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【感想文】斜陽/太宰治

『放尿に学ぶ処世術のご紹介』

先般、東京五輪選手の金メダルを某市長が噛んだことにより、世間からの批判が殺到しているという報道を目にした。

とはいえ、私は便乗して市長を批判するつもりは一切無い。

今回私が主張したいのは「あの時どうすれば他人の金メダルを噛んでも許されたのか」「批判されない噛み方はあったのか」といった前向きな解決策である。
(単純にメダルを噛まなきゃいいだけじゃん、と異を唱える者があるかもしらぬがそれは野暮というものであり、こちとら江戸っ子につき無粋な意見はこの際無視して、市長はメダルを必ず噛むという前提に立って本問題を考えることにする。それは私が粋だから。)

それでは解決策の説明に際し本書『斜陽』を用いて、作中序盤における「お母さま放尿のお戯れ」の一幕を以下に引用する。

<<私はお母さまと二人でお池の端のあずまやで、お月見をして、狐の嫁入りと鼠の嫁入りとは、お嫁のお支度がどうちがうか、など笑いながら話合っているうちに、お母さまは、つとお立ちになって、あずまやの傍の萩のしげみの奥へおはいりになり、それから、萩の白い花のあいだから、もっとあざやかに白いお顔をお出しになって、少し笑って、「かず子や、お母さまがいま何をなさっているか、あててごらん」とおっしゃった。「お花を折っていらっしゃる」と申し上げたら、小さい声を挙げてお笑いになり、「おしっこよ」とおっしゃった。ちっともしゃがんでいらっしゃらないのには驚いたが、けれども、私などにはとても真似られない、しんから可愛らしい感じがあった。>>

上記において、母の野外放尿に下品さは感じられず、かず子も言うように <<可愛らしい>> とさえいえる。それは <<おしっこよ>> という幼稚な語句、および母に対する尊敬/謙譲表記による効果なのかもしれぬが、この他にも、冒頭の母の食事シーンでは正式礼法ではないにせよ <<とても可愛いらしく、それこそほんものみたいに見える>> と貴婦人然としている。これらを考えるに、野外放尿しても批判されない理由は、母が無邪気という要素に加えて "自然&素直な態度" という保証の元になされた行為のためである。

このことから、前述の市長メダル噛みにおける解決策は容易に導くことができる。

結論、市長はお母さまに倣えばよく、「他人のメダルを噛んでも許される "自然&素直な態度" の市長」を日頃からアピールしておけば今後メダルを噛んでも世間から非難を浴びることはこれ、一切、もう、絶対に、ない。

で、具体的にどうすればいいのかというと、えーまあそうさな、「市長の主食はメダル」ってことにすればよろしい。日本人の主食はコメである。人がコメを食べて非難される謂(いわれ)はない。極めて自然な行為ではないか。なので、彼もそれに倣ってメダルが主食ってことにして日々メダルを食べる習慣をつければいい。母が放尿という生理現象を素直に実行したのと同様に、彼はメダルを食べないと栄養失調で死ぬ設定だから素直に食えばいいだけさ。『まーたメダル齧ってるよあの人ァ、しょうがない野郎だねぇどうも。でも、そんな自然&素直な市長ってば可愛くてサイコー』ってな具合で世間も笑って許してくれる筈なので今後もバチクソに噛んで噛んで噛みまくったらいいと思う。

といったことを考えながら、この内容をTwitterに投稿したところ、もの凄い数の殺害予告が来た。

以上

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