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2023年6月の記事一覧

「Tar」 トッド・フィールド監督作品at Stranger映画館

ずっと観たかったベルリンフィルの首席指揮者として活躍した女性指揮者の話「Tar」。 銀座、新宿でもやっているんだけど、今日は、最近、クラウドファンディングで菊川に設立されたミニ・シアターStrangerで観てきました。代表の岡村さんは、ゴダールの「映画史」を穴が空くほど読み、一番読んだ小説家がマルグリット・デュラス、一番聴き込んだレーベルがECMだそうで、全てが”映像的”で、これは間違いありません。 入口がTシャツなども販売しているカフェになっており、奥の客席は49席のみとま

「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才 」The Idiot/ Iggy PopHeroes/ David Bowie

東京美術館のエゴン・シーレ展。同時代のグスタフ・クリムトやオスカー・ココシュカの作品も展示され、第一次世界大戦の従軍後、スペイン風邪で夭折した彼の28年間を激動の時代背景と美術がより現代的色彩を帯びる流れと共に概観できます。  ちなみにシーレがウィーン美術アカデミーに入学した1906年の翌年と翌々年にはアドルフ・ヒトラーが同アカデミーを受験して不合格となっているそうで、その後ナチス・ドイツが近代美術や前衛芸術を、道徳的・人種的に堕落したもの=退廃芸術として禁止する流れと関連

ピエール・バル―とサラヴァの時代/サラヴァの屋根裏部屋

昔から、「男と女」やサラヴァ・レーベルのことを知っていましたが、彼のことを本格的に聴いたのは、当時、立川直樹のプロデュ―スの元、気鋭のアーティストで、かつかねてから彼のファンであった加藤和彦、高橋幸宏、坂本龍一、鈴木慶一、清水靖晃らのサポートにより、日本で制作されたLa Pollen(花粉)でした。 こちらは、スタジオ・ボイスの編集長だった松山晋也による彼とサラヴァ・レーベルの物語とその出版に合わせて発売されたレーベルの屋根裏部屋で発見された未発表音源集。 彼のボヘミアンな“

「シング・ストリート未来へのうた」ジョン・カーニー監督作品(アイルランド映画祭2023)

時代を共に過ごした海外の友達が出ているような愛着感で何度も観てしまうこの映画。 インスピレーションを感じあった仲間が集まり、音楽が生み出される“特別な瞬間”を描くことができる希有かアイルランド人映画監督ジョン・カーニーの「ONCE ダブリンの街角で」(近くミュージカル版が日本でも上演)、「はじまりのうた」に続く作品「シング・ストリート未来へのうた」。 舞台となったダブリンは、その後、産業転換や市場開放策で、「ケルトの虎(Celtic Tiger)」と言われた急激な経済発展を遂

Blaxploitation movie soundtracks~ブラック・ムービー・サントラ

昔、黒人の方たちの過剰ともいえるファンクネスについていけず、白人音楽ばかり聴いていた僕が初めに感銘したのは、公民権運動、キング牧師の暗殺、ブラック・パワーの勃興、そして白人も巻き込んで、大衆化した流れの中での70年代のニューソウルでした。 ブラックスプロイテーション(Blaxploitation) とは、1970年代前半にアメリカで生まれ,主に、アフリカ系アメリカ人を客層として想定した映画のジャンルで、タランティーノ監督の「ジャッキー・ブラウン」のおかげもあり、少し詳しくなり

「ザ・コミットメンツ」アラン・パーカー監督1991年作品

 アイルランド映画祭2023で久しぶりに「ザ・コミットメンツ」を観てきました。 上映後はピーターバラカンさんのトーク・ショーもありました。 30年近く前、ビデオで観た映画でしたが、ピーター・ガブリエルが音楽担当した「バーディー」の監督アラン・パーカーの作品というのがきっかけでした。  アイルランドの首都ダブリン北部に住む労働者階級の若者が当時流行のニュー・ウエーブやヘビー・メタルやはたまたアイリッシュ・トラットではなく、ソウル・ミュージックのバンドを組む話。マネージャーとして

MICHAEL HEAD & THE RED ELASTIC BAND LIVE AT Shangri-La

 昨年出た最新作は、英国チャートで6位に入り、そのうえ、英MOJO誌では、多くの気鋭のアーティストを抑えてNO.1に選ばれる快挙を成し遂げたわけですが、残念ながら、このアルバムの日本発売はなく まだ あのThe Pale Fountainsの という枕詞が必要なようです。 そして待望のMichael Headの来日公演。フレッドペリーの黒に襟と袖に赤のラインがあったポロシャツを着て登場。新作を中心にキャリアを総括する幅広い選曲でしたが、「Pacific Street」のオープ

