【感想文】ゴドーを待ちながら/サミュエル・ベケット
『ゴボウを炊きながら』
「ブリッジ」というお笑い用語がある。
「ブリッジ」とは、ショートコント等においてネタとネタの合間に挿入する動作/言葉の事であり、ネタが連続する際、多くの芸人はネタ終わりに「ブリッジ」を用いて次のネタへの橋渡しを行う。
※例:あるある探検隊、ジャンガジャンガ、ヒットエンドラーン、ヒロシです...etc
本書『ゴドーを待ちながら』においても「ブリッジ」を用いて、ネタに区切りをつけようとする試みが見られる。
その説明に際してまずは、本書のブリッジを以下に示す。
<<「だめだよ。」「なぜさ?」「ゴドーを待つんだ。」「ああそうか。」>>白水ブックス,P.17
上記を皮切りに、P.26,P.91,P.113,P.120,P.131,P.138,P.154,P.169,P.178,P.192にも同様のブリッジを挟んでいる。
そして、肝心のネタ(ボケ)についてだが、作中のボケは一見それがボケなのかどうか判定が難しい。その理由は「ツッコミ不在」,「各人物のセリフが誰に向けたものでもない(=独り言に近い)」からである。だが、前述のブリッジを意識することで判定は可能である。すなわち、ブリッジ付近にボケは存在する。
この傾向を踏まえると、本書におけるボケは以下の通りである。
上記の結果から、作中におけるボケの特徴は『ベタを避けた独創的&スタイリッシュなボケ』であると推測できる。しかし、得てしてそれは観客にキザったらしい奴、鼻につく奴と思われかねない為、それを回避すべく作者はブリッジを用いて緩和の効果を狙ったものと思われる(※ブリッジを挟むとベタの感が強調される為)。
本書を不条理・シュールという言葉だけで片付けるのは簡単だが、ブリッジを意識して作品を吟味することで、一流芸人サミュエル・ベケットの巧妙なネタに触れることができるのである。
といったことを考えながら、この内容を博士論文として提出した結果、今年も留年が決定した。
以上
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