私は人間よ。
初子は猛烈な腹痛に襲われてトイレに駆け込んだ。
激痛で額からは汗が噴き出てくる。意識も朦朧としている。そんな中、最後の力を振り絞って力んだら、ドボンって音がして何かが便器に落ちた。
何かと思って恐る恐る振り返ったら、ゴルフボールが沈んでいた。
初子はギョッとしたが、とある考えが浮かんだ。
「今度のゴルフコンペで後輩にこのボール使わせたら面白いわよね」
いたずらっ子のような笑みを浮かべながら、そのボールを便器から取り出した。
ゴルフ当日、初子はピヨピヨ鳴るアラームに叩き起こされた。
「もうこんな時間なの。昨日調子に乗って歌いすぎたわね」
昨夜の行いを後悔しながら寝ぼけ眼で支度を開始しようとしたら、部屋の隅に見たことも無い奴が立っていた。肌も黄色で不気味な奴だ。
初子は恐怖で白目を剥いてしまいそうになった。思わず「こけえ」と叫んで逃げるように部屋から出て母親に助けを求めた。
「ママ、部屋に変な奴がいる!あれ誰なの?」
母親は呆れ顔で嘆いた。
「あなた、まだ自分のこと人間だと思っているのね。いいかげんにして。あなたは正真正銘、鶏よ」
いやいやこんな美形な鶏がいますかって。失礼しちゃうわよね。
終わり
※これは、僕が密かに憧れている小牧さんのフォロワー2000人達成記念のお祭り企画に寄せて書いた物語です。素敵な企画をありがとうございます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。