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空想お散歩紀行 昨日までのことは信じられる?

今日で14日目。いやそれすらも本当かどうか分からない。
今日は俺の番だった。
今いるのはどこにあるのか分からない謎の施設。
窓は無いから外の様子は分からないが、テレビはあるので情報は見ることができる。と言っても分かるのは番組からここが国内であるということくらい。今の自分が置かれた状況はそこからは得られない。
そして重要なのは今ここには俺の他に6人の人間がいること。性別も年齢もバラバラで特に共通点があるようには見えない。
気が付いたら俺たちはここに集められていた。
そしてこの施設に来てからおよそ14日間、彼らと共同生活をしている。
幸いなのかどうか分からないが、この施設は外に出られない代わりに、それぞれ個室が用意されているし、風呂やトイレなどの設備、食料や水なども完璧に揃えられているので、暮らすだけなら何の問題も無い。
問題なのは、ここで起こっている謎の現象だ。
ここでは一日が終わり皆が眠りにつくと、次の日、前日までの記憶が無くなる。
ただ7人の内一人だけ前日の記憶を引き継ぐ。
今日はそれが俺だったわけだ。
ただ俺が今持っている情報も、一昨日の記憶を引き継いだマオという女から教えてもらったものだ。
そのマオも今日はもう昨日のことは覚えていない。
なぜこんなことが起きているのか、それは分からないが今のところ俺たちは協力して生活を送っているらしい。
互いに同じ境遇に突然放り込まれた者どうしだ。仲間意識というものが意外と芽生えているのかもしれない。
だが俺は嫌な予感を拭うことができなかった。
俺たちをこんな状況に落としたやつが必ずいる。
こんなことをするやつが仲良しこよしの共同生活を見たがっているとは到底思えない。
何かあるはずだ。だとするならば、今の俺がするべきことは、この集団の中で少しでも優位な立場を作っておくこと。
昨日の記憶を引き継いでいる状態で、その事実と嘘を織り交ぜながら他のやつらに情報を教えることでアドバンテージを得る。
だが問題もある。他のやつらも同じことを考えている可能性が高いということだ。昨日俺が教えてもらった情報もそれが真実である保証はどこにもない。
それとおそらく明日になれば、今日の俺の記憶は消える。そうなると自分が他のやつらに与えた情報の真偽は分からなくなる。自分で出した偽りの情報に自分が振り回される可能性も出てくるわけだ。
このわけの分からないゲームの行く先はまったく分からない。
それでも今できることを、少しでもこの先生き残っていく可能性の高い道を選ばなければいけない。
昨日までの伝聞の情報と今の状況を組み合わせながら、絶対に俺はここを抜け出してみせる。

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https://note.com/tale_laboratory/m/mc460187eedb5

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