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芸術が人間をつくる時代

『強さを求めるのは、己を知りたいからなのか‥。自分を、いや人間を、世界を、地球を、いやいや宇宙そのものを知りたいからなのではないだろうか‥?』

本書に少し触れただけで、著者の極めて自然な語り口にぐんぐん引き込まれ、ふとこんなことが頭をよぎっていた。

今の世の中は、知人や他人の一挙手一投足までもがつぶさに知らされる機会に、いや危機に溢れている。その溢れる情報に、知らず心は一喜一憂させられ、受け手としての己という個体はいとも簡単に溺れてしまう。

例え受け手ではなく、人に何か影響したい場合でも、己を知らねばその接し方も測れない。漠然とそういった悩みを抱えつつケータイなどのデバイスと向き合っていても、その加減がわからないまま日々は過ぎていく。そんな人が増えているのではなかろうか?

そこへ朗報、本書の登場だ。

つまり己を知るという"強さ"を得る機会なのだ。折りしもこのタイミングで本書はあなたのために世に放たれたのである。

この機会に、弱くて優しくて、だからとても強い人、格闘技ドクター・二重作拓也から抽出された “強さへの問い“ というエッセンスに溢れた本書に溺れてれてみることを強くオススメする。(オペラ歌手/大山大輔)


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大山大輔さん。

オペラの世界で知らない人はいない、本物中の本物。

由緒正しきオペラ作品で大役を演じてきただけでなく、クラッシックとの共演や国立競技場で行われたサッカーの試合での国家独唱など、オペラを起点として幅広く声楽を追求してきた芸術家である。

僕が彼と初めて会ったのは、演出家の木村龍之介さん(カクシンハン代表)とタッグを組んで、俳優さんを対象にパフォーマンス向上のワークショップを行ったときのことだ。自己研鑽に余念のない大山さんは、いち参加者としてその場にいてくださった。

プログラムが進む中、信じられないことが起きた。

僕の横2メートルで、大山大輔さんが生声を発声した瞬間、シアターが本当に揺れたのだ。魂の奥底から大地のうねりのような彼の声が、身体を揺さぶり、空気を震わせ、壁に、床に、椅子に反響したのだった。

マイクロフォンも、アンプも、スピーカーもこの世に存在しない時代から継承されてきたオペラ。自らの身体を楽器と化し、精神で楽器を思いっ切り鳴らしたときの迫力たるや・・・。その時の振動は今も僕の肉体に完璧にレコーディングされていて、瞬時に想い出せるほどだ。

その大山大輔さんが、拙書に推薦の言葉をくださった。

日本を代表する世界的声楽家が、言葉を寄せてくれる。しかも大山さんはしっかりと原稿を読み込んだ上で、上記の文章をしたためてくれた。

拙書への評価もさることながら、大山さんが普段から問いと格闘し、身体芸術たる音楽を通じて、己を、世の中を理解せんとする姿勢が、行間から静かに、でも確実に響いてくる文章ではないだろうか。

大山大輔さんの文章、そして彼の言葉に触れていると、徹底した「肉体の反映」を感じる。脳で想起された言葉が、彼の肉体を通じて発せられる。

スマホやITでどんどん簡略化され、イージーになる時代。

真逆にある「肉体性を伴った芸術」の獲得はとにかく面倒だし、自分を規律の中に放り込まなきゃならないし、時間もかかるし、成果が簡単に出るものではない。でも、そうした過程こそが「人間」をつくっていく。

そんな芸術の時代が本格的に到来したことを、大山大輔さんという存在が示してくれている。

改めて、拙書に言葉をくださった大山さんに感謝すると共に、書が大山さんと僕と木村龍之介さんの素晴らしき関係を「刻印」の場になったことを、素直にうれしく思います。











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