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現役MBA生の戦略分析①ヘアサロンの異端児 PERCUT

おそらく99.9%の人が1年に何度も床屋あるいはヘアサロンに行くだろう。

では、店を選ぶときに何を大事にするだろうか。

おそらく大体2タイプに別れるだろう。

それは、①低価格②高品質である。

この両方を実現し、着実に顧客を獲得し成長しているのがPERCUT(パーカット)という美容室である。一見すると、その両方を実現することは簡単に見えるかもしれないが、ほとんどの美容室が、低価格あるいは高品質に寄りかかっているのが現状である。

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具体的には、低価格で言えば、QBハウスなどの1000円カット、高品質であれば、原宿に出店しているような美容室である。

なぜ、PERCUTは他にはできない二兎追いを成功させられているのだろうか。そして、なぜ簡単に他の美容室はその戦略を模倣できないのであろうか。その問いに対する考察を行っていく。

1.なぜ両方(低価格・高品質)の実現は難しいのか

なぜ、美容室業界で両方(低価格・高品質)を追い求めるのは難しいのか。その理由は2つある。まず1つ目は、トレードオフ(どちらかを選ぶと、どちらかを捨てざるを得ない)という特徴があるからだ。具体例で説明していこう。例えば、価格を下げようとすると、それはコストを下げることにつながる。そうすると店装の質を下げたり、人材の質、補助サービスの質(シャンプー、ヘアセット等)を下げたりすることに結びつくため、質を下げざるを得ない。2つ目は、回転率を上げることが難しいからである。価格を下げて、同時に回転率を上げるという選択肢もあるが、通常のカラーやパーマでは回転率を上げることが難しいことに加え、回転率を上げたならばその分集客をしなければならず、これも簡単にはいかない。以上の要因から、一般的には、両方(低価格・高品質)を追い求めるのは難しいのである。

2.なぜPERCUTは(低価格・高品質)が実現できるのか

結論から述べると、上記で挙げた回転率の増加と低コスト化の両方を推し進めているからだと考える。そして、どちらかといえば、回転率の増加が重要なのだと考える。

全体としては以下のような因果関係になっている。

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まず第一にPERCUTは「男性専用」である。男性専用にすることでまず、男性にとっては「特化型」であり、注目度が増す。そしてPERCUTは自らヘアカタログを出しており、さらに低価格である。「男性専用でなおかつきちんとしたカタログがあり、なおかつ低価格と言う価値」は大きな集客材料になるはずだ。また、男性は基本的にカットであれば施術時間も短縮できる。そして前述のヘアカタログを顧客に勧めることでカットの標準化を図り、スピードが向上する。このような施術時間の短縮も合わさり、回転率の高さを可能にしていると考察する。

また、ターゲットを男性に絞り込むことで、店舗は簡素でもさほど問題なくなり、コストを下げられる。また、早くて安くてそこそこ上手いと言う希少性のある美容室であるため、口コミとしても広がりやすく、集客になるだけでなく、マーケティング費用の節約にもつながる。さらに、回転率を上げられると、店舗の席数、すなわち面積を少なくできるのでさらに低コスト化が可能になる。

このような因果関係の連鎖が低価格・高品質を可能にしているのである。

3.なぜ他の美容室は簡単に模倣できないのか。

第一に、男性にターゲットを絞り込むと言う発想がそもそも非合理であり、あまり真似しようとしないからだ。つまり模倣しようとしないと言うより、模倣を忌避するのである。おそらく多くの美容室のメインターゲットは「女性」である。その理由は、女性の方がカットにもこだわりがあり、さらにパーマやカラーなどを注文してくれるため、客単価を高くすることができるためだ。なので、女性をターゲットから外すのはあまり現実的ではないのである。男性に絞り込んでいるサロンもあるが、それはあくまでも「女子っぽい男子」をターゲットにしていて、本質はあまり変わらない。

第二に、多くの美容室がメカニズムを理解できないからだと考える。おそらく、多くの美容室はPERCUTは単純に価格を下げて利益幅を減らすことで集客していると考えているのではないだろうか。つまりは、上記の因果連鎖を想像できず、結局は模倣しないのではないだろうか。

以上がヘアサロンの異端児・PERCUTの分析である。

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