【感想文】阿Q正伝/魯迅(Lu Xun)
『いなば趙チュール』
「反面教師」という言葉は、毛沢東が発明したそうだ。
これは「他社の悪い見本を参考にする」という意味で、毛沢東の意図としては、
『組織における失敗は少数の間違った人物に起因しており、その人物を孤立させ、その醜態をさらすことで、その他大勢の構成員は同じ過ちを踏むことなく、本来の正しい状態へと導かれ、結果的に組織は発展する』
という効果を狙っており、いわゆるスケープゴートの考え方に近い。
毛沢東が本書「阿Q正伝」を読んで「反面教師」の発想に至ったのかどうかは不明だが、作者である魯迅が、阿Qの人生を通じて反面教師的に(当時「反面教師」という言葉はなかったにせよ)、当時の中国国民への批判を交えながらも啓蒙に導こうとしている事が分かる。
「造反有理」という言葉は、毛沢東が文化大革命の際に民衆を鼓舞しようとして用いたそうだ。
これは「謀反にこそ正しい道理がある」という意味で、毛沢東を熱烈に支持する青少年を中心とした「紅衛兵(こうえいへい)」は、この「造反有理」をスローガンに掲げ、無差別的な破壊行為により社会を混乱に陥れたが、毛沢東に見切られて多数の犠牲者を出すという悲惨な結末を迎えることになった。
毛沢東が本書「阿Q正伝」を読んで紅衛兵の結成を目論んだかどうかは不明だが、作中で執拗に繰り返される <<カクメイ>> なるものに訳が分からないままに参加して犬死にしてしまう阿Qと「紅衛兵」における行動原理はこの点で共通している。
以上を踏まえると、魯迅は「反面教師」と「造反有理」という様に、客観と主観の対立構造による危険性を本書を通して伝えようとしたのではないだろうか。
いずれにせよ、紅衛兵の大多数は「阿Q正伝」を読まず、反面教師とせず、<<ゾーハンユーリ>> と叫びながら突撃していったのであろうと私は思う。
といったことを考えながら、紅梅の酌で飲んでいたところ、突如、鬼の形相をした見知らぬ男が座敷に乗り込んで来て、私に向かって「何やってんだテメェ、紅梅の間夫はこのオレなんだよ」と吐かすので「関係ねぇぶっ殺す!」と激昂した私は傍らの長脇差を掴んだはずが、それは長脇差ではなく「クイックルワイパー」だったため困惑していたら、その隙を突かれ私は男にメッタ刺しにされた。
以上
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