「Stop Making Sense」4Kリストア版@IMAXシアター
約40年振りに観ました。83年作ですが、僕が見たのは、85年。レイト・ショーのみの公開でした。
当時は、メンズ・ビギがプロモーションをサポートしており、店舗にも大きなポスターが貼ってありました。あの時代、肩幅を強調したジャケットが大人気でしたが、あのスーツは肩だけでなく、身頃も巨大で来日時に観た能にインスパイアされたそうです。
改めて、彼らの音楽をまとめて聴いてから観たので、その辺の話から、映画につなげたいと思います。
さてTalking Headsといえば、TelevisionやPatti Smithと共にニューヨークパンクの代表的アーティストとして出てきたわけで、それはその後、人為的に飛び火したロンドン・パンクのデザインされた”Teenage Riot”(若者の暴動)とは違いもっと知的な感じで、David Byrneの神経質なインテリ学生然とした風貌もそのイメージでした。
77年に出たファーストアルバムは、「Psycho Killer」という彼らの代表曲が収録されていたものの彼らや当時のシーンの勢いをあまり感じられない音でした。
そしてBrain Enoと組んだのが「More Songs About Building and Food」。Enoの音処理により、David Byrne のヘナヘナクネクネした抑揚のあるボーカルが強調され、白人の神経症的グルーブが完成したと言えます。そしてAl Green の「Take Me To The River」のカバーに黒人音楽への接近を感じられました。
サードアルバム「Fear of Music」では、フーゴバルの詩にファンキーなギター・カッテイングとアフリカンリズムを絡めた「I Zimbra 」をオープニングにエスノ感が顔を出すともに、「Heaven」に代表されるように Byrne の作曲のレベルも上がりました。
当時、アフリカ音楽にハマっていたEnoとByrne は「サイケデリック・アフリカ」のコンセプトのもと、当時先進的なサンプリングを用いて「My Life in the Bush of Ghosts」を録音し、それが大所帯のバンドサウンドとして「Remain in Light 」に発展したと言えますが、スタジオワークでの音の切り貼りで作られたサウンドは、ライブでの再現が難しかったらしく、Enoの元を離れ、Alex Sadkinのより硬質で研ぎすまれた音で“再現可能な演奏で、「Speaking in Tongue」が録音されます。
Byrneと4人のメンバーが作りだすスカスカで奇妙なグルーブ感をアフリカオリジンのファンクネスな演奏とリフ中心のコール＆レスポンスで、音の隙間を埋めていったとも言えます。
話が長くなりましたが、この映画は「Stop Making Sense 」は、「Speaking in Tongue」の時のツアーの記録。
なぜ、Talking Headsの音の変遷の話をしたかというと彼らの音楽の変遷がこの映画の演出に現れているからです。
大型のラジカセから流れるリズムボックスのビートのみでDavid Byrneひとりで歌う「Phycho Killer 」をオープニングに後ろのセットが徐々増えていき、Tina Weymouthのベースと2人で演奏する3rdの名曲「Heaven」、Chris Frantzのマーチングバンドのような軽快なドラムの2nd収録曲「Thank You for Sending Me An Angel」、Jerry Harrisonのコールド・ファンクなギターカッテイングの同じく2nd 収録曲「Found The Job」で4人のメンバーが勢揃い。そこから、2名の黒人女性コーラス、パーカッション、ギターが参加。何より、効いているのキーボードのBernie Worellの動物のようにうごめくシンセで、「Remain in Light」「Speaking in Tongue」のHeads流大編成バンドによりアフロ・ファンクが完成です。David Byrneお得意の痙攣ダンスや電気スタンドとのチークダンスなど見所満載で、彼は、その後、ダンスや演劇の音楽を手掛けたりと映画を製作したり、活動の幅を広げていくわけで、当時のニューヨークアート満載で楽しい。大ヒットしたTom Tom Clubのコーナーもあり、あのポコポコなる音が木魚だったことを発見しました。
美しい画像と抜群の迫力のある音でよみがえったこの映画は,ケイト・ライカールトなど、現代アメリカの空気感を捉えるA24の配給で、David Byrneがクリーニング屋に40年ぶりにビック・スーツを取りに行くティーザーもイカしてます。
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