いかなるときにラーメンを食べるか

ラーメンを食べるのはどんな日かというと、
うまくいかなかった日である。
人間関係が、仕事が、生活が、
うまくいかなくて最悪の時、
決まった店にラーメンをたぐりにいく。

私は気分と体調のムラが恐ろしくある。
お腹を壊しやすければブレインフォグも起こしやすく、体温調節がうまくいかなくて一歩歩くごとに震えているかと思えば急にハイになりデカい声でなんらかの説明をずっとしている、といった風である。疲れてると頭の中でずっと知らない言語のギャグ聞かされ続けたりするしな。
どれにしても私生活にめちゃくちゃ支障が出る。恐ろしい量の高難易度業務を他人の半分の時間でやるときもあれば、簡単な言葉も聞き取れず、聞き返すまで頭が回らなくて全てに「はい」と答えて取り返しがつかなくなる日もある。
通院して服薬して、生活の全てをアラーム管理し、なるべく選択に割くリソースを減らすべく通勤時は完全に決まった服装しかしないのに、これなんだぜ。

今日は、後者であった。
こういう時は本当にひどい。なにせ歩いているだけでしばしば立ち止まって座らなくてはならないほどの集中力のなさと疲労感なので、とても仕事ができないのはわかっている。
自分でやばいときはなんとなく自覚があり、これは仕事をできる頭ではないぞと思うのだが、たまたま前回の出勤日に体調不良があって休んでしまっていて、2連続で休むわけにはさすがにいかない。

そして、さだめし様々失敗した。座っている間意識を保つだけでいっぱいいっぱい、発覚した大量のケアレスミスと、まだ発覚していないがいずれ発覚するであろう私自身も知らないミス。
なんでまだ私か社会のどっちかが爆発四散してないんだろう。マジで明日が来てほしくない。

こういう時はラーメンにかぎる。

地元のラーメン屋は相当のこってり系で味が濃く、店に入ると獣の臭いが立ち込めている。
これを啜り込む。
家で家族が夕飯を作っているのに啜り込む。
これ以上仕事中に体調を崩したくなくて摂らなかった昼食のかわりに、自己嫌悪と自己憐憫と、おいしいラーメンをこんなことで消費し、美味しい夕飯を美味しく食べられる胃袋を失う罪悪感とともに噛み砕く。
お店の人がそっときいてきた。
「今日は会員カードを持っている人に味玉を無料でおつけできますが…」
知っている。書いてある。
けれど、カードとやらを見たことはない。
私は15年越しにきいてみた。
「カードってどうしたらもらえるんですか?」
お店の人はほほえんだ。
「仰ってくだされば」
なんだ。そうだよな。
きけばいいんだよな。
きく頭がない日しか来てないからわかんないんだわ、こういうことが。
「……じゃあ、……カードください」
お店の人は衆生を救う菩薩のように、赤いスタンプが捺された会員カードを差し出した。

あじたまは別料金だった。
カード今日作った人でさいしょにだしてないから。

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