11.9. 初雪の山脈
そんな景色を横目に見ながら、出勤するために急いで坂を下った。
明日のイベントのために、古民家を掃除したり、駐車場のバミリをしている間、道路の向こうには、白い雪渓の筋をつけた山脈が、大きく見えていた。
昨日までは、その山肌に生きていた低木の藪が深いワインレッドに色づいていたのに。一夜明ければ冬の景色だった。
空は澄んで限りなく青く、町の影も濃く青い。寒々しい風にふるえながら、そんな仕事をしているうちに陽が照り出す。
お昼。
薄暗く、寒々しい宿場町の古民家から、山の斜面に建つ平屋の縁側に帰れば、野山は底抜けに明るく、眩しいほどだった。
初雪を被ったアルプスの山脈は西にあるので、昼を過ぎて日が傾き始めると、逆光になる。どうやら雪は融けて、青く平たい一枚板のように広がっていた。
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