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「まだないものを形にする」TAMのPM 中牟田さんが語る、Webサービス開発の現場

TAMのディレクター兼メディアライターの高田です。

TAM Design Techチームのディレクターである中牟田さん。いままで数々のWebサービス開発の現場でプロジェクトマネジメントを担当してきました。

そこで今回は、中牟田さんに、クライアントのWebサービス開発を支援する現場とはどのようなものなのかインタビューしました。


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プロフィール

— まず、中牟田さんについてお伺いしたいと思います!簡単なプロフィールと、TAMに入社されてからのことを教えてください。

TAMには2013年に入社したので、今年で9年目になりますね。ディレクターをやっています。

福岡出身で、いまも福岡で仕事をしています。
入社当初は東京で勤務していましたが、2018年頃から地元の福岡を主な拠点として、東京←→福岡間を往復するような業務形態になりました。

なので今はリモートワークが主体ですね。


— 担当されている主な仕事は何でしょう。

僕自身が担当するのは、ほとんどがシステムに関わるプロジェクトですね。

最初は静的なWebサイトの制作やCMS案件を担当していましたが、入社1〜2年経った頃からは徐々にシステム系の案件に関わることが増え、現在は、システム開発を含む新規サービス立ち上げプロジェクトを中心として、そのプロデュースやプロジェクトマネジメントを担当しています。

また、入社3年目頃からはディレクターのチームリーダーとして活動していて、他案件のサポートもしています。

Design Techチームの他のディレクターは、システムに限らず、プロモーションからWeb制作まで幅広いので、そこに僕も入って、提案のサポートや、プロジェクトが軌道に乗るまでの補佐を行っています。

中牟田さんが担当した案件例: 膨大な顧客行動データをマーケティング資産に変える、 Salesforce連携のWebアプリ開発


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2015年、Webサービス開発に軸足をシフト

— 中牟田さんがサービス開発に注力しはじめたきっかけは何だったのでしょうか?

これは明確なきっかけがあって、2015年に担当した、日本発の、アフリカで電力のレンタル事業をされている会社さんとの仕事でした。

このときの僕たちの担当領域はあくまでデザインや要件定義まででしたが、このプロジェクトを通じて「もっとこういう仕事をやりたいな」と、自分の仕事に対する姿勢がハッキリするきっかけになりました。

— どのような依頼・相談だったのでしょうか。

アフリカには、Googleマップにも載っていないような小規模な集落がものすごくたくさんあるんです。それで、それらの村々には「キオスク」と呼ばれる雑貨屋さんがあるんですね。

事業としては、「スタッフの方々がそのキオスクに足を運んで、その店舗の屋根に設置したソーラーパネルを通じて、店内に置いたランタンやバッテリーといった機材に充電し、それを消費者にレンタルする」というものです。

しかし課題もありました。レンタルする機材の管理だとか、どれぐらいの電力を貸しているのだとか、そこから発生した売上がいくらかだとか——。

各地に点在する村々から、そういったデータを一元管理し可視化するには、事業運営用のダッシュボードが必要でした。そこでTAMのほうに、ダッシュボードのデザイン制作や要件定義のご依頼をいただいたのです。

— 現地の方々が使われるサービスを、デザイン部分から作ったということですね。

そうですね。このときのプロジェクトには2回関わらせていただいたのですが、1回目がデザインとHTMLコーディング、2回目がシステム化するための要件定義書の納品というものでした。

— なるほど。「アフリカの仕事」というと、TAMの中でも独特なプロジェクトかと思いますが、最初に相談があったときはどのような印象を持たれましたか。

僕自身、スタートアップのお客様と仕事をする機会が初めてだったので、今までの国内ビジネスやサービスとは毛色の違う仕事だなという感じがしました。なんというか、「エキサイティングな仕事だな!」と。

一番の違いを感じたところは「熱量」でしょうか。展開するフィールドがアフリカということもあって、スタートアップ特有の熱量とチャレンジングな気概があって、そこに僕も大きく感化されたと思います。

— プロジェクトを通して大変だったこと、苦労したことはありましたか。

ひとつは、利用者がアフリカの方々だという点でしたね。現地の生活様式が日本のそれとは異なる部分も多く、現地の方々のライフスタイルやペルソナを考えるのも苦労したポイントでした。

たとえば、スマホはかなり普及しているけど、当時、現地は3G環境がメインだったので、銀行への送金は日本のようにアプリではなく、音声認識なんですよね。プッシュホンで「いくら送金額を入力して」みたいな感じです。

もうひとつは、今後のビジネスの広がり方を見極めてデザインやシステム要件に落とし込む必要があった点ですね。そのためには、お客様の事業ビジョンやビジネスへの理解が何より重要な出発点であることを、このプロジェクトで強く再確認しました。


