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【感想文】マノン・レスコー/アベ・プレヴォー

『心の操理論』

シュヴァリエの狂気めいた持論に隠れがちだが、マノンも負けず劣らずイカれた持論を展開している。
そこで今回、マノンによる「心のみさお理論」を説明することにする。

まず、この理論の発端は作中中盤における、

マノンがG…M…氏の息子から大金をゲットしたものの、彼がマノンをお姫様扱いしてくれることに歓喜した彼女は、シュヴァリエとの約束『金をゲットしたらシュヴァリエの元に帰る』をあっさりと破り、G…M…の元に居続けたがシュヴァリエへの後ろめたさがあるため、その代償として彼に別の美女をあてがう

という行動に起因する。この場面でマノンは、シュヴァリエに別の美女をあてがえばセーフであろう、彼も許してくれるであろう、と企んだ(なお、この美女はG…M…の恋人である)。そしてこの企みがシュヴァリエにバレてしまい彼に激怒されるが、これに対するマノンの主張が面白い。で、それは以下。

「私は自分の行状についても、謀(はかりごと)についても、ひと言だってお匿ししてはおりません。その少女(私注:美女を指す)がやって参りました。私は可愛い子だと思いました。そして、私がいなくともあなたはさびしい思いをなさらないと信じたものですから、暫くの間でも彼女があなたの退屈を紛らすことができるように、私は心から願いました。なぜかと申しますと私があなたにお願いしますのは心の操なんですから。―以下省略― 

上記から分かるのは、シュヴァリエが <<心の操>> さえ保ってくれれば別の美女と関係を持ってもマノン的には全然オッケーである、という理屈である。彼女が発明したこの「心の操理論」は到底第三者が理解できる代物ではないが、これぞマノンにおける最大の特徴であり、作中を振り返れば、G…M…だけでなく、B…氏とマノンの間における金にまつわる関係はすべて「心の操」という保証の元に行われたといってよい。というのも、彼女は真正の快楽主義(=性的な意味合いではなく楽しく遊んで暮らすこと)であり、その快楽を実現するには常にある程度の金を要するため、シュヴァリエ以外の男の愛も受け入れた。だがそれは彼女にとって何の問題は無い。繰り返すが、マノンはシュヴァリエに「心の操」を立て通しているのだから。

といったことを考えながら、我々もマノンの「心の操理論」に従って明日から不純異性交遊を楽しんだらいいと思う。

以上

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