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銀河ヒッチハイク・ガイド/ダグラス・アダムス

あー、答えだけ手に入れたって仕方ないんだなって思った。
特に自分で苦労もせずに、誰かがくれる答えをもらったところで仕方ないんだと。

だって、答えの意味がわかるためには、問いの意味がわかってないといけないから。

でも、往々にして、他人から答えだけ教えてもらおうなんて安易に思っている輩は、問いの意味を理解する力も根性も持ち合わせていない。
だから、高い代償払って延々待ちわびて得た答えの意味不明さに、頭が真っ白になって、「こんなの詐欺だ」と言いだすことになる。

いやいや、詐欺じゃないんだって。

自分だけでは出せない答えの場合、その答えに対応する問いそのものがそもそもむずかしくって、だから答えに辿り着けないんだから。
ようするに、逆からいえば、問いを正しく認識さえできるなら答えを導くことはそれほどむずかしくないってことが多いんだろうね。
答えが出せないのは問いを正しく設定できてないからだ、と。

まあ、実際には、そもそも問いをちゃんと立てる気もない人が多いんだろうけど。

そんなことを、この今から40年以上前の1979年にイギリスで出版されたダグラス・アダムスの傑作として知られる『銀河ヒッチハイク・ガイド』というSFコメディを読んで考えた。

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地球を壊され宇宙をヒッチハイク

なんてことを書いてるけど、ダグラス・アダムスの名前も、この『銀河ヒッチハイク・ガイド』という作品も、ほんの数日前まで知らなかった僕である。
それでもその存在を知って数日後のいま、「あー、面白かった」と思うことができたきっかけとなったのは、ジェームズ・ラヴロックが『ノヴァセン』でちらっとその名をあげていて興味をもったからである。
ある本を通じて別の本を知る。そして買い読む。僕にとってはよくあることだ。

『ノヴァセン』はひとつ前のnoteで紹介したとおり、この地球そのものの持続可能性が問われるアントロポセン(人新世)の世が終わりに近づき、きっと人間を超えた知性をもつ強いAIがこの地球とそこで暮らす有機物をこれからも持続可能にしてくれるよ(そのとき人間はどうなるかは知らんけど)という本だったのだが、残念ながらこのSFコメディ『銀河ヒッチハイク・ガイド』ではのっけから、地球は滅亡する。持続可能性など、あったもんじゃない。

この本のタイトルに「ヒッチハイク」というワードが入ってるのは、だから、住むべき地球を失って、ただひとり取り残された地球人が見知らぬ宇宙船をヒッチハイクして乗り継いでいく話だからというのが、1つの理由。

銀河をヒッチハイクして回る文化

それと、もうひとつ理由がある。
この本が『銀河ヒッチハイク・ガイド』というタイトルである理由のもうひとつは、この本のなかの世界=宇宙には、『銀河ヒッチハイク・ガイド』というベストセラー本が実際にあって、ただひとりの生き残りの地球人とともに、宇宙をヒッチハイクするのは、そのベストセラー本の編集記者だったりするからだ。

つまり、この宇宙には、いろんな宇宙生命体がいて、星々をヒッチハイクしてまわる文化があるっていう設定なのだ。

これまたラヴロックの説とは真逆で、ラヴロックはうちには地球人以外には存在しないって『ノヴァセン』で書いてた。

人間がわからないことも簡単にわかるコンピュータ

『ノヴァセン』との関連でいえば、人間の知性をはるかに超えたコンピュータも、この『銀河ヒッチハイク・ガイド』には登場する。
人間たちはこのコンピューターに冒頭書いたような答えを出してもらおうとする。

しかし、知性をはるかに凌駕するというのは、そもそも高い方が考えていることを、低い方が理解するのは不可能だということかもしれない。
高い方が出した答えをもらっても、低い方はなんのことやらさっぱり理解できない。
たとえ、その最初の問いかけは自分たちからのものだったとしても。

強いAIが登場してくるって、そういうことなんだなとこの40年以上前のSFコメディを読んでも、あらためてわかる。

僕らは、自分たちより知性が上のもののことを理解できない。

それにしても、ネタバレになりすぎないようにこういう本を紹介するのはむずかしい。

そうそう、ラヴロックがこのSFコメディをどんな風に紹介してたかを最後に紹介しておこう。
こんな感じだ。

ダグラス・アダムスのSF 『銀河ヒッチハイク・ガイド』では、賢いイルカたちが地球滅亡の直前に脱出する。人類に向けた出立の辞はこうだ。「さようなら、そしていつも魚をありがとう」。あらゆる素晴らしいジョークと同じようにこのジョークが効いているのは、もしかしてこれはジョークではないのかもしれないと、わたしたちを落ち着かない気分にさせるからだ。

そう。僕らは、自分たちより上の知性のもののことを理解できないどころか、理解してるかどうかするわからないのだ。


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