_よもぎごはん

ハルヲタク「よもぎごはんの話」


雨の庭にでると、湿った春のにおいがした。近くの小川によもぎを摘みにゆくのが毎春恒例だったのに、数年前から、妙な怠業をしている。


近所の小川に生えてたよもぎを根っこごと庭に移植。欲しいときすぐ引っこ抜いて食べられるし、衛生的にも信頼できるなんて思ったが、結果は庭の生態系を崩すただの食いしん坊だった。去年は、カラスノエンドウがどうのって書いてあるが、今年はミント群がすっかり制覇され、よもぎの春庭となってしまった。ミントも強かったけど、よもぎって、もっと強い。地下茎からほか植物の発芽を抑制する物質を分泌して、アレロパシー(他感作用)を起こすのだそう。そのおかげか、ミントは全滅したが、他の雑草が心なしか少ない。

まあ、それはそうと、よもぎの若芽は、毎年おなかを鳴らすのだ。朝摘み若芽でつくる「よもぎごはん」2020年版を今年もご紹介しよう。毎年炊いてるんだな、よもぎごはん。→去年の記事


(写真は今日を待ってたコッチョリーノのよもぎ色カップ)


レシピの前に、ちょっと魅惑的な雑学。

イタリアにも西洋ヨモギ/ニガヨモギ(assenzio:アッセンツィオ)が道端に生えていて、フライで食べると鼻にまわる芳香とともに、日本への望郷の念がわいたものだ。そうそう、ちょうど週末に近所のビストロで飲んだ「パスティス」というリキュールについても追録しておこう。

件の酒は、かつてフランス軍の傷薬として、その後は芸術家たちの酩酊ドリンクとしてもてはやされた薬草酒「アブサン」の代替酒。その「アブサン」にはニガヨモギが入っており、それがトリップ要因だということで、代替品には、よもぎは入っていない。

ゴッホやピカソ、太宰治の「人間失格」の中でも主人公がアブサンにやられている。中毒性の高いアブサンを頭にチラつかせながら「自分の画才を信じさせたい」という焦燥に悶えたとある。

伊語で「ニガヨモギ」は assenzio(アッセンツィオ)。「欠席」はassente(アッセンテ)。英語も「欠席」はabsentで、あのお酒は「アブサン。中毒性ゆえに歴史から消えたお酒という意であるとか、深い!


最後に、職人のなんちゃってレシピ「よもぎごはん」。ミニ土鍋(1合)の基本的な炊飯に、今年はよもぎと桜。みなさんに春が来ますように。


・よもぎの若芽(上写真くらい)
・洗い米1合
・水210 ml
・桜の塩漬け(数枚)

➀ よもぎをさっと茹でて水を絞り細かく切る。
➁ 土鍋に洗い米と水、桜塩漬け2〜3つ入れる。
➂ 残りの桜の塩漬け半量を水につけ塩抜きする。
➃ 中火5〜8分でぶくぶくしたら弱火10分。
※吹きこぼれないよう蓋を開けて確認しても良い
➄ 火をとめたら➀と➂ を入れてかきたてる。


(小鍋にもなるコッチョリーノのスープカップ)




あとがきコッチョリーノ 

▶︎コッチョリーノ ブログの書き下ろしです。ブログでは「よもぎ」関連のコ過去記事「よもぎペンネ」「近くの道草よもぎ摘み」なども紹介しています。▶︎はびこるといえば、よもぎくらい無事な春がはやく来るといいなと心から願っています。中止や延期になってしまった展覧会もあるけれど、個人作家は展覧会を持続しているところが多いので、可能な限り足を運びたいと思っています。▶︎次回は6月に展覧会を控えていますが「わたしの展覧会だったら」と置き換えて、他作家と楽しい話をして可能な応援として作品を買って動かします。▶︎ある作家と「幸いわたしたちの作品は腐らない」と励ましあえたことは救いですが、量産品でなく一点物作品という立ち位置での「オンライン販売はむつかしい」(諸作業や配送リスクなど)ということでわたしたちは合意しました。▶︎ “賭ける”という言葉は大げさでもなんでもなく、投資した材料や燃料費を可及的速やかに取り戻さねば次に進めないという事実もあるわけで。工場も会社も、お店も、農水産業も、みんなそうですね。ネット配信、オンラインショップなどあらゆる手段が活発に動いていることに新しい時代を感じます。▶︎減収という目先の嘆きだけでなく、学びながらも税を納め国を動かす年金を払いはじめた新成人にとって経済は夢の動力。どの国の若者も同じ。▶︎作家として、傲慢無礼にならず、プライドやモチベーションを落とさない意気込みを保ちたいと思っています。▶︎入店したら手洗い退店時も手洗い。うつさないぞうつらないぞ。作品をひとつでも回したいのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?