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【産学連携】「デザインx思考」の実践型授業

こんにちは。NTTデータのデザイナー集団「Tangity」で、サービスデザインをやっているWongyoです。
今回は、外部向けの発信活動の一環としてチャレンジしていた「デザインx思考」の実践型授業の活動報告をします。
2023年4月〜11月まで、とあるデザイン専門学校の学生さんとともに、年商100億円規模の農業資材を扱う中小企業(A社)の課題解決を目的に取り組んできました。
この活動を通じて、参加した学生、企業、そして学校側からは新しい発見や学びに対する高い評価をいただきました。特に、企業側からは、経営やビジネス戦略を考慮しつつ、ユーザ理解に基づく成果物の開発プロセスに対して、納得感と評価の声を頂戴しました。


■背景

この取り組みを始めたのは、Tangityに加わったばかりの頃でした。出発点は、以前の職場からの繋がりを通じて、広告プロモーション学科の学生に向けたデザイン思考をテーマにした講座を任されたことでした。
この専門学校では、学校変革の一環として、「4年目のキャリアデザイン学科」という社会人向けの新コースが学長により準備されていました。この新コース設立の第一歩として、デザインを活用した問題解決能力を養う実践的な産学連携講座が設けられました。私は以前から単発セミナーの講師経験はありましたが、定期コースを担当するのはこれが初めてでした。
長い間、ビジュアルデザイン教育(例えば広告プロモーション)に、ユーザ理解やデザインの戦略的思考といったサービスデザインの要素を取り入れることで、大きな価値が生み出されると考えていました。この産学連携が新しい価値創造のきっかけとなり、その知見を活用してTangityでの活動をより価値のあるものにしていけたならなと思っていました。

■取り組むテーマ

産学連携授業では、社会的に意義のある大きな課題に取り組むことが特徴です。この授業では、社会的課題の中から企業が直面している具体的な問題を特定し、アイディア出しやプロトタイピングを含む解決策の模索に重点を置きました。連携した企業は、長年にわたり農業資材を扱っており、「日本の農業発展に貢献する」という大きな目標を掲げています。企業からは、「女性が農業に従事しやすい環境づくり」「伝統的な企業文化の改革・ブランディング」に関心があるとの話があり、「新しい風を吹き込みたい」との意向も示されました。
この授業では、女性農業従事者の減少が日本の農業発展にとって将来的に大きな機会損失になり得るとの見方に基づき、「女性が農業に従事しやすい環境づくり」をテーマに取り組みました。

■やってきたこと

この授業は合計16回のコース(1〜2クール)で構成され、任意参加であったため、参加学生は1グループのみで、土曜日の午前中に開始しました。Tangityのデザイン思考プロセスを参照しつつ、参加する学生は主に3年生で、これまで形にすることを中心としたデザインスキルを学んできました。そのため、デザイン思考の基本である5つのプロセスを軸に、簡易的な体験型の授業形式を採用しました(筆者が2022年にまとめた「Design Thinking」のテキストを使用)。

期待としては、学生たちにとってこの学びが初めての経験であるため、ユーザ理解のプロセスを少しでも体験してもらい、まずはサービスデザインについて知ることが大切だと考えました。将来社会人として働く際に、企業の課題解決に直面したときに、この体験を少しでも思い出して役立ててもらえることを願って取り組みました。

|1クール(4月〜7月)|

学生たちは全10回の授業を通じて、「Step1: 共感」「Step2: 問題定義(課題設定)」「Step3: アイディア出し」「Step4: プロトタイプ作成(ユーザーストーリーボード作成)」「Step5: ユーザ検証」という5つのプロセスを学び、実践しました。

学びのプロセス(学生さんが作成したスライドから抜粋①)

プロジェクトの大枠をなす流れとして、企業や店舗を訪れるフィールドワークから始まり、インタビューやカスタマージャーニーを通じてユーザ理解を深め、最終的にはユーザーストーリーボードをプロトタイプとして作成し、その成果を発表会で披露しました。

企業の本社訪問と店舗内のフィールドワーク
対象者に対するインタビューの記録(学生さんが作成したスライドから抜粋②)
授業中にMiroで検討していたデザインプロセス等

ユーザ理解に基づき、課題である「女性が農業に従事しやすい環境づくり」に対して、学生たちは女性農業者同士のコミュニケーションに焦点を当てました。彼らは、これらの繋がりがより従事しやすい環境を生み出す可能性があるという仮説を立て、そのアイディアをストーリーボードにまとめました。

|2クール(9月〜11月)|

後半戦では、全6回で1クール目の発表後に企業からフィードバックを受け取り、それを基にアイディアの見直しやアウトプットの最終調整を行いました。連携企業からは主に2つの指摘がありました。まず、アイディアの視点は良いが、駐車場などの物理的空間の活用には危険性が伴うため、別の方法を考えるよう求められました。次に、女性の来店率が減少している現状を考慮し、既存顧客の来店率を向上させる方向での検討も求められました。

企業からのフィードバック会
最終発表のスライドから抜粋

最終段階では、ペルソナとカスタマージャーニーを見直し、アイディアを洗練させ、プロトタイプを作成しました。アウトプットの中核となるコンセプトは、店内全体を資材の展示会場として利用し、資材の使い方や簡単な技術を紹介するスペースを設けることにより、女性の来店率を向上させることでした。具体的には、「見本市」「ランキングブース」「POP」「LINEスタンプ」の4つを提案しました。最終的な発表会で、企業からはこのアイデアを実際に店舗内で実施したいという反応を得て、現在検討中です。

2クール最終回の様子

■記憶に残ること

今回の取り組みで最も印象に残っているのは、企業、学校、学生たちと一緒に、デザインを中心として課題解決を目指す一体感あふれるチームワークを築けたことです。最初は企業の課題を一方的に聞き、理解しようとする構造でしたが、フィールドワークやインタビューを通じて徐々に具体的な課題感に関する学生たちの仮説、ペルソナ、カスタマージャーニーを可視化し、共有しながら意見交換とアイデアの洗練を重ねることで、場の一体感が生まれ、共通の目的意識をもって課題解決に向かう方向性が見えてきました。学生たちからは、これまでの産学連携授業とは異なる達成感と、5つのプロセスを経たアウトプットに対する納得感を得られたとの声がありました。
ある学生は「もっと早く学びたかった」と感想を述べており、個人的には、制作のためではなくユーザーのためのデザインという概念への理解が深まったと感じました。

■デザインに興味持つ方々に一言

デザインの深い意義について全てを理解しているわけではないものの、現時点で私が感じているのは、デザインが問題解決の手段の一つであることです。良いデザインを目指すことは、効果的な問題解決を実現し、それが社会に価値をもたらすと信じています。特にサービスデザインは、「価値(Value)」を見出すための有効なアプローチだと考えていますので、日常業務においてもサービスデザインの思考法を取り入れてみることを推奨します。そうすることで、これまでとは異なる視点が開かれるはずです。

デザイナーさん大募集

現在Tangityではデザイナー職を積極的に採用しています!サービスデザイン、UXデザインのクライアント業務の経験がある方、ぜひ私たちと一緒に働きませんか?募集要項など詳細はこちら。お待ちしております。

https://nttdata.jposting.net/u/job.phtml?job_code=462

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