【彼の記憶、彼方から】2018/05/03
「そういえば、昨晩、絵描きになると言っていたけど、まだ気は変わらないのかい」
皮肉交じりにエヌに尋ねてみた。
彼は余熱で生きているような人間なので、どうせあの情熱だってすぐに冷めているに違いないと思ったのだ。
しかし、エヌからの回答は意外なものだった。
「もちろんだとも。今日だって絵を描いていたんだ。幸い僕には友達が少ないから、邪魔が入らず集中して描くことができたよ」
他の誰かが言っていたなら「かわいそうに」と思ったに違いない。
しかし、エヌに対して「かわいそう」という感情は