傷ついていないのに慰めないで、傷つくから。

ある日、僕は重要なプレゼンを任された。
重要といっても、社内向けのプレゼンだし、僕がプレゼンに失敗したところで会社になんの影響も与えない些細なプレゼンだ。
重要というのは、僕にとって重要であるという意味だ。
僕はプレゼンにこだわりがある。
自分のためのプレゼンではなく、参加者のためのプレゼンにする。
それが僕のこだわりだ。
プレゼン慣れしている人にとっては当たり前かもしれないが、
新卒2年目の僕にとっては当たり前ではないのだ。
発表することに精一杯で、なんとプレゼンが終わればいいやと考えてしまう。
それではいかんと思い、「参加者のためにプレゼンをする」ということを僕のこだわりとした。
堅苦しくならないように、小粋なジョークを挟んだり、話のペースや声の大きさなど、意識できることは全て意識して望んだ。
僕個人の感想としては、100点満点とはいかないまでも、80点くらいの手応えはあった。
笑わせようとしたところで笑いも取れたし、伝えたい内容も伝えられた。
「まあまあ良かったかな」と思いながら、自宅でビールを仰いだ。

ピロリン♪

スマホからLINEの通知音がなった。
会社の先輩からだった。
「お疲れさま! みんなの反応はイマイチだったけど、私はすごく良かったと思うよ(⌒▽⌒)」

自分の発表を認めてくれる人がいるのはありがたい。
嬉しい限りだ。
……いや、待て。
「みんなの反応はイマイチだったけど」
だと?
えっ、まじっすか。
こちとら、めちゃくそ手応えがあったんですが!
イマイチだったんですか?!
もしかしてこのLINE、褒めてるんじゃなくて、慰めているのでは?!
先輩の優しさに感謝しつつ、自分のプレゼンがイケていないことに気付かされた。
全然傷ついてなんかいなかったのに、先輩が慰めてくれたおかげで傷つきました。
ああ、慰めさられることで傷つくこともあるんだなあ。
自分じゃ全然気にしていなかったことを改めて人に指摘されると、それが重大なことのように思えることがあるんだなあ。
自分も言葉には気をつけよう。
知らぬ間に誰かを傷つけてしまっているかもしれない。

#エッセイ #コラム






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