暗い海の美女と円形脱毛症
あくる日の朝、私は真っ暗な海の底で目を覚ました。
ぼやけた視界であたりを見渡すとゆらゆらと動く光が見える。
よく目をこらすと、それは深海魚だった。
醜い造形をしたそれを幻想的な光が美しいものであるかのように振舞っている。
ふと、海の底にも社交辞令のようなものがあるのだろうかと思った。
もちろん、りんごは赤い。
しかし、人魚が本当に存在するのだとしたら、きっと暗い目をした陰鬱な存在に違いない。
鱗は剥がれ落ち、海水で傷んだ髪をかき回している。
彼女の後頭部には、暗い海の底でもは