フェミニズムの勉強を始めたい方へ、私からの推し本を。(中級編)
私は、「フェミニズム」勉強したい!!けど、どこから手をつけていいのかよくわからん、、、と、当初とても困りました。そこで、フェミニズムに興味を持ってくれた人のお役に立てればな〜と思い、この推し本シリーズを書くことにしました!(最後にこれまでのシリーズを載せています。そちらから!という人は、目次から飛んでください)
では、今回は「中級編」と題して、フェミニズムについて学べる本の中でも以前の入門編から、もう少しフェミニズム色の強い本をいくつか紹介したいと思います。(これは初級では?というご意見等は、いつでもウェルカムです!!)
私たちにはことばが必要だーフェミニストは黙らないー
フェミニストを名乗る方々から、絶対に外せない!!そう、太鼓判を押してもらえる一冊でしょう!!
「私/僕は、フェミニストかもしれない!」と思えるようになるとぶつかる壁が、セクシスト(性差別主義者)たちです。
セクシストと対話するには、かなりのエネルギーを消耗します。
心も体も元気じゃないとやってられません。
この本では、自分がフェミニストなのかセクシストなのか考えるきっかけを与えてくれ、さらに【実践編】では、セクシストたちからの心無い言葉にどう返せばいいのか、どんな態度を取ればいいのかを教えてくれます。
私がそうであったように、この本に出会ってフェミニストと名乗る勇気のでた人も多いのではないでしょうか。だからこそ、中級編としてすでにフェミニズムに興味を持っている人に、でも、自分はフェミニストなんだろうか?と迷いのある人に読んでもらいたい本です。
説教したがる男たち
この記事を読んでくださっている方が、どんな属性の人なのか私が知ることはできません。ただ、一つわかること。それは、みんな誰しも自分より年上の男性から「君のためを思って、、、」とご丁寧に何かご教授いただいた経験があるということです。
父親がまさにそうでした。申し訳ないけれど、偏差値40前後の工業化高校に数学0点で入学した父親よりは、数学やその他の勉強も得意だった。それなのに、小さい頃から口をひらけば「知らないようだから教えてあげるけど、、、、」とただ自分がやっと手に入れた知識をひけらかすために、どれだけ私の時間が費やされてきたか、、、。考えただけでもぞっとします、、、。
でも、これって何故男性に多い現象なんでしょうか?筆者の体験談や、データを引き合いに出しながら、その「何故?」が綴られるエッセイです。
男性が、女性を見下す、あるいは偉そうに、何かを解説することを「マンスプレイニング」と呼ぶきっかけになった本でもあります。
バッド・フェミニスト
こちらの本もエッセイになります。
「バッド・フェミニスト」どういう意味でしょうか?それは、筆者が感じてきた「フェミニズムを支持するけど、女性蔑視な表現が含まれたラップも大好き!」という矛盾にも満ちた自分を、「バッド・フェミニスト」と称したのです。きっと、そんな筆者に共感する読者も多いことだろうと思います。そして、この本はそんな私たちのあり方を「Welcome!!」と肯定してくれます。
今の日本の話題で言えば、オタクとフェミニストの二項対立なんかが近いでしょうか。でも、実際、私自身がアニメも漫画も好きなオタクだけどフェミニストなんですよね。もちろん、フェミニストの私が「ギブ!!」と声をあげてしまう作品もあるけど、「う〜ん、イエローカードだな〜」なんて思いながら、ついついストーリーが気になって観てしまう作品、読んでしまう作品はたくさんあります。
Twitterの「オタクvsフェミニスト」の対立を見ていると、オタクでフェミニストなのはそんなにおかしいことなんだろうか?と思ってしまうけど、本書を読めば、「別にそれっておかしな話じゃないよね?!」と思えます。
「フェミニズムを支持するけど、、、フェミニストと名乗るほどかな、、、」と迷ってる方にも、ぜひ読んでいただきたいです!
ボーイズ 男の子はなぜ「男らしく」育つのか
『第二の性』でシモーヌ・ド・ボーヴォワールは「人は女に生まれるのではない、女になるのだ。」と書きました。一度くらいは、耳にしたことのある人が多いのではないかと思います。
では、男性は?男性は、男性として生まれるのでしょうか?
男性も男性に生まれるのではなく、男性になるのではないでしょうか?
