シェア
玉響
2020年9月1日 00:10
8月と9月の境目、例のごとく寝付けない夜、私はプラムのケーキを作り始める。くすんだ深いプラム色、ついついこの色の口紅を買って集めてしまうくらいには好きな色だ。だがプラム自体は、それほど食べたこともない、馴染みのない果物だった。一年中ある果物ではないからということを差し引いても、人生で数える程度しか食べたことがない。どこか渋みもあり、桃やら無花果に比べると圧倒的に酸っぱいから、意図的に選んでこな
2020年8月23日 20:53
なんだか寝付けない夜は、決まって夜更けまでキッチンに篭るのが、私の常だ。1週間前の夜中もそうだった。生あたたかい夏の夜、ぼんやりと、ああまたこの日かと動揺も無く、私は早々にタオルケットを引き剥がした。冷蔵庫の上には、レモンが4つ転がっていた。ころんとしたそのフォルム、かたくてしっかりとした皮、熱気で靄がかった気分をはっとさせてくれるようなビビッドイエローに惹かれて、その日の昼間に購入した。
2020年8月14日 21:41
「食べられないもの、ある?」「パクチー」私は即答して、匂いがだめです、と付け足した。「貴方は?」「俺は、トマト」彼は即答して、なんでだめかは分からない、と笑った。そうか、なんでだめかは分からないのか。私も、トマトが好きではないが、好きではない理由はなんとなく分かる。ぶちゅっとした触感、トロっとした中身、酸味、後味。幼いころから、ミートソースやケチャップは大好きなのに、野菜のトマトはその