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おはなし保管庫

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現実に重なる不思議なおはなし(小説、フィクション、言い伝え)保管庫
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#日記

陽の光に向けて

陽の光に向けて

真っ白に花が浮かぶ、真っ暗な山道を。ひとり、歩く。

空の向こうに、ぽこっと見えるまん丸な月。その光を吸いこんだように、白く光る花。

風がふっと通り過ぎたら、小さな光たちがふわふわと目の前をこぼれて、落ちる。

夜の山を歩くのは怖い。けれど、この桜の花が咲いている時だけは好き。

怖いけれど、好き。
そんな春の夜。

耳の奥で、じいじいと音が鳴る。静かすぎる山の中で、山神さんが人の世界をみつめて

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波の中を歩く

波の中を歩く

人の多さに、くらくらする。ターミナル駅を歩く。外出自粛の報道があって、人が少ないくらいなのに、わたしにとってはまだ多い。

息をひそめて、人波に埋もれるように。足を運ぶ。

どうやって人ごみの中にまぎれよう。

そればかり考えていたら、迷子になった。「いつも」のルートを外れると、とたんに、これだ。

山や林の中で、地形を読みつつ進む道は、迷子になんてなりようがない。それなのに、街の中。あの小さなブ

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眠りにつく

眠りにつく

ぱこっと。頭を開けて。しゅうしゅうと煙を吐いて。ふうっと煤をふきとばしたら、頭のメンテナンス終わり!

メンテナンスを終えた頭は、動きなめらか。心のなかと、身体と、なめらかに動く頭と。全てをあわせて、わたしは動き始める。

昼にあった、あのコトも。朝に見かけた、アレも。さっき、気にしていたコレも。メンテナンスをし終えた頭の中では、落ち着くべきところでやさしく眠る用意をしている。

後は、身体が眠る

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