最近では、フェミニストであることが「イケてる」証と捉えられる機会も多くなりました。
先人のフェミニストのおかげで、こうしたフェミニズムの流れが作られ、女性の生きづらさに声をあげる人が増えてきました。
では、男性はどうなんでしょうか?男性は、確かに女性よりも高い下駄を履いてきた人が多いかもしれないし、そういう下駄に気づいてすらもいない人も大勢いるでしょう。それでも、男性には男性の生きづらさがあるはずです。そして、「そういう声も拾って、みんなで生きやすい社会を目指すことがフェミニズムではないだろうか!」と、この本は訴えかけてきます。
女性学/男性学(humanities)
筆者の千田有紀さんが、高校生にも十分に理解できるようにと「です」「ます」調で、終始、丁寧かつ専門的にまとめられた一冊です。
本書が立ち入る問題は、フランス革命の人権宣言の話から、現代の問題まで幅広く網羅されています。フェミニズムにある程度興味を持って、多少なりとも勉強したことのある人には入門書として、まだ興味を持ったばかりな人には少し専門的な入門書としてぴったりの本だと思います。
p.s. 筆者は、本書の中で女性について問い直すことは、そのまま男性を問い直すことだと仰っています。ある程度、そう書かれてあることを頭の隅に置いて読むと男性学についても触れられた本だと感じることができるかと思います。しかし、より本格的に男性学について知りたい人には、物足りないところがあるかもしれません。
ぼそぼそ声のフェミニズム
すこーし立ち読みした程度なので、紹介文が甘くなってしまいますが、近年の日本のフェミニズムの論調、風潮を理解する上で良書だと感じたので、引用をしながら紹介させてください。
就活・婚活、非正規雇用、貧困、ハラスメント、#MeToo……
現在の社会が見ないようにしてきた問題を、さらには、それと闘うはずのフェミニズム理論や社会運動からすらこぼれ落ちてきたものを拾い集めて、つぶやき続ける――〈私〉が、そして〈あなた〉が「なかったこと」にされないために。
「弱さ」と共にある、これからのフェミニズムのかたち。(Amazonより)
学校になじめなかった。かけっこはいつもビリ。漢字も計算も苦手。〈現代だったら、「発達障害」などの名前がつけられ「支援」の対象になっていたかもしれない。それでも、私は自分をフェミニストだ、とどこかで思い続けてきた〉
これまで読んだ本の中でも一、二を争う「覇気のないフェミニスト宣言の書」である。類書の多くはもっとハキハキしているし、わざわざフェミニスト宣言をする人自体少ないし。
〈インターネットを見ていると、フェミニズム的な発言をしているのに、「私はフェミニストではない」とか、「勉強をしていないからフェミニストと言っていいかわからない」という発言が多くある〉
ですよね、それが現状。フェミニズムはいつか大学で学ぶ学問になった(と思われている)。栗田隆子はそこに風穴を開ける。就活や婚活をめぐる制度にいじいじこだわり、女性の貧困の実態をぼそぼそ語り、ときにふてくされ、たまに怒ってテーブルをたたく。
ハキハキ系の女性は上を見てガラスの天井に怒る。栗田隆子は床を見て、働くのが怖いとつぶやく。どこにも出口のない本である。しかしその分、ラジカルな問いを含んでいる。覇気がない? だから何? いじいじ、ぼそぼそからすべてははじまるのだ。(好書好日 書評より)
彼女は頭が悪いから
本書は、2016年に東大生5人がおこした強制わいせつ事件をモチーフにした小説です。
結構描写が克明で、読んでて「しんどいな」と思う所も多かったので、PTSDやフラッシュバックが危惧される方には、あんまりオススメしません。それから、自分の中のミサンドリー(男性蔑視)な感情とうまく距離を取れない方にもオススメできないかな、、、と思います。
ただ、近年高学歴男子学生による性的暴行事件が報道されながらも、お咎めなし!となるケースが多いです。そして、なぜか被害者である女性がSNSを中心に、バッシングを受けるというセカンドレイプが横行しています。特に、TOKIOの山口さんの事件では、このセカンドレイプがかなり目につきました。
IQは果たして、心の知能指数と比例するのでしょうか?
そして、セカンドレイプやホモソーシャルの問題を浮き彫りにしてくる本書は、多くの人が口にするように後味は最悪です。しかし、読者によって抱く感想が大きく違ってくるという点で、多くの人に読んで評価してもらいたい本ではないでしょうか。
壊れる男たちーセクハラはなぜ繰り返されるのかー
結構前に読んだ本なので、記憶が曖昧なところがあるのはご了承ください。
筆者は、行政のセクシャルハラスメントの相談員として、多くの事例に関わってこられた方です。行政という、中立の立場から見たセクハラ問題の実態は、帯にもあるように、ほとんどの加害者が”無自覚”だということ。
「男と女の関係だから」「夜に2人でご飯食べるのを了承したんですよ?」「仕事をあげたんだから」これが、性的な行為の同意になると思ってることに読んでいてゾッとしました。2006年の本なので、「流石に、最近ではここまで露骨なセクハラ案件はないだろう〜!!」と思ってたところに日本でも#MeToo 運動が始まったので、「全然そんなことなかったんや、、、」と身の毛もよだつ気持ちになったのが印象深いです。
セクハラに関して、多くの企業が講習やe-learningを実施するなど、対策を講じてますが、きっとセクハラは今もいろんなところに温床があるのでしょう。その一つが、近年明るみになりだした就活セクハラだと思います。
「セクハラはどうして生じてしまうのか。」を学べる本です。
世界の半分、女子アクティビストになる
これは、これから自分が問題だと思うことに声をあげて、活動をしていきたい!そう願う人へ向けられた本。
グッズの作り方、仲間の集め方、資金調達の方法など、アクティビストになるために必要なあらゆることを、わかりやすく、パワフルな文体で説明してくれています。
対象年齢はヤングアダルト向けだそうなのですが、あらゆる世代のあらゆる女性が活動の一歩を踏み出す勇気を与えてくれる本だと感じました。
小さなコミュニティーを作ってみたい人、今最前線で活躍してくれている人に応援の声を届けたい人、身の回りのちょっとしたことも問題では?と感じ、この疑問をどうやって解消すればいいのかわからないと感じる人、そんな人のお役に立てるのではと思います。
本シリーズの過去noteと紹介本
・『82年生まれ、キム・ジヨン』
・『三つ編み』
・『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』
・『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』
・『世界を変えた100人の女の子の話』
・『Black Box』
・『ウーマン・イン・バトル』
・『スカートの下の劇場』
・『禁断の果実 女性の身体と性のタブー』
・『日本のフェミニズム』
・『何を怖れる――フェミニズムを生きた女たち-』