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許されたジャニス

私の家には高校時代、友人に借りたままになっているレコードがある。

アメリカの女性歌手「ジャニス・ジョプリン」のレコードだ。

高校の頃、古着が好きだった私は、ジャケット写真のジャニスがヒッピーな服装だったことがとても可愛くて気に入り聴いてみたくなって、友人に借りた。

返すタイミングを見失い、友人は他県に嫁いでしまった。

それから20年以上経ってしまった。私はジャニスを住まいが変わる度一緒に連れて行き、ジャニスを連れて嫁に行った。離婚してからは、本棚の一番右端に並べられ、毎日目が合ってしまう。

目が合う時いつも友人を思い出して、いつか返したいと思っていた。

今朝、息子が就職して遠方に旅立ち、一人で部屋にいたらまたジャニスと目が合った。今度こそ友人に返そうと思い、20年ぶりに電話した。

電話番号は変わっていなかった。でも、友人も色々あったようで家族とは離れて遠くに暮らしていた。私も近況を話した。

ジャニスのレコードの事を話して、謝った。確か友人の父親が若い頃聴いてたレコードだったらしい、そのことも話し、そして返したい、と言った。すると友人はもう要らないよ、プレゼントするよと言われた。

私は申し訳ない、返したい、と断った。

だけどもう一度

「あげる」

と言われ、私もありがとう、では大切にするね、と言った。

最近、別な友人は亡くなり、いつまでも話せるわけじゃないんだと切に感じた。だから、急に返したくなったのか?罪悪感に駆られたのか?

分からない。

けど人生は短い。短い人生だけど、これからは残りの人生、堂々とジャニスを連れてどこへでも自由に行ける。

だって、毎朝目が合って、心苦しかったジャニスはもう許されたのだから。

正式にうちのレコードになったから。

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