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田舎のマルシェに心躍る大男が一人

マルシェ。地元でマルシェが開催される。

なぜこうも「爆食セヨ」という啓示は続くのだろうか。つい一昨日神戸の旅を終えたところなのに。「まただよ」とわざとらしく苦虫を噛み潰したような顔をしてみるが、オートで心も腹も踊りはじめる。

また、開催されるのだと思う。近郊の方はぜひいらしてほしい↓

我が街で時折開催されるマルシェやフェスは、出店される店がイケてるだけでなく、なんとも緩い地元アーティストの演奏ステージが楽しみだ。11時から1発目のステージがあるのを知り、10時半ごろに家を出る。玄関を開け、一歩踏み出すと春めいているというか、もう春だった。ニット帽を下駄箱の上に置き、キャップに被り直す。

子どもの合唱。癒される

賑わっている。でもそれは、都会の肉フェスやラーメンフェスのように長蛇の列が出ていて辟易するようなものではない。でも、ちゃんと店にはツチノコチックな短蛇の列ができている。ちょうどいい賑わい。田舎だから若者だけでなく、じぃさんばぁさんもガンガンいる。やはり視界にじぃさんばぁさんが入るとほっとする。これくらいが居心地がよく、余所者感なく、自然に過ごせる。

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とりあえず先日、無理言って工房を見せていただいたablabo.さんのブースへ。顔を覚えていてくれたのか、体のシルエットを覚えてくれていたのかはわからないが、すぐに気づいてくれてうれしい。少し話をして、また後で来ますと一旦失礼した。何やらまたうまそうな新製品があるようだった。

本当にいろんな店があるし、売られているものもひとクセあったりで、ビンビン刺さる。ケーキ、焼き菓子、スパイスカレー、パッタイ、ガレット。その場で食べるものも、買って帰りたいものもたくさんある。財布に5000円入れてきたが、気持ち良くなくなることを察知した。

とはいえ、絞らなければならない。慎重に吟味し、とりあえず1杯やりたかったので、クラフトビールのお店を訪れる。ラインナップを見ると、酒粕のビールってのがあった。しかもツマミに茹で落花生が売っている。おいおい、完全に俺用やないかいと思い、なんの躊躇もなく流れるように流暢にオーダーする。茹で落花生ってすごく好きなんだよな。

地べたに座り、酒粕ビールと茹で落花生。たまらん

そして居酒屋さんも出店していて、だし巻きや親子丼を販売しているではないか。そんなのもあるの。それらはやや時間がかかりそうだったので、私は列の前方で誰も注文していなかった角煮を購入した。外でこんながっつり居酒屋メシを食べるって珍しい。別の店で日本酒の7点試し飲みセットを購入し、ゆっくりと味わう。

ドカンとでかい角煮。これはうまい
日本酒7種盛り。全て蔵が違う

右下に配置され、はじめに手が伸びやすい日本酒が白ワインのような甘味の強いもので驚いた。どれもおいしい。雲ひとつない晴天のもとで角煮と日本酒というのはなかなかアンバランスなようだが、これ以上のしあわせはないような気さえしてくる。

ひとりで来ている大男は私しかいない。しかも酒を飲んでいる。それでも「隣良いですか?」と子連れのママが話しかけてくれて、そこまでの威圧感は放っていないのだなと安心する。それでもたぶんいない方が良いだろうと思い、そそくさと席をあける。

日本酒の盆を返す時、お店の方がとっても気さくな方だったので、はっはっはと笑って冗談混じり風を装い、がっつり本音で「デザートっぽい日本酒の位置を変えた方が良いのでは?」とお伝えしておいた。驚きは最後に取っておいた方が楽しい。

マエストロ足立さん。超最高

気づけばステージで演奏がはじまっている。灯油ポンプや筆などを楽器として、演奏をされる「マエストロ足立」さんだ。名前にもそのパフォーマンスにもほっこり癒され、思わず笑ってしまう。このぽかぽかとした空気にミラクルマッチする存在。マルシェ専用マエストロだ。一瞬で大好きになる。子どもたちとの掛け合いもされていて、あたりがしあわせな桜色の空気に包まれていた。

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その後は、歩いてすぐのもうひとつの会場へ。こちらでは洋館の入り口で「流しの鍵盤ハーモニカ奏者あやちん」さんがフリーで演奏をされていた。私は芝生にどっかと座り込んで、ただひたすらぼーっと演奏を聴いていた。気づけば1時間近くが経っていた。

黎明館。こちらの会場も楽しい
あやちんのハーモニカもすごく良い

着込んできたモンベルの半袖インナーダウンが暑い。誰もが柔和な表情をしている。今日春が来たみたいだ。

お雛さん。良いものだ
かわいい

洋館の中では「雛めぐり」というのが開催されていて、雛人形などがたくさん飾ってあった。こういうものに触れることはなかなかないが、訳も分からず良いもんだ。

響き渡るブルースハープ。かっこいい

また、先ほどの会場に戻り、次は「ブルースハープ奏者 足立安弘」さんのステージだ。どこにでもいる小さなおじさんであり、しゃべりも田舎のおじさん然としていて、とにかくゆるい。しかし、一度演奏がはじまると、自然と足がリズムを刻んでしまう。ハーモニカってやっぱ結構好きなんだよな。枯れた感じもありつつ、心踊るこんなブルージーな音を出してみたいもんだ。私も実は少し吹けるが、この声が枯れるくらいに「青いベンチ」くらいしか吹けない。

ナイスパッケージ。まだ食べていない。楽しみ

ablabo.さんに寄って、「熟れ酒粕」という謎の物体を購入する。そのまま食べたり、野菜にディップして食べると良いつまみになるらしい。また冷蔵庫に楽しみがひとつ増えた。

スパイスカレー。もっと食べたかった…

まだ、つまみという感じで、ガツンとランチは食べていなかったので、スパイスカレーを。

ここは、現役の上方落語家である桂歌之助さんがやられている「ルーとこめ」というお店が出店しているブース。この日は公民館的な場所を開放し、カレーを食べられるスペースにされていた。地元の高校生が手伝っていて、なんだかとってもかわいらしい。スパイシーながら優しい味わいで、スプーンが止まらない。

近くのカフェでは高校生のライブ。あの頃に戻りたい

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ランチタイムが終われば、テーブルなどを片付け、その後の落語会用に席を整えられる。もう帰って仕事をしないといけない時間だったけれど、ええぃ、せっかくだから楽しんでやろうじゃないかと気持ち良く1時間ほどオーバーする道を選んだ。

でも、これまた素晴らしかった。小さな子どもがずっと笑っていて、じぃさんばぁさんも声を出して笑っている。もちろん私は素直にはっはと笑えないけれど、マスクの下でにんまりしておいた。良い空間だこれは。おひねり制だったので、せめて千円入れようと思ったが、もうそんな金は残っていなかった。配られたポチ袋に謝りながら小銭入れの全量を流し込んだ。

くしゃっとした表情がいかにも噺家さんだった

やっとこさ家に帰る。そんなに大きな会場じゃないのに、思わず5時間くらい居てしまった。時には地べたに座ってぼんやりする日もやはり必要である。一人で行っても、ブースで会話が生まれるから寂しくない。夕飯は大好物の麻婆茄子だったので、今日はやはり良い日だ。

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