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愛農かまど火入式&かまどパーティー報告)2023年1月5日(木)大阪府能勢町の「懐かしさの杜」にて賑やかに開催いたしました!

昨年2022年11月26日(土)~28日(月)の3日間で、愛農かまど作りワークショップをさせていただいた場所に再訪、再集合で楽しい時間となりました。

0.会場と参加者

会場は「懐かしさの杜」です。https://natsumori.jp/
築400年の古民家を改修して、宿泊や喫茶が営業されています。施設内に併設してフランス料理店もございます。
茅葺の古民家には、薪ストーブや「愛農かまど」、井戸水のお風呂もあります。

今回は、兵庫県や大阪府などから参加者(大人10人、子ども2人)が集まりました。

11月のワークショップ参加者や伝承者を志している仲間、ご家族や友人、これから愛農かまどを作りたいと思っている方など、初めましても再会も隔たりなく和気あいあいとあっという間の数時間でした。


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1.愛農かまどについて

1-1.愛農かまどとは?

第二次世界大戦の直後から昭和 30 年代は、森林が荒廃し、残り17年で薪が枯渇すると言われ、日々の調理さえ危ぶまれる状況でした。その際、「全国愛農会」が農村生活改善のために開発し広めました。
https://ainou.or.jp/

料理研究家が考案した、燃焼効率の良い構造が大きな特徴です。
ひとつひとつの熱源や排熱さえも無駄なく流れに載せ増幅させながら、最大限に活かすことができます。
そのため今まで使われず森に放置されていたような、少量の細枝で煮炊きができます。
薪ストーブで使うような太い薪は下段のオーブン利用時のみ、数本が必要な程度です。
上段に羽釜を2つ置くことが可能です。片方は焚口があり、3 升の米が約 30 分で炊きあがります。もう片方は煙突へ向かう手前の余熱を利用した弱火調理ができます。お湯を沸かせるので、餅つきや味噌作りに重宝します。下段のオーブンでは肉・魚・野菜だけでなくパンやピザやシュークリームなどを焼くことができます。
国内外の様々な伝統料理、創作料理、アウトドア料理などをお試しください。




私たちは「愛農かまど」の優れた機能性だけではなく、精神性を伝承し、
私たちが共に生きていくことの意味や幸せを分かち合いたいと思っています。

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1-2.自力制作するには?


設置場所の企画検討、かまど材料や制作道具の準備など、全てをご自身で行うことができます。
※愛農会から制作に必需品の木型と設計図の貸し出しを受けられます。
木型貸出料:1 基 1 回につき 30,000 円 (複製不可)
設計図貸出料:1 基 1 回につき 20,000 円 (コピー不可)
(1ヶ月以内に返却。別途往復送料が必要です。)
そのほか詳細は (公益社団法人)全国愛農会 事務局に、ご相談ください。
電話番号:0595-52-0108(8:30-17:00)

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1-3.伝承者とは?


愛農かまどの制作技術だけではなく、開発の経緯や最新の知見、
精神性を共に育み伝えていく伴走者です。

事前の相談から、現地へ赴いての制作支援やワークショップ講師などが可能です。
伝承者派遣のご依頼は愛農会に連絡して紹介を受けるか、
ご自身で伝承者に直接連絡をとることになっています。

【連絡先】
大西 琢也   yajin@ugaku.com
略歴>>> https://note.com/takuyaonishi/n/n2eac871116a0

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2.今回の祭典について

会場である「懐かしさの杜」の近くにある野間神社の宮司さんに来ていただきました。

開業清祓(かいぎょうきよはらえ)という祭典と、
愛農かまどの御祓い及び火入式を一緒に行っていただきました。


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2-1.祭典次第

一.起火(きび)
※火起師(ひおこし)大西琢也が錐揉式発火法で火をいただき、採火いたしました。
毎回、どの場所でも同じということはなく、煙の立ち方や火が燃えている様は、全て違います。

私は特に何かできるということではなく、媒体としてその場に火をいただけるよう取り組むのみです。
それも絶対的なことではなく、火をいただけないこともあります。

今回、棒を回し始めてしばらく後に、何か上からグッと重みのある力が降りてきたような感触がありました。
築400年という古民家が刻んできた時の重み、つないできたい人々の想いが応援してくれているようでした。

