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「傾聴」3つのポイント

前回、私が運営しているNPO法人で「伴走型支援者養成講座」というものを行っていて、「伴走型支援」についてざっくりしたことをお書きしました。前回と言いながら、書いたのは6月12日なので、10日ほど経っていますが、今日が2回目になります。前回を読んでいないという方はこちらから。

「傾聴」3つのポイント

今日から3回(たぶん)にわたって、対人支援の基本であり、最重要なことであるともいえる「傾聴」についてお話ししたいと思います。

でまあ、冒頭の画像にもある通り、最初のポイントは「黙って聴く」ことです。そんなの当り前だと思われる方も多いと思いますが、実は対人支援を行う人が、意外とできていない部分だったりします。

「黙って聴く」のは意外と難しい?

誰かの話を、じっと黙って聴いたことがありますか?

「傾聴」を意識しないと、意外と、したことが無いという方もおられるのではないでしょうか。

実は私たちは日常のコミュニケーションでは、それぞれの価値観に基づく発言をそれぞれが行っていて、それによって会話のキャッチボールがなされています。日常会話では、相手がAという話をしたことに対して、こちらがA'という、新たな情報が付与された「新しい話」をしています。これはこれで、日常会話としてはきわめて自然なことです。

「みそラーメンが好きだ」という話を聴いて「私は〇〇のみそラーメンが好きだ」とこたえる。

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時には、Aという話を聴いて、Bという全く違う話をすることもあります。それが日常会話だといってもいいかもしれません。

「みそラーメンが好きだ」という話を聴いて「私はとんこつラーメンが好きだ」とこたえたり、あるいは「最近私はラザニアが好きだ」という話を返す人もいるかもしれません。

そういった、ある意味雑多な情報のやり取りをするのが、日常のコミュニケーションだと言ってしまってもいいかもしれませんし、その価値観のずれがあるからこそ、人との会話は楽しいものだともいえるかもしれません。

しかし、傾聴を行う場、目的は、会話を楽しむことではありません。

傾聴を行う場面は、主に相談者さんのお話を聴き、その方の価値観や考え方を知り、私たち支援者にどのようなことをしてほしいと思っているのか、あるいは、私たち支援者に何ができるのかを考え、また、相談者さんに私たち支援者を信頼してもらう(信頼関係を築く)ことを目的として行われます。決して、私たち支援者の考えや、価値観、ビジョンなどをお伝えする場面ではありません。特に初回面談においては、こちらが話したいことはぐっと抑えて、「この人は、私の話をしっかり聴いて、受け止めてくださっている」ということを、態度でも示す必要があります。

つまり、傾聴を行う場面は日常のコミュニケーションを行う場とは全く違うということを意識する必要があります。

多くの人は、日常のコミュニケーションを行っている時間に比べ、傾聴を行う時間はぐっと少ないと思います。人は意識して行ったことでなければ、できるわけがありません。たまのまぐれ当たりはあるかもしれませんが、仕事として支援を行うためには、まぐれあたりではできません。どのような方が相手でも、安定して支援を行うために、まずは、日常のコミュニケーションとは異なる、傾聴の訓練を行う必要があります。そのためにも、まずは、「黙って聴く」練習を行ってください。

具体的な練習法

たとえば、家族や友人など、これまで日常のコミュニケーションを行ってきた相手に対してこれを行うのは、おすすめしません。「急に黙って聴くようになって、頭でも打ったのかしら」とか、最悪の場合は浮気などを疑われてしまうかもしれません。

相談者さんといきなり練習を行うのもおすすめできません。素振りもしないで試合に出るのは、安全が保障できませんから。

まずは、TVのニュース番組などでコメンテーターが言うことを、たとえ、自分の考えや価値観と違ったとしても、何も言わずに聴くというのがいいかもしれません。やろうと思えば今日からでも、1分くらいでもできます。「自分の考えや価値観と異なる部分があったとしても」というのが大切なポイントです。

人は、自分と異なる意見を聴くと何かを言いたくなるものです。

それでも、これは傾聴を行えるようになるための訓練ですから、じっと黙って聴く。そして、できれば、自分はどのようなことを言いたくなってしまったかを認識できるようになっていただければ、なおのこと良いです。相手の価値観を見つめる前に、私たちは自分の価値観や考え方の癖をも見つめることができるようになる必要があります。そのためにも、ニュースや意見を見て、様々なことを感じ、考えつつも、何も言わずにじっと聴く訓練を行っていただきたいと思います。

次回は「あいづちを打つ、うなずく」についてお伝えしようと思います。
長文をお読みいただき、本当にありがとうございます。

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カウンセラーもつらくなることがあるので、そういう時にどうするのか、という話です。


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