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小倉に長崎の鐘あり

当時ブログに書いた文章をnoteに載せてみたくなりました。

=2005.08.18の記事=

「小倉に長崎の鐘あり」

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あまり知られていないことですが、小倉には「長崎の鐘」があります。

小倉城を中心とする勝山公園の中に中央図書館があり、その横にひっそりと原爆慰霊平和祈念碑が立っています。ここに長崎の鐘があります。私自身でさえ図書館に寄ったついでに、散歩して偶然気がついたぐらいで、ふだんはあまり目立つ存在ではありません。

ここで毎年8月9日、原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が行われています。今年は被爆者や遺族ら約200人が出席し、犠牲者のめい福と平和を祈ったそうです。

ところで、なぜここに長崎の鐘があるのでしょうか?

平和記念碑前には、こう書かれています。

昭和20年8月9日は、長崎市に原爆の投下された日です。当初、この新型爆弾は、旧小倉陸軍造兵廠があったこの地に投下される予定でした。ところが、当日の小倉上空は、雲のため、視界がきかず、第二目標の長崎市に投下されたのです。戦後、この事実が明らかにされ、北九州市では、被爆者の霊を慰め、平和への切実な願いをこめて、平和祈念碑を建立しました。

73年に北九州市により平和祈念碑が建てられ、76年には長崎市から長崎の鐘が贈られたそうです。

長崎に落とされた原爆は、本当は小倉に落ちるはずでした。
※その経緯はこちらが詳しいです。
歴史に"もし"はないけれど、小倉で奪われていたかもしれない命と、長崎で奪われてしまった命のことを、どうしても考えずにはいられません。

小倉で行われる平和祈念式典は特別な意味を持つ気がします。長崎の平和祈念式典は被爆地から犠牲者のめい福と世界に平和を願うものです。小倉の平和祈念式典は犠牲者のめい福と平和を祈るのはもちろんですが、被爆地にならなかった者が長崎に思いを馳せ、尊い犠牲のもとに、今私たちが生きていることを確認する場といえるかもしれません。

それは広島・長崎の当事者以外の日本人大多数が共通する思いであり、被爆地にならなかった者が行う式典として、小倉の平和祈念式典はそれを代表するものだと思うし、もっと注目されても良いと思います。

残念ながら当日は出席できなかったので、後日、平和祈念碑の前で手を合わせました。8月の晴れた朝、セミの騒がしい声だけが聞こえます。60年前も同じような日だったのだろうか?あの日小倉上空で起こったこと、長崎で起こってしまったこと、目を閉じ思いを馳せながら、しばらく黙とうしました。

来年まだここにいるなら、小倉の平和祈念式典で鳴り響く長崎の鐘を聞いてみよう。気がつくとそんなことを考えていました。

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