見出し画像

小川糸好きが語る、小説「ライオンのおやつ」について

前にも触れましたが、私はコロナ禍で小説にハマりました。特に小川糸さんの小説が大好きです。

まだ制覇はできていないですが、私の好きな小川糸さんの小説を、感想を交えながら紹介していきたいと思います。

書いていたら文字数が多くなったので、1作品ずつ紹介していくことにします。今回は2020年の本屋大賞第2位にも選ばれた作品です。2021年現在ドラマ化されNHKプレミアムで放送されています。

※なるべくネタバレをしないように書きますが、内容を知らずに読みたい派の方は、小説を読んでからこのnoteを見ていただくことをお勧めします。

「ライオンのおやつ」

主人公の雫が若くして末期癌だと診断され、最期の場所として選んだホスピスでのお話です。ホスピスでの様々な出会いを通して、雫が自分自身と向き合っていく様子が描かれています。

小川糸さんの表現には色や形があって、小説なのに絵本みたいだといつも思います。この小説の中のお気に入りの表現を1つ紹介しますね。

私のこのオーロラみたいに刻々と色を変える落ち着きのない感情を、脱脂綿のように吸いとってくれる。 (ライオンのおやつ文中より)

癌と向き合っていく雫の繊細な心情を、いつ出てくるかも、いつ消えていくかも分からないオーロラに例えた表現です。そして、脱脂綿にすーっと吸い込まれていくところを想像したら、私の心まで軽くなったのを感じました。

話の中で雫は「もしも私が昨日死んでいたら……」と言うのですが、その言葉に私はハッとしました。「明日死ぬかもしれないから、今日好きなことをしよう」みたいなことを言う人はいます。ですが、それはまだ命がある前提で話す人間が使える言葉だったんだと気が付いたからです。
もし私が昨日死んでいたら、この暑さも感じられないし、noteを書くことも叶わない。そうやって考えるだけで、目に映るものが急に鮮明になった気がして、生きている実感が湧いてきます。

私はこれまで看護師として、死と向き合う方と接っする機会がありました。ですが、主観的にはあまり考えられていませんでした。どれだけ考えてみても、死んだ後のことは死んだ人にしか分からないし、死を目前にしてみないとどれも想像でしかないからです。ただ、この小説を読んで死や死を通した生について感じることは、より主観に近いのではないかと感じました。

小説のラストについては、あえて書きません。ですが、死と向き合ったことがない方、漠然とした不安がある方、誰かの死に悲しむ方……そんな方にもぜひ読んでみて欲しいなと思います。


ちょこっとプラスして

作品中、ホスピスで飼っている白いもふもふのわんちゃんが、雫に懐くのですが、小川糸さんが実際に飼われているわんちゃんをモチーフにしたのでは?と思っています(勝手に)。
そのわんちゃんについてはエッセイ本「針と糸」を通して知りました。両方読んだ方がいらっしゃったらぜひ聞きたい!どう思います?



✳︎✳︎✳︎

小説について書かれている記事はこちら

看護師について書かれている記事はこちら


この記事が参加している募集

人生を変えた一冊

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?