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哀れ哀れ、本当に哀れなのは、、、、『忌怪島』


(C)2023「忌怪島 きかいじま」製作委員会

VR研究チーム“シンセカイ”の片岡友彦は、非科学的なことは信じない脳科学者だった。片岡は父の死をきっかけに、ある島を訪れるが、不可解な連続死が発生。片岡は、園田環とともに、解き放たれた女の怨念で赤く染まった島の真相を解き明かそうとするが……

情報提供:ぴあ

ネタバレ感想

 『犬鳴村』、『樹海村』、『牛首村』と村シリーズを展開し、ついに新章である島シリーズの始動ということで忌怪島をみてきた。案の定なクオリティにもはや批評することさえ億劫になっているのが正直なところではあるが感想を述べていこうと思う。
 まず、キャラクターの設定が浅すぎる。人間嫌いで他人とのコミュニケーションを必要以上にとらない若き天才脳科学者、コテコテなエセ関西弁のプログラマー、自我強めなオラオラ系エンジニア、こんなステレオタイプな設定はアニメならまだしも実写でやられたら臭すぎる上にリアリティに欠ける。
 次にプロットが村シリーズから変わっていない。すでに村シリーズを視聴済みの方ならわかると思うが、結局のところ過去の因縁が呪いとして降りかかるという流れな訳だが、今回も例によってその流れで物語が進行する。さらに、事件は解決していないことを仄めかして終わるというオチまで同じな点には本当にがっかりした。
 最も重要なのが、ホラー映画を謳っておきながら怖くないというのは許されない。ジャンプスケアもグロもない、本当に『呪怨』を撮った監督の作品とは思えない程に恐怖を感じなかった。浅い設定で臭い演技をする役者と変わり映えのしない先の読める展開、見どころのない演出で開始30分で飽きていた。
 プロジェクターを用いた演出や一瞬だけ映る指を指すシーンは高橋洋へのオマージュを感じニヤリとした。

コンセプトに新しさを感じない

 忌怪島のメインコンセプトである仮想現実をあの世として描くというアプローチが既に使い古されたネタであるということである。黒澤清監督作『回路』では死者の魂がインターネットを媒介して現実世界に影響を及ぼすというものであった、またデイヴィッド・クローネンバーグ監督作『VIDEODROME』では過激な映像を見ることによって現実と幻覚の区別が曖昧になっていくというものである。
 もちろんこれらの作品は名作中の名作であり今回の忌怪島にも大きな影響を与えているとは考えられるが、比較するとどうしても見劣りしてしまう。さらに言うとまだその段階ですかと言いたくなるほど。
 昨年上映していた『貞子DX』の方がオリジナルの設定を踏襲し新たな解釈を提示したと言う点で軍配は上がる。

作品のローカル性

 村シリーズでは福岡県、静岡県or山梨県、富山県を舞台に実際に存在する心霊スポットや怪談をモチーフとしたものだった。では、今回の忌怪島はと言うと鹿児島県が舞台となっており、鹿児島県にはかつて「おっとい嫁じょ」と言う風習があった。
 「おっとい嫁じょ」とは地元方言で「嫁盗み」「誘拐婚」を意味し、その内容は女性を誘拐し無理やり結婚すると言うもので、中には強姦などを行うことで既成事実を作り婚姻関係を結ぶことを強制したこともあったという。
 忌怪島の作中で語られる「イマジョ」これは島に代々語られる伝承であり、強姦され見せしめに殺された女の祟りとされている。「おっとい嫁じょ」と「イマジョ」なんだか似ているような気はしないだろうか、実在の土地を舞台にすることでローカルな風習を作品に落とし込むことができるのは一連のシリーズの強みと言えるだろう。

まとめ

 ホラー映画としては全くもって面白くはない。しかし、劇場の客層から見ても中高生が多いことから、ジャニーズキャスト目当てか単なるポップコーンムービーとして作られていると捉える方が自然ではないか。
 にしても、あの清水崇がこうも駄作を連発していることは容認できない。公開を控えた『ミンナのウタ』も期待は全くできない、依然厳しい目で見ていこうと思う。

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