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暗い海の美女と円形脱毛症

あくる日の朝、私は真っ暗な海の底で目を覚ました。 ぼやけた視界であたりを見渡すとゆらゆらと動く光が見える。 よく目をこらすと、それは深海魚だった。 醜い造形をしたそれを幻想的な光が美しいものであるかのように振舞っている。 ふと、海の底にも社交辞令のようなものがあるのだろうかと思った。 もちろん、りんごは赤い。 しかし、人魚が本当に存在するのだとしたら、きっと暗い目をした陰鬱な存在に違いない。 鱗は剥がれ落ち、海水で傷んだ髪をかき回している。 彼女の後頭部には、暗い海の底でもは

    • 【エンジニアポエム】疲弊したクジラ

      二進数の海に疲れたクジラは、音も無くどっかに消えた。 現実味のないヴァーチャルな海へ逃げ出した。 箱船として扱われるのが嫌になったのさ。 クジラはさまよう。 ヴァーチャルな海を。 あてもなく、あてもなく。 #ポエム #エンジニア

      • 【スケッチ】2018/05/10

        • 【スケッチ】2018/05/08

        暗い海の美女と円形脱毛症

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        記事

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/08

          もしも、世界が愛で満ち溢れているのなら、僕は愛に溺れて死んでしまうだろう。 もしも、世界が絶望で満ち溢れているのなら、僕は一縷の希望を探して生き続けるだろう。 無条件で満たされている世界は、無条件で愛される世界は、絶望よりも絶望に近い。 求めずとも与えられるのなら、僕の心は愛で破裂してしまうだろう。 きっと、綺麗なピンク色をした愛を撒き散らし、見るも無残に死んでしまうだろう。 それならば、僕は絶望の中で希望を探したい。 暗闇に瞬くきらめきをこの手で掴みたい。 きっと、希望は僕

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/08

          スケッチ

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          【彼の記録、彼方から。】2018/05/07

          スマートフォンのアラームが鳴り響く。 連休の間、ずっとアラームを使わずに起きたい時間に起きる生活を続けていたエヌには、そのアラームが脳髄まで響いているように思えた。 しかし、無理矢理にでも布団から出ると、意外にもすっきりと目覚めることができてエヌは驚いた。 これまで経験上、連休明けの朝は黒ずんだオイルのような憂鬱に苛まれることが予想していたので意外だった。 自由奔放で自分勝手に生きているエヌだが、平日は真面目に働いている。 空想癖があり、突拍子もないことを考える性格に似合わ

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/07

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/06

          何もない日だった。 少なくともエヌにとっては。 大型連休の最終日、エヌはとくに予定もなく、ふらふらと街に出た。 部屋にこもっていると、考えたくもないことが頭に浮かんできてしまう。 本来、エヌはインドアな人間だが、何か辛いことがあるとどこかへ飛び出してしまいたいと思う習性がある。 その日も、堂々巡りする答えのない問いに悩まされ、居ても立っても居られなくなり、街へ出た次第である。 クラッチバックに電子書籍端末とノートとノートPCと財布を入れて部屋を出た。 勢いで部屋を出たものの特

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/06

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/05

          その日もいつものように、私より一足先にエヌがバーにいた。 私が店に入ったのに気づくと軽く右手を上げる。 そして何事もなかったかのように、ウイスキーの入ったロックグラスを暗い顔で眺める。 「自分がどうしようもない人間だって気づいたんだ」 私がエヌの隣に座ると、にわかにそう呟いた。 「そんなこと知っているよ。なにを今更」 「君は真面目な男だけど、デリカシーってものがないね」 「人を選んで、言葉を選んでいるだけだよ。それとも、気を使って優しい言葉をかけた方がよかったかい?」 「いや

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/05

          【彼の記憶、彼方から】2018/05/03

          「そういえば、昨晩、絵描きになると言っていたけど、まだ気は変わらないのかい」 皮肉交じりにエヌに尋ねてみた。 彼は余熱で生きているような人間なので、どうせあの情熱だってすぐに冷めているに違いないと思ったのだ。 しかし、エヌからの回答は意外なものだった。 「もちろんだとも。今日だって絵を描いていたんだ。幸い僕には友達が少ないから、邪魔が入らず集中して描くことができたよ」 他の誰かが言っていたなら「かわいそうに」と思ったに違いない。 しかし、エヌに対して「かわいそう」という感情は