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中牟田さんにとってサービス開発の魅力とは

— このプロジェクトがひとつのターニングポイントとなって、今後の「サービス開発」に取り組むきっかけになったとのことですが、このプロジェクトを通してどのような変化がご自身の中にあったのでしょうか。

「プロとして」という意識が強く芽生えた出来事だったように思います。
公平な立場で、お客様に的確なアドバイスや提案をするという意識がだいぶ芽生えたと思います。

このプロジェクトは、あくまで受託という関係ではありましたが、先方の皆さんがものすごくクレバーかつ熱量も大きくて。そんな方々が、「TAMさんはこの部分でプロだと思っている」という態度で接してくれたんです。

だから自分たちもプロとして誠実に、「言われたことだけやる」という意識ではなく、主体的に意見交換したり提案する意識を強く持ちました。

— 「プロ」としてクライアントのリクエストに応えるとき、どのようなことを意識したのでしょうか。

「クライアントにとっての最善が何かを考える」ということですね。

当時、要件定義にはふたりのベテランPMにも参画してもらったんです。そうしたら、そのPMの人がお客さんと議論が白熱して、「現状のシステム構成を維持する方針だと、近いうちに、事業のスケールアップに耐えられなくなりますよ!」って。

正直、「お客様にそこまで言う・・・?」とその場ではビビって言葉を失ってしまったのですが、よく考えるとそのスタンスって、ある意味正しい部分もあるなと、振り返ったんです。

クライアントとって耳障りのいい話ばかりしたり、言われたことだけやる御用聞きになるんじゃなくて、今後その事業が迎える将来への課題に対し、「こうすべきだ」という提案も、時にはぶつかる覚悟でしていかなくちゃいけない。

そういう姿を間近に見たときに、「プロフェッショナル」を感じる出来事だったなと思います。

— 単純に相手との関係を良好に保とうと思ったら「言われたことをやる」と考えてしまいそう。そうやって相手の立場に立って、ダメなものはダメといえるのは凄いですね。

そうですね。なかなか受託側だと言いづらいところですし。

— 他にも、このプロジェクトを通して起こった自分の変化ってありましたか?

このプロジェクトは、僕らが作ったデザインやシステム構成への思想自体が商品であり、サービスの価値になるものでした。なので、そこまでビジネスの根幹に関われたというのが、僕の中では新しい体験でした。

受託という立場であるものの、クライアントとビジネスの目的を共有し、クライアントの事業そのものの理解を深めて、お客様と一緒にチーム組成して課題発見し、解決策を共に導いていく。そういう仕事のあり方が刺激的で、エキサイティングさを感じましたね。


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記憶に残る印象的なプロジェクト

— このプロジェクトを皮切りにいろんなシステム開発・サービス開発プロジェクトをやってきたと思いますが、その中で心に残っているプロジェクトはありますか。

ひとつは「医療系の求人サービス開発」で、もうひとつは「プリンタのUX開発」ですね。

— では最初に「医療系の求人サービス開発」について教えてください。

新しい医療系の求人サービスをリリースするので、その UX/UI設計やシステム開発を依頼いただいたプロジェクトでした。

企画レベルの段階から、4ヶ月弱でのローンチを目指すというタイトな案件だったんですが、要件定義時のフィードバック内容がすでにサイズオーバーしてしまい、急遽軌道修正の打ち合わせを設けたんです。

当日18時くらいに先方に電話して訪問し、結局帰ったのは23時過ぎぐらいで、いまでも印象深く覚えています(笑)。

— 形に起こしてみたら「なんか違うぞ」ってなったわけですね。

QCD(品質・コスト・納期)でいうところの D(納期)が最優先のプロジェクトの中で、変更要件をそのまま飲みこんで開発を続けると、明らかに納期に間に合わない。

限られた残り時間の中で、そのことをなんとか理解いただきながら、最大限満足してもらえるような調整をすることが重要でした。

なので、急な申し出にもかかわらずお客様にも深夜までご協力いただき、妥協点を調整いただいたお蔭で、無事にリリースできたのかなと思います。

— 「納期は決まっているけど、やりたいことはいっぱいあります」っていうプロジェクト、ありますよね。

お客様がやりたいと言ってることの裏側には、隠れた目的があることも多いと思っていて。普段の仕事から、その本来の目的に注目するようにしています。

言われたままをそのまま実現するのではなく、「隠れた目的」を発見・合意して、その目的も工期も同時に達成するための「他の優れた代替案」を提案するのがプロだと思っています。

