その語り部は
ああ、今日の分の更新を忘れたまま、酒を飲んでしまった。普段からおかしなことを考えている私も、アルコールに侵食されると思考が正常に戻ってしまう。何とか気を触れさせなければ。
と、数分前まで思っていたが、たまには普通の更新もいいだろう。週末くらい変人の読者たちも、真人間に戻っているはずだ。今日の話は、なんだか安易に踏み入るのが恐ろしく、ずっとほったらかしにしていたものを扱おう。そのほうが、むしろ下手に考えずにすむ。
諸君らは、夢をよく見るだろうか?将来なりたいものとか、大きな野望などではなく、眠っている間に見る夢のことだ。夢は、不明瞭で不確定で、そのために神秘的だ。夢の研究というものは世界中で行われているそうだが、その大部分がいまだに謎らしい。
そんな夢の不思議について、いくつか聞いたことのある話をしよう。
夢はいかなる人物も見るというのが定説だそうだ。先天的に盲目やろう者を始め、発達障害だったり知的難を抱えているものであっても、イメージ像が夢として寝ている間に浮かぶらしい。夢は誰にも平等なのだ。言い換えると、人類は夢から逃れることはできない。
そして、見ている夢の内容は、当然人それぞれである。カラーの夢、白黒の夢、音のない夢、すぐ忘れてしまう夢、いつまでも鮮明に残る夢。様々な夢がこの世には存在する。
そんな不確定要素の多い夢にも、見る夢の内容はいくつかの条件が満たされているらしい。例えば、現実世界で見たことのないものは、登場し得ないということ。もし夢の中で、見たことも行ったこともない人や場所に出くわしたら、もしかするとそれは夢じゃないかもしれない。こちらの世界が夢の中か、2つの現実を生きているか、だ。
また、夢を見ている間は、体は麻痺をしている状態らしい。夢でのリアクションを体が直接受け入れて、現実世界に影響を及ぼさないための防衛本能の一種だそうだ。その機能が働かなければ、夢遊病という弊害になる。また、麻酔を使わず手術をする、とある民族の催眠医学はこれを応用したものだという。
さらに、夢というのは、寝ている間に、起きているときの出来事を超高速で整理整頓している際に発生するものらしい。そのため、その内容は、友好関係のない友人が同席していたり、何年も前に住んでいたはるか遠い場所が舞台だったり、あるいはゆっくりとしか走れないなど体を思うように動かせなかったり、とにかく荒唐無稽な内容のものばかりだ。
ただ、ごく稀に、すべてのつじつまが合い、限りなく現実に近い夢を見ることがある。これが、夢の条件の最後の一つと関係する。夢というのは、外界からの刺激を大いに受けるのだ。つまりその、現実に限りなく近い夢を見ているときは、誰かがあなたの枕もとで夢の物語を吹き込んでいるというわけだ。
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