HALLELUJAH: Leonard Cohen, A Journey, A Songハレルヤ:レナード・コーエン 人生の旅路と歌

2016年に亡くなったレナード・コーエンのドキュメンタリー。 ケベック州モントリオールの裕福な中流ユダヤ系家庭に生まれ。13歳でギターを弾き始め、地元のカフェでカントリー&ウエスタンの曲を演奏、大学在学中に初の詩集を出版。 歌手としては32歳という遅咲きの彼。 1960年代から禅に傾倒していた彼を知ったのは、1984年に発売された「哀しみのダンス」(Various Positions)でしたが、当初、アルバムは、アメリカでは売れないとレコード会社に発売を拒否されたと知りました

なんとなくクリスタル/田中康夫映画「なんとなくクリスタル」オリジナル・サウンドトラック

 最近よく言われている日本の労働者の賃上げそして経済力の向上や人口減の解決策として、日本はもっと提供する商品やサービスに付加価値をつけ、高単価で売らないといけないという話が、よく出て来て、その通りだとは思うのだけれど、ふと、80年代に注目されたフランスの思想家ジャン・ボードヤールが、彼の著作「現代消費社会の神話と構造」の中で、語った現代消費社会は「差異化」「記号化」という話の延長線上の話じゃないと気ついて、もう一度、バブル崩壊前夜であったそして自分も“消費しまくった”80年代

Nightclubbing: The Birth of Punk Rock in NYC

 Velvet Underground やNew York Dollsの拠点であり、NYパンクロックシーンを生み出したMax’s Kansas Cityのドキュメンタリー。Andy Warhol, Alice Copper,David Bowie,Iggy Pop,Mick Jagger ,Sod Visousを惹きつけ、Clive Davis がBruce SpringsteenやAerosmith と契約した場所であり、Patti Smith、Television、Bl

David Live and 2005 mix/ David Bowie

僕が初めて聴いたBowieの不健康そうなライブ。 こういうスタイルかと思いきや実際ヘロイン中毒でボロボロだったそうです。 近作「Diamond Dogs」のツアーで、当時 彼が傾倒していたメトロポリスやカリガリ博士などドイツ表現主義をモチーフとしたステージセットだったそうですが、このライブの収録地はフィラデルフィア郊外 つまり次作「Young Americans」のリハーサル中であり、その録音を挟んで、再開されたツアーはソウルツアーと呼ばれデコラテイブなステージセットの取り除

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム

 以前 限定公開された作品がやっと一般公開されたので観てきました。 ボウイ財団の膨大なアーカイブへのアクセスを許された監督が2年の歳月をかけてリサーチした後で制作された作品なので、大量の彼のモノローグやインタビューそして未公開映像を年代順編集され彼の“Changes”が描かれます。 大きく分けるとジギースターダスト, LA時代、ベルリン時代、アメリカEMI時代そしてその後が描かれ、それぞれの時代のツアー(Ziggy Stardust ,Diamond Dogs,Stage,S

プリーズ・キル・ミー~アメリカン・パンク・ヒストリー無修正証言集Please Kill Me ~The Uncensored Oral History of Punk

~ この本で取り上げられた楽曲でSpotifyのリストも作ってみました。~ 日本版は、表紙にフィーチャーされたアンディ・ウォホール、ベルベット・アンダーグランドそしてニコの表紙のように、彼らから始まったアメリカ(ニューヨーク)でのパンクの話のような見え方ですが、これはニューヨークから始まり、一時期、ニューヨーク・ドールズのマネージャ―をしていたマルコム・マクラレンにより、イギリスで作られたパンクのお話。 本人やその身近な人たちの語りを組み合わせて、ものすごくリアルで面白く、そ

さよならアメリカ、さよならニッポン ~戦後、日本人はどのようにして独自のポピュラー音楽を成立させたか/マイケル・ボーダッシュ

ずっと読みたかったこの本。絶版でかなり高騰していますが、図書館で探してもらい読むことができました。  はっぴーえんどの楽曲をタイトルに冠した日本への留学経験のあるシカゴ大学近代日本文学准教授による著作で原題を邦訳すると「J Popの地政学的全史」  アメリカの占領が始まった1945年から90年代初頭のポストバブル期までの日本のポピュラー音楽史が、日本(アジア)のペンタトニック・スケール(五音階)を多用するメロディ、敗戦国特有の状況や心情からバブルを頂点とする経済発展と世界から