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#3 新たな訪問者

姪の父親の正体が気になるものの
中々聞けるタイミングがなく姪との同居生活が
約1か月を過ぎたある日。


この日も彼氏(現旦那)と同じオフだったのを覚えている。
昼ごはんを外へ食べに行こうと準備をしていた時、
飼い犬がキャンキャンというよりギャンギャン吠えていた。

”だれか訪問客が来たのかなー?”

何て考えながら化粧をしていると、
リビングにいた旦那が凄い勢いで
部屋に戻ってきて
”車の中で待ってる”
と言い放って部屋を後にしたではないか。



絶対に何かあった。



リビングへ向かう前は穏やかだった旦那の顔が
ただ事ではない形相へと変わっていたので
訪問客と何かあったに違いない。



”姪の父親か?”



心配になった私は
下まつげにマスカラを塗ることをすっ飛ばして
支度を急いだ。

水を飲んでいたコップを洗う為にリビングへ向かうと
そこには見知らぬおじさんがソファーに深く腰掛け
横柄に座っているのが目に映った。

条件反射的にとりあえず挨拶すると、
向こうも挨拶を返してくれた。

ここから何の話しをすれば良いかお互い分からず、
気まずい間を義母が遮った。

”彼は私の元旦那。あなたの彼氏の(現旦那)のお父さんよ”


、、、なるほど。
私は全てを悟って限りなくダッシュに近い早足で
旦那が待っている車に乗り込んだ。


というのも、
付き合い始めたての頃に、
共通の友人が浮気した話になった時、
”浮気”という言葉に
過剰反応をした旦那。

いつも友人や他人等のどんな話しも
否定せず聞き入れる姿からは想像出来ない反応で、
過去の恋愛でトラウマがあるのかな?
と思っていた。

そこから何故だかは覚えてないけど、
お互いの家族の話になり、

実の父親が浮気をして
お母さんを裏切り、離婚したことを話してくれた。

その後、
お母さんはシングルマザーとして
女手1つで旦那や義理姉たちを立派に育て上げてくれたけど、
それと同時に思春期の多感な時期に何度もお母さんが泣いている姿、傷心しきった姿
が今でも鮮明に覚えていて忘れられない

と。

唯一許せない人間は自分の父親

ということも聞いていた。



だから車に乗り込んだ時、
どんな言葉をかけていいか分からず
考えて考えて絞り出した言葉が


”大丈夫?”


という言葉しか出てこなかった。


旦那は、

”大丈夫だよ。ただ父親からは母と離婚した時に
自分のことは死んだ人間と思ってくれて良いと言われたから
自分の中では既に存在しない人。顔も見たくないし、ただただ自分の生活圏内に入ってきて欲しくないだけ。
だから父親の話は何もしたくない。どこのレストラン行くー?”


とまた食事の話しで切り替わってしまった。

というか、
離婚もして実の息子に自分は死んだと思ってくれなんて
心ない言葉を放っておいてなぜ?今家にいる?
お義母さんもなぜ?追い出さず普通に接しているんだ?

考えたらキリがない程のたくさんの疑問が私の脳内を
駆けずり回っていたけど
この件はいくら彼氏とはいえ、
とても土足で入り込める様な話しじゃない。

彼が話したくなった時にだけ聞こう。



頭で何も考えない様にスマホで必死にレストランを検索した私であった。


嫁子

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