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「初心・原点」に返るか・帰るか、どっち問題

「玉坂さん、その漢字、ひらいといた方がいいですよ」

と、指摘を受けたのが20代後半だったか30代に差し掛かったかだった時分。Web制作会社にて、業務拡大のために営業兼ディレクターでの求人を出して、自身が採用した2つほど年下の女性だった。

周りに細かなことを指摘してくれる、いわゆる「直属の上司」のような存在がいない環境が長かったので、大変にありがたいチームメイトであった。体大卒で、営業成績も良く、大変に気も強く衝突も多かったけれど。

漢字をひらくってどういうこと!?

一瞬戸惑いつつも文脈で何となく受け取って「お、おお。ありがとう。そうね」なんて返答したように記憶している。

〇〇して下さい/〇〇してください
〇〇して頂く/〇〇していただく
〇〇と言う/〇〇という

とかね。
漢字で表現するよりひらがなで表現した方がいい場合は「ひらく」なんて言いますし、逆は「とじる」ですね。

Web制作の現場って若い人間が割と勢いでWebサイト制作を受注して、勢いで納品することが多かったり、ライティングの職責者がクライアントにあるのだけれど、細かな修正や簡単な文面は物を書くことをよくわかっていない営業が止む無く代行するケースが多かったりで、校閲の視点がないまま大人になることがままあるんですよね。

自分もその一人でした。

誤字脱字なくであったり、揺らぎのないようにしたり、という意識はあったのだけれど、ひらいた方が良いか、とじた方が良いかという視点は当時ありませんでした。

漢字にできるならばすべて漢字にした方がいいんちゃうの?
それくらいの気持ち。

その時知った言葉が用字用語

あらゆる業界、会社、集合体で、そこならではの用字用語のルールがあります。ある業界ではひらいた方が良いとされる用語も、別の業界ではとじるべきとされるケースもあるでしょうし、使われる漢字もそれぞれで異なる。常用漢字とされていない漢字であっても、専門家同士であれば難語であっても漢字で表現した方が意味が明確になりますからね。

自身が表現に困ったときは、まずネットで調べて多く使われている用例を参考にし、時間があるときは踏み込んで、近い業界の用字用語を検索するようになりました。

とじるべきか、ひらくべきかも同じく。

迷えばまずは広く調べて、時に専門的な用字用語ルールへ踏み込む。ライターに仕事を頼むとお金がかかるからって、営業/プロデューサー/ディレクターがライティングを兼務できると大変重宝されるものでした。中小企業で労働時間が長いという問題が生じやすい理由の一つですけどね、これ。単価が安くて分業できない。けれどそこには仕事がある。飯を食うには誰かがやらねばならぬという。

ちなみに表題。

原点には「帰る」で、初心には「返る」が用例としては多いらしく、新聞ではその逆で、原点に返る、初心に帰ると表記されるようです。

新聞では「原点に返る」「初心に帰る」の表記が用いられているのですが、四つの選択肢の中では「原点に帰る」「初心に返る」という、それとは“逆”の組み合わせを選んだ人が最多となりました。「原点」と「初心」の「かえる」をそれぞれどちらで書くか分析してみても、原点は「帰る」が、初心は「返る」が6割前後でやや優勢という結果になりました。
引用:https://mainichi-kotoba.jp/enq-366

こういう記事を見てるとそんなやり取りを思い出して、初心にかえりながら、ひらいた表現をしたくなるのです。

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