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変化するSNS、創作における宣伝の考察

はじめに


 SNSって便利な反面、人付き合いが面倒だったり、炎上が怖かったりと、リスクが高いと思いませんか? 人によって違うと思いますが、私はSNSをやるくらいなら、早く次の小説を書きたいと思ってます。私は先月からSNS(現X、旧Twitter)をほぼ見なくなり、投稿も数日に1回しかしなくなって、正直肩の荷が下りました。「そんなにSNSが面倒なら、そもそもやらなきゃ良いじゃないか」という正論が聞こえてきそうですが、内向的な私がSNSを始めたのには、れっきとした理由があります。

 私がSNSを始めた理由は「自分の小説の宣伝」の為です。

 つまり小説の宣伝の為にアカウントを立ち上げた訳ですが、しかしSNSが及ぼす影響はそれだけに留まらず、だんだん負担がキツくなってきました。宣伝と言っても私は自己アピールが苦手な人間で、営業経験もありません。そんな内向的な性格だからこそ、小説で自分を表現している訳で、出来ればずっと小説を書いていたいというのが本音です。そこで私は自分のリソースを、あまりSNSに割かないで、そのぶん小説を書くことにしました。
 この記事では、そこに行き着くまでの経緯と、SNSをあまりやらなくなってから感じた気楽さ。そして今後の創作活動における宣伝のやり方について、簡単に述べていきたいと思います。


宣伝の為に始めたはずが……

旧Twitter(現X)アカウントを作ったものの……

 2016年に最初の電子書籍を出版するに当たって、自分の作品に一定の手応えを感じていた私は、その魅力を広く世に広めたいと考えて、当時隆盛を極めていたTwitterアカウント(現X)を作製。小説の宣伝を始めました。この宣伝が功を奏したのかは分かりませんが、小説は予想以上に売れ、このまま印税だけで生活できるんじゃないか? と思ったのも束の間。それは継続的な収入の安定を保証するものではありませんでした。またSNSを通して多くの親切な方と知り合えた反面、見知らぬ人からいきなり罵声を浴びせ掛けられることもあり、心をすり減らすこともありました。

 このように、良くも悪くも私の生活に様々な影響を及ぼしたSNSですが、徐々に負担が重くなってきます。

 私はもともと人付き合いが苦手で、現実の世界においても、人と会うのが億劫な性格です。そんな私がSNSになんて向いているはずもなく、自分の小説の宣伝の為だけに、ある意味「我慢しながら」情報を発信していました。ところがSNSを始めて半年程度が経過してくると、当初私が考えていたような使い方だけに留まらない状況に陥ってきます。私の宣伝ポストにいいねを付けて下さった方や、リポストで拡散して下さった方へのお返しに、いいねやリポストを付けて廻る。これが意外と面倒な上に、この作業にかなりの時間が掛かるようになって来ました。フォロワー数が1000人を超えてきた辺りから、だんだんSNSに費やす時間が増えてきて、正直かなり煩わしさを感じるようになってきたのです。

人との繋がりは良い側面も


 また、宣伝目的で始めたSNSは、やがて本来の機能であるコミュニケーションツールとしての色合いも強くなってきました。もちろん、SNSをコミュニケーションツールとして利用すること自体は、決して悪いことではありません。読者の感想がダイレクトに届いてモチベーションが上がったり、逆に批判的な意見を頂いて落ち込んだこともありました。想像もしていなかった良い効果としては、SNSにイラストをアップされている絵師さんの絵を気に入って、次の小説の表紙を有料で依頼して描いて貰ったり、ゲーム会社の社長さんから声を掛けて頂いて、コラボ企画に参加。作品の魅力を更に広めることが出来ました。

 SNS繋がりでTRPGのオンラインセッションに誘われて、参加させて貰ったこともありました。現役プレイヤーの機転の良さと、選択の幅の広さを目の当たりにして、とても勉強になりました。また、電子書籍を出版されている方々のオフ会に参加させて頂いた時には、他のライトノベル作家さんのお話を聞かせて貰う機会に恵まれ、似た経験をした方だからこそ分かる諸問題について相談に乗って頂いたり、新しい人脈をつくることが出来ました。他にもSNSで繋がって仲良くして頂いている方が沢山いらっしゃいます。自分と気の合う人とコミュニケーションをとって、距離的には離れていても繋がることが出来るのは、SNSの正しい使い方だと思います。

SNSに縛られると煩わしい側面も


 一方で、SNSは良いことばかりではありません。中には明確な悪意を持って攻撃してくる人も居て、心を削られることもありました。いわゆるファンタジー警察的な人も多く、小説の続きを書くのが怖くなった事もあります。最も厄介だったのはファンのふり、または助言をする良い人のふりをして、急に手のひらを返すような人。彼等は識別不能です。好感度MAX状態から、急に落として来るのでかなり厄介。というか人間不信に陥ってしまいます。

 SNSを始めたばかりの頃は、批判的な意見も真摯に受け入れようと思っていました。しかし世の中には色々な人が居るもので、中には物語を楽しむ為でなく、粗探しを目的に小説を読む人も居ることを知りました。悪意に誠意で対応しても意味がありません。以来私は、好意的な感想と批判的な意見、いずれにも反応しないことに決めました。もちろん応援のメッセージはとても嬉しいです。全てに目を通して、執筆のモチベーションに繋げています。しかしSNSは、作者と読者の距離が近すぎる。執筆に専念する為にも、私は創作活動におけるSNSの比重を、大きく落とすことに決めました。

