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フレームワークやワークショップで価値が生まれるのではなく、時間をかけて少しずつ「新しい価値を紡いでいく」のが共創。

共創プロジェクトに携わって気付くこと

最近は「共創」プロジェクトに携わらせてもらうことが多くなり、失敗を含めてその時の気付きを共有できればと思っています。

ある老舗企業の「10年後20年後のあるべき姿を探索するプロジェクト」に参加させてもらったことがあります。

型どおりに進めようと考えていたので、手始めに、エンドユーザーのインタビューや観察といったリサーチから始めて、カスタマージャーニーでエンドユーザーのペインを見つけて、そのペインをポジティブに変換できるようなアイデア・ワークショップを進めようと計画していました。

基本的なメソッドで間違いなどではないと思います。
ところが、プロジェクトが進んでいく初期の段階で、クライアントから

「これで『未来のあるべき姿』が見えてくるでしょうか!?御社が指摘した『お客さまが実は求めていること』はすでに理解しているつもりです。」

と不安の声が上がってきました。

その老舗企業は、日々お客さまと向き合い、誰よりもお客さまのことをよく理解されていて、「型通りに進める」ことに疑問を持ち不安になられたのです。

その通りだと思い猛省しました。
型どおりに、インタビューをして、ワークショップをしたからといって、新しい価値が生まれるわけでは決してないのです。
誰にもわからない、神のみぞ知る新しい価値を生み出そうとしているのに、従来ある教科書的メソッドに則って、あまり意味のない「正解」を探しに行くようにクライアントは感じられたのです。
(その後は「正解」を見つけに行くのではなく、いっしょに試行錯誤を楽しむプロセスに移行することでプロジェクトは成功していきました。その詳細は別の機会にいろいろ公開していきますのでお楽しみに。)


11月noteのコピー-04

新しい価値という「正解(答え)」があるわけじゃないと、頭でわかっていても、自ずと体が正解を求める

成熟した社会では「問い」が大事で、課題に対する「正解」(答え)はすでに分かっている事が多く重要でなくなってきていることをすでに多くのビジネスマンが理解していると思います。
私もももちろん理解しています。
ただ「頭でわかっていても、自ずと体が正解(答え)を求めに行っててしまう」ことが多くあります。(日本人的と言えるのかもしれませんが。。。)

3ヶ月の共創プロジェクトの中で、お客さまといっしょにワークショップなどをすすめていると、新しい価値という「正解(答え)」が出てくると勘違いしてしまうのは、答えなんか無いと頭ではわかっていても、体が自然と正解を求めに行っているからだと思います。


11月noteのコピー-05

それでも、メソッドを押さえておくことは大事。カスタマイズや応用が必要ですから。

お客さまと共創することで、これまでにない新しいものを生み出そうとしているので、何をやればいいかなんてそもそも誰にもわかりません。

・ワークショップをやれば生み出せるというものではありません
・ましてやフレームワークに則ってやれば出来るというものでもありません
・アイデアを産むという苦しみ(楽しみ)があります

すべて暗中模索でやらなければならないか?と言うと、先駆者が長年創った基本的なメソッドがあり、正解や答えを見つけるものではないですが、これらを押さえておくことはカスタマイズや応用していくためにもとても大事だと思います。


① 調べる・知る・聞く

・デスクトップで調べる:SNSもGoogleも既存データも「知りたいこと」を周辺情報まで広げて徹底的に調べる
・ファクト出し:良いこと、悪いこと、ファクトをとにかく洗い出す
・お客さまに聞く・観察する:目的を決めて観察する、ラダリングで深ぼる
・ステイクホルダーに聞く:仕事に関わっている人に聞く、社内で聞く、経営層や社長に聞く
・多数から意見を聞く:目的を明確にした上で、アンケート調査で聞く
・カスタマージャーニーでお客さまのペインがどこにあるのか洗い出す
・お客さまをもっと幸せにできる接点はないか妄想する

② アイデアを生み出す・共有する

・見えてきたお客さまの不便に対してソリューションアイデアはないか
・ソリューションを越えて、「その手があったか!?へぇ~」を産み出す
・産みの苦しみをメンバーみんなで共有し楽しむ
  (怖い顔で苦しんでいても生まれないから、ブレスト同様に相手を否定せず楽しくやらないと良いアイデアに繋がらない)

③ 試してみる

・クリエイティブテストやコンセプトテストをしてみる
・プロトタイプを作ってお客さまに試してもらう
・試験運用してみる(PoC等と呼ばれるもの)

④ その他、出来ることは何でもやる!

