Tao Kinoshita 木下太尾

紙と詩と生活 麻績和紙

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紙と詩と生活 麻績和紙

最近の記事

『紙漉十二月』配布しています。 〜麻績和紙と文化、自然について

麻績村の手漉き和紙をつかって、『紙漉十二月』という月間のフリーペーパーを発行しています。2024年の1月から初めて、今、6号目です。 内容は、麻績村に残る古い和歌や俳句などの文化を訪ねつつ、季節の紙仕事や麻績という山奥の村にある自然についてご紹介しています。 麻績の和紙は、楮(こうぞ)という木の皮から作られてきました。 寒い冬、木の皮を剥いで煮込み、叩いて、分解された繊維を水にとかして、紙に漉きあげるのです。 自然の植物繊維からつくられた和紙だけのもつ、優しい手触り、美

    • 廃棄前の古本と、自然の手漉き和紙でつくる、〈古本×和紙〉

      「日々廃棄されてゆく古本を、もう一度新しい紙としてよみがえらせたい。」 そんな思いから、伝統的な和紙の技術をもとに、〈古本×和紙〉という新しい紙が作られました。↓↓ 国産楮(こうぞ)の和紙原料に、古本を混ぜ込み、1枚の紙として漉き上げました。 * * * きっかけは、長野県上田のブックカフェ「本と茶 NABO」さんにて、「本だったノート」– 古紙になるはずだった本からできたノートをみせていただいたこ

      • 紙漉十二月<3月号> 近世麻績の和歌と、楮煮について

           白雪のまだふる里の野に出て       心ふかくもつめる若菜は   貞雄  この三月はふしぎと雪の日が多く、ようやく春も訪れたかとおもえば、また山里は静かな白い景色にもどります。しかし、春先の雪はとけるのも早く、滔々と軒を流れる水と光が軒先の樋をこぼれて、天日干ししていた紙へ泥を跳ねさせるのでよわりました。  さて、先月紹介した麻績宿の俳人、朴翁・東紅夫妻の孫に、貞安という人がいました。酒屋(大和屋)を継ぐかたわら歌に執心し、彼もまたその時代の麻績の文化的な中心と

        • 紙漉十二月<2月号> 麻績の俳諧と、砧、楮叩きについて

             小夜きぬた寝てきくよりの外(ほか)はなし   天姥 虎杖  虎杖は姨捨山麓戸倉に生れ、麻績の文化人とも深く交流した俳人でした。麻績の酒造大和屋の主であった朴翁居士(臼井九太夫定寛・俳号鳥蛾)の三年忌を追悼した句集「こけのつゆ」に序の文をおくり、この句を詠んで寄せたようです。  「きぬた(砧)」とは、衣服を叩いて、柔らかくしたり光沢をだしたりするための木板と木槌のことで、こんこんと山里に響く砧の音は秋の長夜の風物詩でした。はや朴翁も亡く、虎杖も還暦をすぎれば、秋の月を

        『紙漉十二月』配布しています。 〜麻績和紙と文化、自然について

          信生法師の和歌と、雪晒しについて 『紙漉十二月』<1月号>

             ふる雪に挿すさかき葉もうづもれて       あらぬ梢にかくる白ゆふ   信生法師  和紙の制作工程の一つに、「雪晒し」というものがあります。   冬の初め頃、(和紙の原料になる)楮という木を刈り、蒸し煮にして皮を剥ぐのですが、その皮を雪の上におくのです。冬の日は雪原にかがやき、その光に晒された楮の皮は白く色がぬけてゆきます。一日晒して、雪の上で凍りついた皮を拾いあつめてゆくと、澄みきった夕空の光をうけて、神々しく透けてゆくようでした。  冒頭の「ふる雪は……

          信生法師の和歌と、雪晒しについて 『紙漉十二月』<1月号>