小説の執筆は読者あってこそ


 SNSでの反応をやめてからというもの、かなり楽になりました。いいね やリポストのお返しに廻る必要もなくなって、時間的な余裕ができたお陰で、執筆の方もかなり捗っています。私は物語を書くことでしか、自分を表現することが出来ません。伝えたいことは全て、物語の中で表現していきます。読者にうまく伝わらないこともありますが、それはよくある当たり前のことで、私の力量不足のせいでもあります。SNSで心をすり減らすくらいなら、もっと自分の技術や表現力を磨いた方がより建設的でしょう。

 ただ、感謝の気持ちは忘れません。私は自分の小説を読んで下さった全ての読者に、心から感謝しています。物語は書いただけでは完結できません。誰かが最後まで読み終えることで、はじめて完結を迎えます。私がこうして物語を書くことが出来るのも、読者の皆さまが居るからこそなのです。私は今の環境に感謝して、作品づくりに協力して下さっている全ての人に感謝して、読者の皆さまに心から感謝しています。本当にありがとうございます!

なぜ日常系・思想系ポストもやめたのか?


 SNSの比重を落としてからというもの、私は今まで発信してきた日常系・思想系ポストもやめました。外で見つけた綺麗な花や、美味しい食事などの写真も、あれから投稿していません。SNSではそういった華やかな投稿で、閲覧数を増やすのは普通のこと。自分の考え方を発信する思想系ポストも同様に、自分と同じ考え方の人に届けることで、フォロワー数を増やすことが出来ます。しかし私には以前から、ある懸念がありました。

 私は普遍的な美しい物語を書きたいと常に考えています。
 では、普遍的な物語とは何でしょうか?

 それは国や文化、宗教や人種が違っても、そして時代が移り変わっても、楽しむことの出来る物語だと私は考えています。数十年後に読み返した時、古臭さを感じさせない物語。子供から大人まで楽しめる物語。世界中の人が共感できる物語。そんな物語を私は目指しています。

 だとすれば尚の事、日常系・思想系ポストの投稿は、躊躇ためらわれてしまう。私は世界中の人に、自分の小説を読んで欲しいと本気で考えています。即ち私とは異なる考え方、価値観、宗教観、政治的思想を持った多様な人に読んで貰う為には、余計な発言をしない方がいいという結論に至りました。なぜなら世の中には、考え方の合わない人の言葉に耳を傾けようとしない人が、一定数居るからです。

人気漫画『遊戯王』の選挙啓発ポスターが炎上したのは記憶に新しい。

 たとえば日本では、政治的主張をする人は忌避きひされる傾向にありますが、政治的思想が違うというだけで、作品まで色眼鏡いろめがねで見られたくありません。加えて言うなら、私は自分の考えを物語の登場人物に語らせたことはありません。たとえ私と似た考えを持った登場人物が何かしゃべったとしても、それはその登場人物の考えであって、私の考えではありません。また、私とは全く異なる考えを持った登場人物が語ることも大いにあります。私は社会問題をテーマに取り上げることが多いですが、「これが答えだ」「これが正しい」などという主張は入れずに、読者と共に考える姿勢で物語を書いています。

 私は自分と考え方の合わない人にも、ぜひ小説を読んで欲しい。だから、余計な発言はしないことにしました。私はもともと、自分の生活をひけらかすような趣味はありません。華やかな生活を送っている訳でもありません。そんな事よりも、とにかく執筆に集中したい。正直言うと私は、note記事を書くくらいなら、次の新しい小説を書きたいと考えている人間なのです。

 SNSは利用するものであって、振り回されてしまっては、本末転倒です。こうして私は原点に立ち還り、「自分の小説の宣伝」を目的に、SNSを利用することにしました。

 しかし近年 Twitter は X に変わって様々な仕様が変更され、Amazon や YouTube のリンクが貼り付けられた投稿は、閲覧数が上がり難くなってしまいました。Amazon の Kindle で電子書籍を配信している私にとって、これは重大な問題です。時代の移り変わりと共に X は、宣伝用の媒体としての役目を終えつつあるのかもしれません。ここは様子を見ながら、宣伝という目的に沿った別の媒体に移ったり、SNS自体をやめるかもしれません。どうか引き続き、暖かい目でご覧頂ければ幸いです。

宣伝(リンク)

カドルステイト物語(全7巻 + 外伝)

 山奥の村から大都会に出稼ぎに来た若者デインとカータは、戦火に巻き込まれる街を専門に盗みに入るという、義賊を名乗る盗賊団に入団。やがて様々な思惑が交錯する中で、連合と帝国の戦争が勃発した。その戦いを通して意外な事実を知ったデインの元に、それぞれの事情を抱えた仲間達が集まってきた。


カルディアナ戦記(全3巻)

 異文化の交流地点にして、交易の要所でもあるルブーラム皇国の皇都パトリシア。独特の支配体制のもと、千年に渡る長い歴史の中で一度も陥落したことのない難攻不落の皇都が今、大きく揺れていた。運命に翻弄されながらも、戦乱の時代を生き抜こうとする人々を描く、剣と魔法のヒロイック・ファンタジー。


テロメニア魔導記(既刊2巻)

 カータはカルディアナと共に北へ飛び立った。目指すは魔法王国テロメニア。しかしそこは闇に閉ざされ、老人ばかりが住む荒廃した土地だった。やがてカータは、かつて栄華を極めた魔法王国が衰退した意外な原因を知ることになる。古典的な作風を現代的な価値観で描く、新時代の長編ファンタジー小説。




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