一.修祓(しゅばつ)
※会場および全体のお祓いです。

一.斎主一拝(さいしゅいっぱい)
※今回の斎主である宮司さんにあわせて全員で一拝します。

一.祝詞奏上(のりとそうじょう)
※宮司さんが神様に祝詞をあげてくださいます。
場所や施主さんのお名前なども具体的に入っています。

一.かまど御祓(かまどおはらい)
※宮司さんにかまどの御祓いをしていただきました。


一.施主火入(せしゅひいれ)
※施主の坂井さんご夫妻に手を取り合って起火でいただいた炎をかまどに入れていただきました。


一.玉串拝礼(たまぐしはいれい)
※参列者が順番に玉串をささげて拝礼します。

一.撤饌(てっせん)
※神様に捧げていた供え物をさげます。

一.斎主一拝(さいしゅいっぱい)
※今回の斎主である宮司さんにあわせて全員で一拝します。

一.斎主あいさつ(さいしゅあいさつ)
※御神前からさげられたお神酒で乾杯し、ご挨拶をいただきました。
開業清祓の意味や、この地域を活性化している地元の方々と坂井さんご夫妻のお話が
印象に残りました。
祭典の時に、古来からの方法で火をいただき、燈したのは宮司さんも初めてで、
喜んでいただきました。

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3.かまどパーティー

3-1.羽釜ご飯

「同じ釜の飯を食う仲間」という言葉があるほど、ご飯を食べるということは、
私たちの生きることに直結しています。

米粒と一口にいっても、88の神様がいらっしゃるとか、私たちの口に入るまで、
どれほどの手間暇をかけて育てられてきたのか。
調理するにしても、現代的な電気で炊飯も可能ですが、薪なら森からいただいた恵であります。

午前中に参列者や子どもたちが森にいって杉葉や薪を拾ってきて、かまどに入れておきました。
施主火入の後、祭典は続いていたのですが、その最中にご飯は炊きあがってしまいました。

私は焦げ付かないように、裏に回って様子を見るのみ。
火加減もほとんど不要なぐらい、効率よくあっという間です。

そのご飯の美味しかったことと言ったら・・・。
翌日も冷えたおむすびが美味しかったです。

羽釜ご飯は冷えても美味しいのです。
懐かしさの杜でご宿泊や体験される皆様、羽釜ご飯は必須ですぞ。

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3-2.持ち寄りの逸品その1(清阪terraceの卵と鶏肉)

https://www.facebook.com/kiyosakaterrace

茨木市の北端・清阪峠にある棚田で、平飼いの自然養鶏を行っている横峯さんご夫妻は、
11月の愛農かまどワークショップや交流会にも参加いただきました。

以前にも食させていただいたことがあるのですが、
今回はご自分の養鶏場から卵をもってきてくださいました。

これが羽釜ご飯と絶妙な響きあいで、とても美味しかったです!!


そして弱った鶏を絞めたタイミングだったので、
そちらは愛農かまどの特徴の一つであるオーブンで焼きました。

「普通のオーブンでは、こんな味わい深くならないよね」、
「なにこれー、美味しい!」と皆さんに大好評でした。

手間暇かけて育てている鶏や卵たち、
まさに御馳走でした。ありがとうございます。


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3-3.持ち寄りの逸品その2(野菜カレー)

伝承者仲間の中通さんご夫妻が持参してくださったのは、
自家製の野菜カレーです。

レシピは奥様が開発され、旦那さんが調理されたものでした。

大豆を砕いてコクのある中に、まろやかさもある絶品のカレーが、
羽釜ご飯に溶けていきました。


贅沢にも清阪terraceの卵かけ御飯と二色にしていた方もいました。


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3-4.持ち寄りの逸品その4(甘酒ワッフル)

施主の坂井のり子さんお手製のワッフルがおやつに供されました。
仕込みは甘酒でボリュームのある中にも、まろやかな甘みがあり、
とても美味しかったです。

今後、懐かしさの杜で喫茶として販売もされますので、
お楽しみに!!

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3-5.持ち寄りの逸品その5(手作りピザ)

前日から生地を発酵させておいたものに、野菜やチーズなどをトッピング。
中でもレンコンが美味しかったです!


後半には、デザートピザも出てきました。
おやきのような形の中には、ミカンとリンゴとチーズが入っておりました。




気づいたら「うまい!」しか言っていない。笑

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3-6.持ち寄りの逸品その6(尾頭付きの鯛や自家製サラダ)

宮司さんがお祝いにと御神前へお供えしてくださった尾頭付きの鯛は、
愛農かまどのオーブンへ丸ごといれて、温めて食べました。


脂がのった焼き魚にちょっと燻煙されたような匂いが絶品で、
お酒が飲みたくなりました。

敷地内からは水菜を採ってきてサラダになっていたり、
書ききれないほどの御馳走がいろいろでした。

みなさん、ありがとうございました!!

