきものがやってきました。どうやら、家来は昨日の夢に狐が現れ、客人が来るからもてなす準備をしろ。と言われれたことを話します。

「俺様みたいな人間になると、獣さえも操れるものだ」

「そうでございますね」

利仁将軍の言葉に、五位は呆れた口調でそう言いました。

その日の夜。五位は屋敷で寝ることになりました。

「明日、芋粥を食べることができる。しかし、この胸のざわめきはなんだ」

五位は布団に入っても、なかなか眠れません。

遠足の前日にそわそわし、楽しみのあまり、眠れない子供のように待ちわびる心

こんな簡単に夢が叶ってもいいのだろうか。何故か夢が叶うことに対して、躊躇してしまう心

二つの心が同時に現れ、しばらく寝つきが悪い時間が続きます。

次の日。利仁将軍の屋敷は慌ただしくなっていました。大量の芋の調理と芋粥のお椀が用意されており、家来や料理人が次々と芋粥をお椀に入れていきます。数は分かりませんが、約100人分以上と想像してください。

「さあさあ、腐るほどあるんだ。食え食え」

わんこそばのようにすぐ出せるよう、芋粥の入ったお椀を持った家来などが近くで待機し、五位をじっと見ます。

「もう、大丈夫です」

「そんな謙虚にならなくていいだろう。食え」

「もう、もう、私には十分頂きました」

五位は用意された芋粥を見て、食欲がますます無くなり、げんなりしてしまいました。

「そうか、残念だな。俺様が貴様の夢を叶えてやったのに。おや、ちょうどいいところに来たな」

利仁将軍は目の前にいた一匹の狐を指差して言いました。もし、狐が目の前に現れなかったら、家来の人たちは五位のお椀に芋粥をどんどん入れていたのに違いありません。五位は助かったと、安堵します。

「奴がもう限界というんだ。だから、お前にも芋粥をあげてやる。こっちにこい」

利仁将軍はそう言って、家来に器を持ってこさせます。そして、器に芋粥をたっぷり入れて狐にあげます。狐はむさぶるようにガツガツと食べていきます。

そのとき、五位は狐を見て思い出します。

周囲の人が自分のことを馬鹿にしたこと。

外見のコンプレックスに悩まされ、孤独だったこと。

「芋粥を飽きるほど食べたい」という夢を抱いていた自分のこと。

悪いことが多くあっても夢という糧があったから、日々を過ごすことができたのではないかと考えます。そして、それが叶ってしまったので、喪失感のようなものが彼に襲いました。

五位は複雑な心情を抱いたまま、京都へと帰っていきました。


感想です


芥川龍之介が今昔物語集の「利仁将軍が五位という侍に芋粥をご馳走する話」を元に作った作品です。五位という侍が悲劇のヒロイン、利仁将軍が傲慢で卑しい人であるかのように書かれていました。

今昔物語集の記事について記事があるので、良ければご一読してください。

芥川龍之介が書いた利仁将軍が五位の侍に芋粥をご馳走する話は

第三者によって自分の夢や願望が強制的に叶えられ、そのとき、どんな心情を抱くのか。という感じでした。

五位は「芋粥をたらふく食べる」という大きな夢を持っていました。その大きな夢がいつか叶うのを信じて、日々苦しいことやつらいことなどに耐えるていました。

と同時に

五位は「芋粥をたらふく食べる」という夢や願望以外無いように思えました。

なので、その夢が叶った後、何を持って生きていればいいのか。という考えに至ったのかもしれません。

例えるとしたら、

ポルシェなどの高級車が欲しい人がいるとします。この車を乗ってみたいという夢を抱きながら日々の生活し、仕事を頑張ります。しかし、突然目の前にポルシェが現れるとしたらどうなるのか。

最初は嬉しい気持ちを抱きますが、日々過ごすうちに

維持費

燃費

駐車場代

車検

といったお金がかかります。

もし、自分が身の丈に合ってない生活をしていたなら、お金がかかりすぎて歯車が狂ってしまうのかもしれません。おそらく、夢を追いかけていた時が幸せだったと思います。

五位のように一つの大きい夢を持って生きることは大切ですが、小さい夢や願望を多く持って、叶えられそうで叶えられない大きな夢を持つことも大切なのかもしれません。

最後まで、読んで頂きありがとうございます。

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