フグタ社長業務日誌【あと2話】『次期社長公募』
フグタ社長業務日誌(巻10-7):9月9日(火)
わが社の内規によって、次期社長は社員公募で決めることになっている。
もっとも落とし所は、アソ専務の昇格で話が通っている。しかし、あまりスムーズに事が運びすぎると、「禅譲」だの「密約」だの、訳の分からんことを言い出す輩がいる。そこで、形式上、社員投票の結果決まったというカタチを取りたいわけだ。
問題は次期社長候補者だ。誰もやりたがらないのもまずいので社内調整した。
まずはアソ専務。口は曲げてもいいが、万一、ヘソを曲げられるとまずいので、誠心誠意、平身低頭でお願いする。
あとはバランスで出てもらう。ただし、これも万一、アソ専務より人気があると困る。それなりに気を遣う。
年寄り組からはヨサコイさん。理屈が多いのを勘違いして、理論派と思われている節もあるが、実態は単なる窓際派である。
若手からは、東京支社長の息子さんで、マーケティング本部にいたイシヤラ君。彼はOLたちに人気はあるが実力はないので安心だ。
同じく若手でオタク系のイシヤブ君。会社の応接室に大事に飾ってあった、軍艦のプラモデルを壊して謹慎中だったが、彼は妙なところで人気がある。まあ、賑やかしに入れておく。
女性管理職にも登用のチャンスがある、というアピールが必要だ。
環境美化主任だったコイケ君に出てもらう。ノダさんとかオブチさんのお嬢さんは、とかの意見も出たが却下。若かったり美人だったりすると、瓢箪から駒になりかねない。
第二事業部のヤマモトが、「私も出る」と手を上げたが、同僚たちに「百年早い」とボコボコにされて泣いていた。どこでも勘違いする人はいる。
ということで、10日から社内公募キャンペーンが始まる。社員の皆さんは、せいぜい、わくわくしていただきたい。
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