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4.薪ストーブと煙突を共用

雨漏り防止や耐久性、防火などの点で
屋根を煙突が通過するのはできるだけ避けたいところです。

それを少しでも良い方向にできるのは、
薪ストーブと併用する場合は、愛農かまどを真横に並べて煙突を1本で共用することです。

この光景は私が知る限り2基です。

一つは私が暮らしている集落内のカフェMAGOEMON(岐阜県郡上市白鳥町石徹白)です。
https://www.facebook.com/magoemon.itoshiro

もう一つは、この懐かしさの杜です。

薪ストーブの熾を愛農かまどに入れて、火種にしたり、
お互いに火の始末に困ることはなさそうです。

上下の火加減もしやすくなり、
愛農かまどのオーブン機能もさらに大活躍できるでしょう。


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5.薪割体験

薪ストーブには太い広葉樹の薪が必要です。
火はつきにくいが、火持ちは良いので長く燃えて熱量も持続します。

その一方で愛農かまどには、太い薪はごくわずかあれば大丈夫です。
芝ではなく「柴」があれば十分です。
ひとつかみの小枝でご飯が炊けたり、調理が可能なほど効率が良いのが一つの特徴です。

子どもたちが森へ行って、遊びのついでに薪を集めてくれば、
御飯が食べられる。

身体性をともなって食べることが生きることにつながっていくと思いませんか?
私が愛農かまどを広げていきたい理由の一つです。

さて、薪割をしてみたい方も案外いらっしゃるのですが、
自己流でやってみている方も多いと思います。

私が投稿している動画の中で最も再生回数が多いのがこちら。

「斧で薪割り」素人もプロも腰を痛めない極意by大西琢也
https://youtu.be/lg9dz6VDebA

これを事前に見てきた横峯さんが薪割を教えてほしいということで、
即席ワークショップも開催。

スパかーーん!と割れた時の気持ちよさったらありません。

その後も、他の方が続々と薪割をしていただき、
使った分を割って次の方へ手渡すというサイクルが実現しました。

薪割斧を振る姿が様になっている参加者のくるみちゃん。
筋が良い女子は覚醒したのか、最後まで割り続けていました。


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6.愛農かまどの研究

6-1.なぜ技術を高めるのか?

プロの左官職人に比べたら、私たちは素人も同然です。
しかし、愛農かまどの伝承者を志して日々、研究や実践も意識しています。

想いだけはあるが、技術は無い。そんな大工さんいますか?

ワークショップで作ったからといって、粗雑な作りでは残念です。

施主さんにとっては、その家の命を育む場所であり、それだけの想い入れがあって、
愛農かまどに決めていただいていると思うからです。

参加者のみなさんも、こんなもんかーというのではなく、
ここまでできるんだ!というぐらいの想いと試行錯誤をしながら、
愛農かまど作りを楽しんでいただきたいのです。

ご一緒した場合に勘所は伝承者の私たちが少しずつ様子を見ながら、
皆さんと現状を共有しながら現場で改善していきます。

・・・ってことで、終わりがない世界に、
途方もないことに踏み出したなーと思っております。

日々研鑽いたします。

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6-2.モルタルの乾燥度

私が制作に関わった愛農かまどは、モルタルの乾燥度を計測しています。

制作から火入式まで1ヶ月ほどの時間を乾燥のためにとっているのですが、
おおよそ数値でも把握することができたら、
観察していることをより解像度をあげてお伝えできると思うからです。

懐かしさの杜では、完成後に薪ストーブを焚いていたので、
とてもよく乾いていました。


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6-3.外壁温度の計測

レーザー計測器で内外の温度を計測しました。
オーブンの背面がやや高めになることは解っていましたが、
75度ぐらいまで上がっていることが確かめられました。


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6-4.鋳物扉の落下防止措置

鋳物の穴を利用して、開閉には支障がない程度に針金で固定しました。
割れやすい鋳物が落ちなくなって安心です。

伝承者仲間の中通さんのナイスアイディアでした。


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7.掃除

トイレが汚い会社は事故事件が多いという話を
保険会社の方から教わったことがあります。

掃除は基本のキです。

職人の見習い中は、とにかく掃除をします。

それは嫌がらせではなく、「愛」です。

道具が職人の魂だとすれば、それぞれの特徴を把握したり、
道具の置き場所を考えたり、
それらを師匠や兄弟子たちがどのように整えているのかを
身をもって知ることができる大切な機会になります。

道具を自分の手足の延長のように自由自在に扱うことができる方は、
なぜそのようなことができるのでしょう。

道具の手入れとは何をしているのでしょう。
必要な機能が解れば、販売されているものを使うだけでなく、自作する方もいます。

掃除や手入れをすることができなければ、
技術以前の問題で魂は抜けているも同然です。

愛農かまどに限らないことですが、火や水の回りは奇麗に掃除をしておきましょう。
そこはカミ(火と水)が宿る解りやすい場所ですから。

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8.かまパ(かまどパーティー)の可能性

ああ、それにしても楽しい一日でした。

愛農かまどで育まれる物語。

かまどを囲んで語り合う仲間たち。

幸せなひと時を皆さんにも味わっていただきたい。

これからも全国各地に広がっていく愛農かまどで、

料理をして、食べて、飲んで、集い、語り合いましょう。

季節ごとに仲間が集ったり、子どもたちと未来を育む場になったり。

地域の食材を交換して同日開催で!とか、

施主さんや仲間と協力して、そんな場を増やしていこうと企んでおります。

一緒にやってみよーという方、この指とまれ♪

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