【彼の記録、彼方から。】2018/05/08

もしも、世界が愛で満ち溢れているのなら、僕は愛に溺れて死んでしまうだろう。
もしも、世界が絶望で満ち溢れているのなら、僕は一縷の希望を探して生き続けるだろう。
無条件で満たされている世界は、無条件で愛される世界は、絶望よりも絶望に近い。
求めずとも与えられるのなら、僕の心は愛で破裂してしまうだろう。
きっと、綺麗なピンク色をした愛を撒き散らし、見るも無残に死んでしまうだろう。
それならば、僕は絶望の中で希望を探したい。
暗闇に瞬くきらめきをこの手で掴みたい。
きっと、希望は僕が想像するよりもグロテスクなものに違いない。
一見してそれは絶望に限りなく近い。
絶望の中を彷徨う希望は仕方なしに絶望を纏っている。
絶望に喰らわれぬように、汚らしく、醜くに、痛々しく見せているに違いない。
もしも、世界が愛で満ち溢れているのなら、僕は愛に溺れて死んでしまうだろう。
もしも、世界が絶望で満ち溢れているのなら、僕は一縷の希望を探して生き続けるだろう。

−−エヌの日記より抜粋

#小説 #エッセイ #詩

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