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甘えは全部捨てた

長い夜だった。

球場を後にしたのが23時。それでも、ぼくは渋谷までの道のりを歩いた。試合の振り返りはせずに。というのはちょっとだけウソだ。この試合はミスが多く控えめに言ってひどい試合だった。見る人が見ればそう思う、どちらのファンもフラストレーションがたまるそんな試合。

銀杏並木にさしかかったあたりでふと思った。

これって、ぼくらも同じなんじゃ?

「ぼくら」というのはwebライターを指している。有名媒体に寄稿してもそれが駄文であったら、媒体のファンは減り自身は戦力外。これでハッとする。規模が違えどプロ野球と一緒だ。プロ野球という世界でミスが続くと野球、球団のファンは減り、自身はクビになる。

プロ野球選手だって、ぼくら多くのwebライターと同じ個人事業主だ。職種、世界、報酬は違うけれども根っこは一緒。

そんなことを考えながら、外苑前のセブンでビールを仕込む。人がまばらになった青山通りを進んでいく。いまや、野球ではなく陸上が最も有名になった青学の向かい側をゆっくりと。風は向かい風。月は見えない。

宮益坂にさしかかるあたりで、ビールを飲み干し空き缶をゴミ箱へ捨てる。同時にちっぽけだけど、たくさんあった想いを全部捨てた。心のどこかにいつも潜んでいる甘えさえも。

(結果を出してナンボの世界。ぼくはもう少しやらねばいけないようだ。あなたやあなたに認めてもらうにはこのままじゃいけない。)

そう思いなおし、人で溢れる渋谷駅へと歩き出した。

7月25日:ヤクルト(9-8)中日

こちらサポートにコメントをつけられるようになっていたのですね。サポートを頂いた暁には歌集なりエッセイを購入しレビューさせて頂きます。