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やるせない気持ちは引きずらない

7月7日、七夕の夜。ぼくは神宮球場ライトスタンドで勝利を見届けるはずだった。9回表の時点で8-3と5点リード。高校野球ならいざ知らず、プロ野球の試合で1回に5点差をひっくり返されることは、そう多くない。

しかし、そう多くはないということが、起こってしまう。それが現実であり今年のヤクルトだ。例えるなら期日まで余裕を持って原稿を納品したものの、修正が繰り返され、最終的にはボツにされた。なんともやるせない。あきれてものも言えない。そんな心境だ。

この日は、6月25日以来となる神宮球場での試合だった。つかの間の休息でもあった11日間で大阪へ行き、大分へ行き多くの非日常を体験してきた。その夢のような時間から一気に日常へと連れ戻される。

(あぁ、やっぱり神宮球場に来ると日常感を取り戻せるなぁ)

なんて強がりすら出てこない。そんな夜だった。

やるせない気分を癒やすために、ぼくの地元のヤクルトファンにLINEで連絡。事情を察した彼女は駅まで出てきてくれ、駅前のベンチで2時間ほど談笑。もちろん缶ビール2本はぼくのおごりだ。いい友達を持った。

それから一夜明けた7月8日。すなわち今日だ。(この原稿が公開される頃には昨日だけれども)

ひどい負け方をしたにも関わらず、ぼくはいつも通りに神宮球場へ向かう。これが典型的な野球好きなのだ。

「昨日の負けを引きずらない」贔屓チームを作る上での重要な要素でもある。

これは、ライターとしても生かされており、理不尽な指摘等を受けてもぼくは受け流すし、へこまない。引きずってはいけないのだ。

いつも通り、銀座線の外苑前駅で降り、多くの人が向かう正面の改札とは逆へ向かう。外苑前駅には表参道側の改札と銀杏並木側の改札2つある。ぼくは、少しだけ球場まで遠いけれども銀杏並木を通るために、多くのファンと違う改札を使っている。

改札を出て少しのところにある、駅ビル内のファミリーマートでファミチキとたまごサンド、そしてビールを2本購入。

ぼくは、キハチ本店やSHAKE SHACKを横目で見ながら銀杏並木を歩き目的地を目指す。この日は広島戦ということで赤いユニフォームを着たいわゆる「カープ女子」で道は溢れている。17時過ぎの外苑前は暑くはないけれども涼しくもない。日差しはまだ残っており、ビールがちょうど飲みやすい環境でもある。もとより、ビールは1本飲みながら球場に向かっている。

それから4時間半が経ち、ぼくは見どころがなかったと言っても決して過言ではない試合にうなだれながら、銀杏並木を反対方向に向かって歩いている。まさに完敗。何も言うことはあるまい。

強いてあげるなら「この改行はいいですね」くらいしか、褒めるところのない原稿を読まされている気分に近い。まぁ、読んだことはないのだけれども。

帰ったら仕事をしなければいけない現実がある。でも、ぼくは外苑前から渋谷まで歩くことを選択した。色々なことを考えたかったから。決して、ヤクルトのことだけではない。プロ野球全体のことも考えたし、メジャーリーグのことも考えていた。ちょっとだけ、高校野球についても考えた。

ぼくは歩き続け表参道を通り越し今では駅伝が最も有名となった青学も越え、空になりかけのビールを口にしながら、宮益坂を下っている最中にふと思いついた。

(やるせない気持ちは書き留めておこう)

そんなことから、野球観戦した日のことをこうやって文章にすることに決めた。基本的に試合の細かい描写はかかない。知りたい人はスポーツ新聞のサイトを見て欲しい。もしくはリプライを飛ばして欲しい。ここでは、思ったことや感じたことをサラッと書いていくつもりだ。野球好きではない方も読めるように。更新は翌日の午前中までを目標にする。

いろいろ思うことはあるのだけれども、明日も神宮球場へぼくはむかう。大好きな銀杏並木を通って。やるせない気持ちはひきずらないよ、きっと。

7月8日(土)ヤクルト(2-8)広島

こちらサポートにコメントをつけられるようになっていたのですね。サポートを頂いた暁には歌集なりエッセイを購入しレビューさせて頂きます。