          【彼の記憶、彼方から】2018/05/03

          【アイデア】電子書籍版物理本棚

          電子書籍版の物理的な本棚があったら面白そう。 イメージとしては、本棚サイズのディスプレイがあって、 タップすると電子書籍端末で選んだ本が開かれるイメージ。 スペースを取らないことが電子書籍のメリットの一つで相反する性質のようにも思える。 ただ、もう少し大きなくくりで「読書」というくくりで捉えた場合、そこまでナンセンスではないように思う。 読みたいを本を本棚から探すという行為が与える印象って意外と大きいような気がする。 読書は読むときだけでなく、本棚から取り出すときから始まって

          【アイデア】電子書籍版物理本棚

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/02

          「絵描きになろうと思うんだ」 唐突もなく、エヌはそう言った。 突飛なことを言うのが常だから、もはや驚きはしなかったが、 これまた、絵描きとはどういうことだろうか。 「どうしてまた、絵描きになろうなんて思い立ったんだい?」 「簡単なことさ、自分の描きたいものを自由に描けたら楽しいに決まっているじゃないか」 「それは、そうに違いないが。私が知りたいのはどうしてそう思うに至ったかということなんだ」 「バンクシーってアーティストを知っているかい?」 そうエヌは尋ねてきた。 「たしか、

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/02

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/01

          いつものバーに行くと、一足先にエヌが一番奥のカウンター席に座っていた。 その日、エヌは山手線大塚駅近くのバッティングセンターに行ったらしい。 人もまばらな閑散とした真昼間のバッティングセンターで、黙々とバットを振り続けたと言っていた。 その日、エヌは有給休暇を取ってのんびりとしていたらしい。 有給を取ってまでして、なぜバッティングセンターに足を運んだかは謎だ。 きっとエヌのことだから、理由なんてないのだろう。 ただ、なんとなくそういう気分だったからそうした。 そういう男だ。

          【彼の記録、彼方から。】2018/05/01

          傷ついていないのに慰めないで、傷つくから。

          ある日、僕は重要なプレゼンを任された。 重要といっても、社内向けのプレゼンだし、僕がプレゼンに失敗したところで会社になんの影響も与えない些細なプレゼンだ。 重要というのは、僕にとって重要であるという意味だ。 僕はプレゼンにこだわりがある。 自分のためのプレゼンではなく、参加者のためのプレゼンにする。 それが僕のこだわりだ。 プレゼン慣れしている人にとっては当たり前かもしれないが、 新卒2年目の僕にとっては当たり前ではないのだ。 発表することに精一杯で、なんとプレゼンが終われば

          傷ついていないのに慰めないで、傷つくから。

          【彼の記録、彼方から。】2018/04/30

          2018年のゴールデンウィークのことだった。 エヌは休みが続いていることをいいことに、深夜まで深酒して、昼頃に起きる生活を続けていた。 「こんなにだらけきった生活をするのは大学生の時以来だ。これのためだけにもう一度大学生をやりたいね」 とエヌは言っていた。 エヌはシステムエンジニアという職業柄、夜遅くまで働いたり、土日に仕事をすることも珍しくない。 そんなエヌにとって、ゴールデンウィークと有給を組み合わせて9連休も取れたことは奇跡らしい。 私には、奇跡的な大型連休を酒を飲んで

          【彼の記録、彼方から。】2018/04/30

          【彼の記録、彼方から】2018/04/29

          ある男がいた。 仮に名前を「エヌ」としておこう。 とくに意味はない、便宜上つけた名前だ。 この文章はエヌについて書かれたものだ。 あるいは、エヌのために書かれたとも言えるかもしれない。 2018年のゴールデンウィーク2日目。 エヌは最悪な気分で目覚めた。 頭の内側からハンマーで叩かれたような痛みと吐き気がする。 口の中は、昨日飲んだウイスキーの味が残っている。 ほのかなピート香と潮の香り。 ラフロイグの香りだ。 昨日の晩、エヌはラフロイグを飲んで酔いつぶれて、そのまま眠りに

          【彼の記録、彼方から】2018/04/29