・計画やWBSにこだわりすぎない、柔軟に対応しながら面白そうな方に行く
・新しいことを生み出すのに、正解なんか無くて当たり前なので、面白いとおもったことや出来そうなことは何でもやってみる!


11月noteのコピー-06

時間をかけて少しずつ「新しい価値を紡いでいく」ことが共創。

そもそも私たちは、何のために「共創」するのでしょうか?

共創する目的が、「次に売れるものを産み出す」「未来のお客さまにも自分たちを選んでもらえる」といったことが多いのだと思います。

だから、エンドユーザーを巻き込んで、インタビューをしたり、ワークショップをしたりするわけで、これらはとても重要な活動ですが、それだけで新しい価値を生み出し、未来でも自分たちを選んでもらえるというわけではありません。

未来でも、自分たちを選んでもらえるようにするには、
時間をかけて、お客さまにより良い体験を提供し続けていくこと。
その過程の要所要所で、インタビューやワークショップを取り入れていく。
時間をかけて少しずつ「新しい価値を紡いでいく」ことです。

これが共創ということだと、いろいろなプロジェクトに携わっていく中で痛感しています。

DXを推進するための共創の3ヶ月プロジェクトで、インタビューして、ワークショップして、新しい価値を生み出して、プロトタイプ作って、その後進行していけば、未来もお客さまが私たちを選んでくださる、そんな単純に、しかも短期間に完結することではまったくないわけです。


11月noteのコピー-07

どうやって「小さな価値を紡いで」いけばいいのだろう。

数年前から、特に欧米の飛行機会社のアプリが、ユーザー体験でものすごい進化しているのをボクと同じように感じておられる方も多いと思います。
オランダの空港で飛行機を降りて、入国審査している最中に「あなたのスーツケースはE-15番レーンに流れます」といったアプリのアラートを初めて見たとき、「おおっ~、そう来たか!?」と思わず唸ってしまいました。

4-5年前くらいでしょうか、エコノミークラスを予約しているボクに、ビジネスクラスの料金を前日ディスカウントとして、個別料金がアプリアラートで飛んで来ることにも驚いて、しばらくポカンとしたことも覚えています。

今では、かなり当たり前になっているのかもしれませんが、
「飛行機を降りたお客さまに、スーツケースが流れるレーンのアラートを出す」のは、
短期間のプロジェクトで、インタビューして、ワークショップするだけでは、生まれてこないと思うのです。

これは、「時間をかけて少しずつ新しい価値を紡いでいくプロセス」の中で生まれてきたはずです。

時間をかけて少しずつ新しい価値を紡いでいくには、
従来型の共創のメソッドを活用していくことも大事ですが、
何でも計画通りに進めるのではなく、「柔軟に苦しむ」「柔軟に楽しむ」ことが大事なんだと思っています。
それは「考え抜く」とも言い換えられるのかもしれません。

ただ、9時-5時の就業時間内に、「今から1時間考え抜きます!」とやっても、「飛行機の荷物は○○レーンとアラートで知らせる」という新しい価値を生み出せる可能性は低いと思います。

だから、「お客さまのことをずっと意識の中に置いておく」ことが大事です。
そこに何かの刺激が加わった時や、朝のぼっーとしている時、風呂に入っている時、通勤している時、好きな人と話している時、そんな時に、新しい価値は生まれてくるものだと思います。
インタビューやワークショップなどの従来型のメソッドは、「お客さまのことをずっと意識の中に置いておくための呼び水」にしている、くらいのことなのかもしれません。

私たちも、クライアント企業と、その先にいらっしゃるお客さまのことをずっと意識の中に置いて考え続けられるパートナーとして、ますます共創に磨きをかけ、柔軟に苦しみまた楽しみながら新しい価値に出会っていきたいと思います。
どうぞお気軽にお声がけください。

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