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時間と瞬間という不思議

昨日は、国立国際美術館へ鷹野隆大さんの「毎日写真1999 - 2021」を見に行ってきた。

20年間毎日欠かさず撮り続けた写真、定点観測的に同じ場所で撮り続けた東京タワー、様々なものの影ばかり撮った写真などなど……

テーマやコンセプトから離れて、無目的に撮ってみたいと思っていた。そしてそれが集まったときに何が見えてくるのか、それを知りたいと思った。撮りながら考え、出来た写真を見てまた考えるということを飽きもせず繰り返し、いまや撮ったコマ数は10万枚になろうとしている。
指先をわずかに動かすだけで一瞬にして像を得られるこの奇妙な装置が、撮影者の無意識を写し出す鏡のように作用することは案外知られていない。
ー鷹野隆大  パンフレットより抜粋

写真と言われると、美しい写真や目を見張る写真に意識がいきがちなのだけど、鷹野さんのはどれも妙に生々しく、実験的な意思を感じられ、鷹野さんにとっての写真は時間と瞬間なのだと感じる。

そしてその時間と瞬間の中には、無数の過去と未来が付随している……という、そもそも普段あたりまえに受け入れている「時間」というものの不思議について考えずにはいられない。

鑑賞しているうちにだんだんと、この時間ここにいることが不思議になり、同じ場所に数時間後立っている誰かを思い、そして、同じ時間、別の場所にもうひとりの自分がいるところまで想像してしまった。

今とても定点観測というものに興味があって、多分オースターを読んでいるせいもあるし、そういう変質じみた実験的なことに昔から興味があるのは確かで、そんなことをぐるぐる考えていた。


そして帰ると、ひとりでレコードと本を買いに出かけていたというぴー太がうれしそうに、買ったものを紹介をしてくれる時間があり ( これは恒例 ) 目をつぶらさせられて、はい!とひとつずつ紹介してくるので、おー!とか、それわたしも読みたかった!とかそういう反応をして、褒め称えるあそびが繰り広げられた。

買ってきたものの中に、「東京のいま、東京のいつか。まだ誰も知らない東京ー」というテーマで20人の漫画家が書き下ろした展示『もしも東京』の図録があったので、心の底から、でかした!と褒め称え、しかも、CasaBRUTUSの藤子・F・不二雄特集も買ってきていたので、すばらしい!とさらに褒める。ぴー太が得意げにしているので、いつも大袈裟めに褒めることにする。

夜はサムギョプサルをして、サンチュやにんにく白ネギなどをむしゃむしゃ食べて、ビールを飲んで、良い気分ではやめに寝た。

そして今日は実はひとりだけ有給で、家でまったりしているので、漫画やらを先に読めるわけで、やはり、でかした!と思いながら、勝手に読む。

『もしも東京』はブルージャイアントの石塚真一さんにはじまり、浅野いにおさんや松本大洋さんなどなど20名の漫画家プラス、執筆陣も加えられた豪華な一冊……大きさにまず興奮し、そして中身のすばらしさにまた興奮する。『機動戦士ガンダムサンダーボルト』の太田垣さんの自分を主人公にした漫画も大変すばらしかったし、『町でうわさの天狗の子』の岩本ナオさん、『アオハライド』の咲坂さんの意外な展開にはぶるっとした。

失われた2020年、ほんとうなら世界の中心としてもっと湧くはずだった東京。
あれから1年たち、2年経とうとしているのだな。また、時間について考える。

そして、『もしも東京』の展示にはもちろん行けなかったけど、記念ムービーがまた良くて、よかったら見てみてね。

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