さっきの打ち合わせの話も、その「隠れた目的」をお客さんと探り直して、お互いの認識をすり合わせて、それら機能やデザインに落とし込んでいくためのものでした。

— 目に見えるもの、資料に書いてあることだけでなく、「お客さんの想い」を汲み取れるかどうかってことですね。

はい。僕がプロジェクトに関わっているときは、そのような良い提案が出来るように、意識的にヒアリングしたりコミュニケーションをとるようにしています。

— もうひとつの「プリンターのマニュアル作成」について教えていただけますか。

業務用の大型プリンターWebマニュアルのUX改善案件でした。一般的なWebの画面制作とは違う、まったく新しい経験でしたね。

一番印象的だったのはその際のワークショップと、そこに至るまでの道のりです。

研究所で製品の開発・設計をしている方々や、利用者のサポートをしている方々など、そのプロダクトに関わる様々な人たちを一挙に集めてワークショップを実施しました。

たしか20人ぐらい参加していただいたのですが、その規模でアイディエーションをやったのは初めてでした。

— 今までの話を伺っていると、中牟田さんとお客さんとの関係って、とても良好で、信頼しあっている感じがするのですが、中牟田さんが気にかけていることなどはあるんでしょうか。

僕が受託の仕事が好きな理由にも繋がるんですが、色んなビジネスや業界の課題、そしてお客さんの業務の中身を知るのが好きなんですよね。

プロジェクトに関わっている半年や一年で、お客さんが向き合っているビジネスや課題、挑戦に触れることは、自分の人生勉強になると思っていて、それが僕の大きなモチベーションのひとつになっています。

なのでとにかく、お客さんや事業に興味を持つ。そして対等に話ができるように、クライアントの業界知識をセットしておく。そういう点には、かなり時間を使っていると思います。

そういった点で、お客さんから「ちゃんと理解しようとしてくれているな」と僕たちに声を掛けていただいているとしたら、嬉しいですね。


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中牟田さんにとってのTAMの魅力と今後の展望

— 今後チャレンジしていきたいことなどありますか?

いまはたまたま医療関係の仕事が増えているということもあるのですが、医療や介護系の業界には、今後なにかしら貢献していきたいなって思っています。あとは教育ですね。

今一番DXが貢献できる分野の一つだと思うので、自身の経験やノウハウが役に立てるのであれば嬉しいですね。

あと、今は福岡にいるので、将来的には地域貢献にも僅かながら助力できるといいなと思っています。

見えない範囲まで慮ることはできないんですけど、少なくとも目に映る範囲の人たちが、すこしでも楽になったり、幸せになったりするような仕事をしていきたいと思います。

— 逆に、やってしまった失敗談などってありますか?

失敗談とはちょっと違うんですが、仕事する上での大義は大事だと思っていて。
あまりそれを感じ取れず僕らの強味が出せなかった場合は、ちょっと残念だったなと感じたことはあります。

今関わらせていただいている仕事は、世の中や社会に対して意味があったり、僕たちが行動することでお客さんのビジネスが発展したりと、ポジティブな影響があることを自覚できていると思っています。

もちろん言われた事だけをこなすことを求められる仕事も、そういったプラスの影響はあるのですが、僕らの持ち味であるクリエイティブさを十分発揮できず、期待値を上回るパフォーマンスが提供できない場面もあるかなと。

また、なぜ大義が大切かというと、関わってくれるチームメンバーにとっても貴重な時間になるからですね。

半年とか1年とか、貴重な人生の時間を使って仕事をするので、僕たちが「何かに貢献している」という手ごたえを感じられ、メンバーにもプロジェクトの大義を、ときにはお客さんの代わりに、説明ができる仕事をしていきたいと思っています。

— では、中牟田さんが思うTAMの良さというか、TAMで仕事をすることのメリットって、どう感じられていますか。

ひとつは、上場されているような大企業と、プライムで仕事ができるという点ですね。だからときにはクライアントのビジネスの中核にまで触れられる。そういう経験を積めるのは、TAMならではの良さですね。

あともうひとつ、所属しているスタッフの皆さんが前向きで成長意欲の強い人達が多いということ。
先輩もノウハウを共有しやすいですし、ベテランのノウハウを吸収しやすい環境だなと感じます。若い人たちも多いですしね。

— 若い人たちが多いからか、TAM全体が素直で吸収力ありますよね。

ですね。いまシステム案件のドキュメント講座等もやってますけど、ディレクターだけでなく、デザイナーやエンジニアも参加してくれていて、自分の領域に限らず学ぼうとしている人が多いのが印象的です。

— 最後になりましたが、中牟田さんが感じる「サービス開発」の面白さを教えてください。

どうしても見取り図のない仕事であることが多くなります。

見通しがないところに向かって、色んなフレームワークやメソッドを駆使したり、自分の頭で苦悩しつつ、新しいフォーマットを作ったりしながら突き進む。自分で学んで、調べて、過去に事例のない方法論を探し出して、それを提案する。

フォーマットが無い中で、何とか形にしていく。その仕事って、ものすごくクリエイティブだと思うんです。だから楽しいんですよね。

"クリエイティブ" って聞くと、デザイナーやエンジニアの仕事をイメージしがちだけど、ディレクターも非常にクリエイティブな仕事だと思ってます。


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