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空想お散歩紀行 銀幕の中は別世界

今、映画界はかつての栄光を取り戻そうとしていた。
いつでもどこでも、サブスクで映画が好き放題見ることができる時代が到来し、わざわざ映画館まで足を運ぼうという人は年々少なくなるばかりだった。
だが今、映画館の大スクリーンで観ることが再びブームとなり、休日ともなると映画館に行列ができることも決して珍しくなくなった。
しかし、全てが良いことなどこの世に一つとしてない。今回の映画ブームの再到来にも影は存在した。
なぜ今、映画が注目し直されているのか。それは、デジタルヒューマンが一番の理由だ。
AIやコンピュータグラフィックスを利用して、既にこの世にいない、過去の俳優や女優を現代に再現するのが、デジタルヒューマンだ。
過去の作品からその俳優たちの声や仕草を学習し、限りなく本物に近く、限りなく自然にスクリーンの中で動く。
過去の名優たちの再登場は、元よりの映画ファンを喜ばせた。そして、若い世代も受けが良かった。なぜなら、今の若者は可能な限り自分の時間とお金を損したくないという傾向が強い。
そんな彼らに、既に実力を評価され、名声を手にした俳優たちに安心感を持ったからだ。
さらに、既に亡くなっている彼らはこれからスキャンダルを起こすことがない。何かがきっかけで炎上を起こし、作品に余計な不純物を混ぜることがない。
だからこそ、今を生きる演技の世界の住人たちは苦しいことになっている。
かつての名優たち。それも生まれた国、生きた時代が違う、生前共演など一度もしたことのない俳優や女優たちが、現代では簡単に同じスクリーンの中に現れているのだ。敵として強すぎる。
このことに絶望し、夢を諦めていった者たちも少なくない。
今年また新作映画が発表された。公開は来年の春予定。主演はもちろんかつての映画スター。しかもその人物は若くして亡くなったが、今回はもし生きていたらという設定で、歳を取った姿で出演するという。
話題は沸騰し、今から期待は膨れ上がるが、映画の未来がどうなっていくのか、それはまだ分からない。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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